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229.契約書

 ギルドマスターの判断は迅速で、あっと言う間に契約書のたたき台を作り上げてしまった。その上既に国側に確認済み、試験運用としてギルドマスターと植物型魔獣の間で契約を締結する事になったようだ。


 差し出された契約書を僕が読み上げ、イゼスと雪風には通訳を頼んでいる。甲が領主、乙が植物型魔獣を指していたりと、まるで現実さらながらの契約書に実は少しびっくりしている。


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 一.甲は着任と同時に乙と更新型の契約を結ぶ事。その際、フィロティス内外にそれぞれ最低一名ずつ、別の魔獣とテイム契約を交わした者を立会人(以下、丙とする)を指定する事。また、丙の指定は甲、乙両名が合意する事。丙は契約書の内容に変更が生じる際には必ず立ち会い、契約書の内容を一語一句違える事なく乙へと伝える事。


 二.契約中、甲は乙に対し食住の提供を行い、乙はフィロティスの地を襲撃しない事。


 三.甲もしくは乙の申し入れがあった場合は都度、契約内容の見直しを行う事。


 四.見直した内容は甲、乙及び丙の合意を持って締結する事。


 五.甲もしくは乙と丙の間に結託が確認された場合は、丙の再選定を行い、その間に締結された契約内容を破棄し見直しを行う事。その際、甲もしくは乙が相手方を信用出来ないと判断した場合は契約解除を検討しても良い。


 六.甲もしくは乙による契約不履行が発覚した場合は、丙立ち会いの下契約の継続について話し合う事。甲、乙は相手方が丙へ連絡を行う事を妨害しない事。また、妨害が発覚した時点で甲、乙一方の申し入れにより強制的に契約を解除しても良い。


 七.契約期間中、甲と乙は定期的に話し合いの場を設ける事。その際丙の立ち会いは契約書の修正が発生しない場合については甲乙間の話し合いに委ねるものとする。意見が割れた場合は丙の立ち会いを必須とする。


 八.当契約書に欠陥が認められた場合は適宜修正を行う事。


 九.当契約書に定められた内容では判断出来ない件は適宜甲乙間で話し合いを行う。その際の丙の立ち会いについての扱いは項番七に準拠するものとする。


 十.話し合いの内容と契約書に記載した内容に齟齬があると発覚した場合は、甲、乙一方の申し入れにより強制的に契約を解除しても良い。丙が乙に正確な内容を伝えていないと発覚した場合は丙の再選定を行う事。この判断には丙とは別の魔獣契約者を招集する事。


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「必要事項は一通り列挙したつもりですが……どうでしょうか?」


 全てを読み上げ終わったあと、ギルドマスターが少々不安な様子で声を発した。


「客観的に見てフィロティスの人間にとっても魔獣さんにとっても悪くない内容には見えるけど……どうかな?」


 イゼスが契約書の内容を伝え終えると、植物型魔獣は暫しの沈黙してから長々となにかを話し始めた。よほどの内容なのか、イゼスの表情がみるみる険しくなっていくのが端からも見て取れた。


「……この者は人間が扱う契約書とやらが難解過ぎて全てを理解するのに時間がかかると言っています。ですから……我が契約者と犬の契約者に今回の契約の立会人になってほしいと。……全く図々しい魔獣です」


「……頭領が断るなら契約の話ももっと自分に有利なものにしてほしい、そうじゃなきゃ信頼出来ない、とも言っているぞ!」


「なる……ほど……」


 僕の困惑をよそに、ギルドマスターは名案だとばかりに顔を輝かせている。


「確かに、初めての契約ですから不正のしようがない状況を作り上げたいというのはこちらも同じ気持ちです。不思議な事に、お二人が契約している魔獣の言葉は第三者である私達でも聞き取れますから、条件的にもこの上なく相応しいです。……どうかお願い出来ないでしょうか?」


 幻の華を食べて特殊な進化を遂げた雪風とイゼスだからこそ、という事らしい。そこまで言われてしまうと……うーん、断りにくい。ヴィオラはどうだろうか、とちらりと確認すれば、既にやる気満々と言った表情で頷いていた。


「勿論協力します。……って勝手に答えちゃったけど。良いかしら、蓮華くん?」


「ああ、うん。勿論」


 契約書のようなお堅い文章を伝えるなら雪風よりもイゼスの方が適任だ。それを理解した上でヴィオラがやる気なら良いか、と頷けば、イゼスも溜息をつきながらも頷いた。雪風は仕事が出来た事が嬉しいようで、尻尾が起こす風圧が凄い事になっている。あ、ちょ、砂埃が舞うからストップ!ストップ!


「ありがとうございます! それでは……早速ですが契約に立ち会ってもらって良いでしょうか? いつまでも通訳の為に拘束するのも気が引けますし」


 テイム契約を行った者同士はある程度意思の疎通が可能になる。確かに食住を提供するとなると、一刻も早く直接やりとりが出来るようになった方が良さそうだ。


「ええ、構いませんよ」


 そうして契約の締結完了を見守っていると、耳慣れた効果音と共に【隠しクエスト達成】やら【限定称号を獲得】の表記。驚く僕とは裏腹に、ヴィオラは口角が微妙に上がっており喜びが隠しきれていない様子。なるほど、道理で張り切っていた訳だ。

昨夜投稿するつもりが二次会までしっかり楽しんでしまった結果日付が変わってしまいました……(阿呆

予約投稿しとけば良かった!!


裏で連載中の「国に飼い殺され続けた魔女、余命十年の公爵の養女になる? 〜養女契約のはずが、妻の座を提案されてしまった〜」もよろしくお願いいたします!

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吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁーたやっちゃいましたよ蓮華さん御一行w 行く先ざきで新規イベント見つけてそのままクリアしてしまうトッププレイヤーですよほんとに
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