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174.幻の華

最近間が空いてて申し訳ありません、ちょっと仕事が……。。。


2023/06/25

誤字指摘助かりますー、今回いつも以上にひどかったですね、すみません。

「あった……思ったより簡単に見つかったね」


「まあ見つかりにくい……と言うよりは条件が合わなくて咲かないときがあるって話だったわよね。今年は運が良かったって事かしら」


 アイシクルピークに到達後、現地で集めた情報を元に幻の華の開花条件に合致する場所をひたすら歩き回った結果。洞窟の中に葉が氷で出来ている、それらしい輝く植物を見つけた。


 念の為、キャプチャのズーム機能を使って遠方から確認をしているので僕達の気配が原因で枯れる事はない筈。


「小さな葉が何枚か出てきた所だし、開花はまだまだ先かな……。それにしても本当に静かだね」


 静寂の原因はその立地にある。幻の華が好む洞窟は氷河の洞窟であり、普通の氷の洞窟ではない。つまり、いつ崩れてもおかしくない不安定な場所という事で、野生動物が寄りつかないのだ。


 当初の予定では開花までの期間に氷狼やグラシアルムース探しをしようと考えていたのだが、僕達の意に反してこの場所は孤立しており、どちらか一方にかかりきりにならざるを得ない。


「交代で狩りと見張りをする?」


「……それしか方法はないでしょうね。もしかしたら開花するまで洞窟が持たずに崩壊するから幻の華なのかも。だとしたら、それこそ二人がかりで花を見守るのは時間の無駄、失敗を前提に狩りとテイムは達成しておきましょうか」


 確かにヴィオラの言葉通り、洞窟の方が崩壊する可能性は十二分にありそうだ。依頼は成功したらラッキー程度に考えておこう。


「見張りをする方は、可能な限り離れた場所から今みたいにキャプチャのズーム機能を使って見張る事にしよう。この規模の洞窟の崩壊に巻き込まれたらひとたまりもないだろうし」


 幻の華の開花条件も「静かに見守る事」だ。近くでテントなんて広げた日にはストレスで枯れてしまう可能性は大いにある。


 ひとまずこの辺りで、平坦な場所を探して手早くテントを設置。それなりに歩き回って疲れたので、休憩がてらテント内のソファに身を沈めた。


「ふう……。それにしても『足が早い』か……魚にはよく使う言い回しだけど、花に使うのはちょっと違和感があるような」


「それは私も思っていたのよね……もしかして足が早いって、物理的に速いって意味じゃないわよね?」


「え? いやいやまさか……だって花だよ?」


「でもここはファンタジーよ? 見た目が植物の動物が居たっておかしくはないわよね。マンドラゴラだって……叫び声をあげる段階で植物かどうか怪しいし」


「た、確かに……地面から抜け出て走り回る植物が居てもおかしくないのか」


≪つまり、気配を察知したら走って逃げる?≫

≪だから映像が撮れないのかw≫

≪ここにきてまさかの追いかけっこ≫


「こんな雪山で鬼ごっこはしんどいなあ。なるべく気付かれないように頑張らないと」


 ひとまず話し合い、先にヴィオラに狩りに行ってもらう事にした。念の為、アインはヴィオラについていってもらい、僕は一人テントで待機。


「さて……花はまだまだ咲く気配はないし……ずーっと微動だにせず監視するっていうのもなあ……」


 でもここはファンタジー世界。現実と同じ感覚でよそ見をしていたら、あっという間に開花してしまいました!という可能性もある訳で。


「現実世界みたいにこう、ビデオカメラ?の要領で視点を固定して録画が出来れば良いのに……」


≪出来るよ≫

≪でも録画しててもリアタイで監視しなきゃ逃げられても気付けない≫

≪配信のカメラワークいじって俺等が監視すれば良いんじゃ≫


「ん? どういう事?」


≪配信のワイプ?機能を使えば良いんだよ。カメラ1で幻の華を映して、カメラ2で蓮華君を映す的な。でも配信者を映すための機能だから、離れた場所に設置して使うって事は出来ない≫


