209.彼らの行方
昨日から各種電子書籍取り扱いサイト様にて、1巻無料キャンペーンを実施中です(4月26日まで)。
以下、こちらで無料である事を確認出来た取り扱いサイト様を列挙します(敬称略・順不同)。
2巻が今月20日に発売しますので、これを気に書籍版未読の方はぜひ読んでいただければと思います。
- BookLive
- ピッコマ
- シーモア
- ebookjapan
- honto
- auブックパス
- DMMブックス
- Kinoppy
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さてどうしようか。これだけの情報を教えてくれたのだから、お返しをしたいとは思う。ただ、彼らは反乱軍。提示された条件が「連絡が取れなくなった仲間達の事を調べる」だけだとしても、レガート帝国やバルティス共和国側に彼らの仲間だと思われれば危ない橋を渡る事になる。僕の一存だけで決めて良いものだろうか?
だけど今ここで「相談してきます」と言うのもどうだろう。もしこの人達がヴィオラ達の存在を知らないのであれば、信用出来るか分からない以上そのまま伏せておくべきだよね……。
幸いにも、僕達にはパーティチャットという強い味方がある。眉間にしわを寄せてみたり、片足で何度もリズムを刻んでみたり、うろうろしてみたり。ちょっと怪しすぎる自覚はあるけど、提案を受け入れるか悩んでいますよ、と言う体で脳波のアシスト機能を駆使しながら急いで文章を作り上げた。
『じょうおう手に入りそう、きけん、一人のふり?』
だいぶおかしな日本語になってしまったけれど、これ以上怪しい行動を取り続けるのは不審すぎるので諦めて送信。ヴィオラなら解読してくれると信じよう。
『配信を見てるから事情はだいたい分かったわ。情報提供相手が信用出来ないから仲間が居ないフリで取引したいって事よね? 私は問題ないと思うわ』
『私もオッケーです! 協力が必要ならいつでも呼んでください!』
『なんだ? 特別なクエストでも発生したのか? 俺達の事は気にしなくて良いぜ、蓮華さん』
『誰よりも早く情報収集を始めてたはずの俺の無能感……はさておき。全然オッケーっすよ、行けるとこまで行っちゃってください!』
『無理はしないでくださいね……?』
全員から了承の旨が返ってきた事を素早く確認し、僕は軽く咳払いをしてからこう告げた。
「取引に応じます。ただしあくまでも『連絡が取れなくなった方々の状況確認』だけです。反乱のお手伝いをするつもりはありません。それでも良いですか?」
「ああ、それで十分だ。悪いな、急かすような真似をして。仲間が捕まった以上、あまり時間がないからよ……」
【告知:サブクランクエスト「彼らの行方」を受領しました】
【告知:クランクエスト「セルヴァリス子爵を追って」のクエスト情報が更新されました】
「では子爵の居場所と、お仲間についての情報を教えていただけますか?」
「そうだな。まずはさっきの質問の答えだが……、子爵は自らバルティス共和国に足を踏み入れた……んじゃないかと思う。騙すような誘導をして悪いが、はっきりとは分かってない。だが、そう思うだけの根拠はある。その一、子爵はここヴァルステッドに立ち寄ってる。が、入門検査の際に『セルヴァリス子爵』ではなく、別の人物を名乗ってるんだ。……まるで自分の足取りが掴めないようにしてると思わないか? その二、酒場で話したらしいやつの話じゃ、子爵は『明日はバルティスに行くんだ』と語ったらしい。よりによって自分の先祖が亡命した国の方角へ来るか? 強欲で有名なレガート帝国相手に? 自分の知名度を考えりゃなにがあっても西だけは避けるな、俺なら」
「でも、絶対にバルティス共和国じゃなきゃいけない理由があったんだとしたら? だから身分を偽ったという可能性もありますよね?」
