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227.原因判明

「……二百年ちょっと前の当主の日記にそれらしい記述があった。『この地は代々植物型魔獣と共生をしている。彼らは我々が垂れ流した汚水を糧に生き、代わりに我々にとって害のない、豊かな土壌を作り出す』、『外聞が悪い為、代々当主の座を引き継ぐ際に口頭で伝えてるいるものの、有事の際の為にここに書き記しておく』……か。そういえばさっき、百五十年前の日記に先代当主が急逝したって書いてあったよね」


「きっとその辺りの事を知らずに領主の座を引き継いだんでしょうね。だからそのあと、下水工事に着手してしまった……。でも変ね、普通、不便を感じない限り工事なんてしようと思わないんじゃない?」


 ヴィオラの疑問はもっともだ。だけど僕の人生経験上、一概にそうとは言えない事を知っている。


「そうだねえ……、ほら、治水工事とか下水工事、道路の敷設みたいな大がかりな工事って、長期間住民を雇う必要があるから、お金と食料に余裕がないと出来ないでしょう。この人の場合も、先代当主が急逝して、青年が領主になった事への住民達の不安を解消する為に大規模工事を行った、って可能性はあるよね。

 あと、魔獣の存在を知らなかった部下達からの発案って可能性もある」


「なるほどね。下水工事自体は本来、誰にとって悪い事じゃない。それなのに植物の襲撃が始まったっていうのは可哀想ね……。タイミング的に、きっとこの領主は住民から相当叩かれたでしょうし」


 確かに、とヴィオラの言葉に頷いてからパラパラと日記に目を通す。


「そうだね、日記からはだいぶ参ってる雰囲気が伝わってくるよ。……ああ、そのせいかは分からないけど、ものの十年くらいで領主の座を退いてる。……さて。下水工事が原因だろう事は分かった。でも、なんで襲撃してくるんだろう? ご飯が手に入らなくなったら普通、他の土地に移動するとか、どうにかして別の方法で栄養を補おうとしない? それとも根を張ってるから動けないのかな?」


「そうね、根を張ってる範囲にしか動けない、はあり得そうよね。となるとどうにかして栄養を補おうとする……。その結果が襲撃、って事はないかしら? その……襲撃のせいで人が怪我をしたり、町がめちゃくちゃになれば、少しはご飯にありつける、とか? で、またお腹が空いてきた頃にご飯を求めて襲撃……を繰り返してるんじゃないかしら」


「その仮定からいくと……、最近頻度が上がった理由は、お腹が空く頻度が高くなってきたからかな。うーん、確かに、人の血とか、土葬した死体がご飯なんだとしたら、住民が減れば減るほどご飯にありつけなくなるよね」


「ええ、辻褄は合う。……それが本当ならちょっと嫌な展開だけどね」


≪想像したらしんどかった≫

≪グロいけど推理としてはあってそうだなあ……≫


「だとすると……どうやって解決しよう、これ。まさか植物型魔獣の為に下水施設を破壊する訳にもいかないし。引っ越しが難しいなら、やっぱり倒すしかない気がするけど……、うーん、なんか可哀想だな」


 人間が山を開拓した結果野生の動物の住処が奪われ、人里へ降りてきて攻撃する……。現代でも時折ニュースになる事象と似ている気がして、一概に植物型魔獣が悪いとは言えなくなってしまった。でもフィロティスに住んでる人は生死がかかっている訳で、植物型魔獣が可哀想だからどうにかしてあげよう、なんて簡単に言えるはずもない。


「他に方法がないなら仕方がないわよね、魔核を探すのも一苦労な気がするけど。……でもまずは意思の疎通が取れるか試すだけ試してみない? ほら、雪風ちゃんとイゼスが話せてるんだから、魔獣同士は意思の疎通が出来るのかも」


「ああー、そっか! 二人も連れてくれば良かったね」


 まさかこんな展開になるとは思っていなかったし、バフが勿体ないとアインが言うので慌てて着の身着のまま王都から出てきてしまったのだ。


「あ、それならアインはあの魔獣と対話出来ないのかな?」


 思いつきで言ってみたものの、ヴィオラの反応は芳しくない。


「試してみても良いけど、さっきの戦いっぷりを見た限りじゃ難しそうよね。……そもそもの話、アインくんって魔獣なの? 魔核があるようには思えないけど……」


「あ、そっか。そうだよね……」


 どこもかしこもスケスケで、魔核が存在しているとは思えない。唯一なにかを隠せそうな頭は、最初に森で吹き飛ばしてしまってるし……、そのあとも動いていたところを見ると、きっと頭にも魔核はないんだよね。


「……って事はアンデッドは魔獣じゃないって事か。彼らは『穢れ』?から生まれる種族だし、根本的に違うのかなあ。そうすると……やっぱり雪風達を迎えにいかないと駄目か」


「それなら私が行ってくるわ。雪風ちゃんも連れてきて良いのよね?」


「うん。王都じゃ十分な運動もし辛いし、この機会に運動させてあげようと思って」


≪サイズがサイズだからなw≫

≪別に小っちゃい姿で散歩すれば良いんじゃ……≫

≪↑本人的にも大きい姿で走り回りたいのかも?≫

≪良いなあ、俺もあのサイズのわんわんおとフリスビーとかやってみたい≫

≪あのサイズの犬のフリスビーとか投げられる筋力ないだろw≫

裏で連載中の「国に飼い殺され続けた魔女、余命十年の公爵の養女になる? 〜養女契約のはずが、妻の座を提案されてしまった〜」もよろしくお願いいたします!もうすぐ二章が完結します!

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[一言] 更新有り難うございます。 謎解き(?)なるか!
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