ナナ達がイヴェッタ嬢から聞き出した情報によると、セルヴァリス子爵はしょっちゅう錬金術に使う材料の調達の為に出掛けていたと言う。そんな人だ、必要な物がバルティス共和国にしかなかったのならば無茶をした可能性は否めない。
「ああ、だからまだ疑ってるだけで、確実に黒だとは思ってない。……それも含めてあんたが判断してどうにかしてくれないか? 元々探してたんだろう? 俺達は、子爵がレガートに手を貸しさえしなければなにも口出ししない。捕まった仲間が無事だと分かれば文句なしだな」
「なるほど、分かりました。確かに状況的には灰色に近いみたいですが、彼の家族曰く彼は普段から錬金術の材料を集めてあちこちに出向いていたようなので、今回もそうだった可能性が高いです。……ちなみに、子爵がヴァルステッドの酒場で話したというのはいつ頃なのでしょう?」
「ひと月半前だ。それから一週間後、バルティスに子爵が滞在しているという情報を仲間から受け取った。救出作戦を立てたのが丁度ひと月前……そこから連絡が取れない」
ひと月半前……。セルヴァリス子爵が失踪してから半年。目撃証言が出るまでの四ヶ月半は普通に材料集めをしていただけなのかな。普段から偽名を使って行動してるなら足取りが掴めなかったのも不思議ではない、けれど。
「ひと月……急いだ方が良さそうですね。具体的な滞在場所を共有していただけますか。それから、貴方達との連絡方法も。 最悪、僕もここに戻ってこられない可能性がありますから」
まあテレポートを使えばいつでも戻って来られるんだけど、その為だけに行ったり来たりは非効率的。こまめに連絡を取れるならそれに越した事はない。
セルヴァリス子爵が滞在している都市名とざっくりした地図、それに貴族の屋敷の場所。それからバルティス共和国内に潜伏していた反乱軍のアジトの場所。これらの情報を入手してからカシラの部屋をあとにした。
一階に降り、軽く腹拵え。注文した料理を食べながら僕はこれからの計画を練り始めた。
こっそり様子を探るのであれば僕よりもナナの方が適任なんだけど……、彼らが僕を監視してたらナナの存在がバレちゃうんだよね。
でも取引相手なんだからちょっとくらい信用しても良いんじゃ?と思う自分も居る。話を聞いてる限り彼らの言葉に嘘はないと感じたし、最初の出会いが演技じゃないなら、彼らはどちらかというと戦闘力の方に重きを置いていそう。
『ところで、バルティス共和国に行く時もずっと単独行動するつもり?』
『僕も丁度考えてたところ。隠密行動が必要そうだし、ナナには手伝ってほしいんだけど。というかここでする事がないなら皆で行動したいけど、監視とかされてないかな、とだけ気になってて』
『じゃあ留守番組と、バルティス共和国へお供する組で分けるか?』
『でもテレポート先解放したいし、皆で行きたくないっすか? こっちで他にも情報が得られるならそれも一つの手っすけど』
『元々の依頼であるセルヴァリス子爵の行方調査って意味では、居場所が分かった段階で留まる意味はないよね。通常のクエストならともかく、クランクエストで監視されは考えにくいかなあ、なんてメタ的な考え方だけど……』
『私もナナちゃんの意見に賛成よ。というか、もし仮に監視されてるとしたらそれこそ一人で居る方が危険よね。一緒に行くかバラバラに行くかは任せるけど、バルティス共和国には全員で行くべきだと思うわ』
『クランクエスト、ですからね。複数人でクリアする事を前提に設定されてそう、なんて私もメタ的な考え方ですけど』
『そっか。確かにそうだよね。じゃあ全員で行こう! どうする? 一応ヴァルステッドを出てから合流した方が良いかなって思うけど』
『じゃあ国境を超えたあたりで合流しましょう。全員入国出来なかったら困るでしょうし』
そう言う訳で方針は決まった。あとはどうやって国境を越えるか、かな?