「なるほど……つまり、僕が今から新たな大豆料理を生み出すとして、僕の肩越し、テントの入り口方向にカメラ1を向けて氷の華を皆に監視して貰いつつ、カメラ2で手元を映せば良いって事だね?」


≪そう。今のカメラ設定はAI自動になってる筈だから、まずはそれを手動にする≫


「ほうほう……ちょっと待ってね。ええと、システムメニューの配信……ああ、これか。手動に切り替えてカメラ2をオンにして……」


≪キャプチャと配信は別物だから、その上でちゃんとキャプチャも設定しとくんやで≫


「ああ、そうだよね……了解」


 キャプチャ機能は配信設定よりもカメラが比較的自由で、ある程度自分から離れた場所に設定する事も可能だった。なのでこちらはテントの入り口外、より鮮明に幻の華の状況が映るように設置。


「よし、じゃあそうだなあ……今日は大豆ハンバーグを作ってみたいと思います」


 諸々の準備を終えてからエプロンに腕を通し、力強く宣言。鬼さんもそろそろ和食が食べたい頃だろうしね!


≪これは完璧な飯テロですわ≫

≪鬼の方が俺よりも健康的な食生活を送っている件について……≫


「この豆は既に炒ってあるから、まずは水に数時間浸して……この世界なら二十分位で良いかな。その間に、玉ねぎとにんじんをみじん切りにします。ひじきがあれば良いんだけど、まだ出会えてないんだよなあ……」


≪ひじきは海だったか。この国じゃな……オークションにはあるかもだけど≫

≪思い立って作り始めたっぽいしひじきは常備してなかったのか≫

≪これ人の気配っていうか突然の飯の匂いで逃げ出さないだろうか?≫

≪幻の華も匂いにつられて寄ってきたりしてw≫


「豆の数が凄い事になってるから、今回はちょっと多めに作っちゃおうかな、ヴィオラも食べるだろうし。……で、漉し器で大豆を漉してペースト状にするんだけど……まだ早いか」


≪今回のはめっちゃ参考になりそう。うち(現実)の節分の残りの豆消費に≫

≪分かる……あれ絶対余る≫

≪そのまま食べれば良いんだろうけど……うん。飽きるよな≫


 確かに、前回のレシピは現実の豆消費の参考には不向きだったかもしれない。要するにきな粉を作ってパンケーキにした訳だから……あれだけの肉体労働だ、豆の消費は諦めてきな粉を買った方が早い。


 大豆がふやけるまで玉ねぎとにんじんを炒めつつ待っていると、突然ヴィオラからのパーティチャットが視界に飛び込んできた。


『ビッグニュース! MPポーションが作れそうよ!』


「お? もしかして……」


『ええ、この山に生えている草は魔力含有率がとても高いみたい!』


 僕がチャットで返答をする前に答えが返ってきたあたり、どうやらヴィオラは僕の配信を見ているようだ。


「なるほど……それじゃあ狩りよりも採集優先だね」


『ええ、そうね。私がテイムしたいのはグラシアルムースだから、狩りは二の次で良いかも。満足出来る位採集出来たら戻るわね』


 ヴィオラからの吉報を受けている間に、大豆は良い感じに。よし……それじゃああとはこれを漉してペーストにしよう。


 前回のきな粉ほどではないとはいえ、これもなかなか肉体労働。腕の筋肉の見せ所だ。


≪こうして見てると料理って体力使う≫

≪だよなあ……≫

≪もしや料理を始めれば筋力熟練度も上がるのでは≫

≪そ れ だ≫


 視聴者さんの何人かが、変な理由で料理を始めようとしているのを横目で見ながら必死に漉し続ける事暫し。


 良い感じに全量がペースト状になったタイミングで炒めた野菜と片栗粉、塩、胡椒を入れてよく混ぜる。


「あとはフライパンで焼いて完成……と。つなぎは片栗粉よりもすりおろした山芋か長芋がおすすめかな、現実なら」


≪うわー美味しそう≫

≪鬼と入れ替わりたい≫

≪なりきり鬼セット着用して鬼の振りして分けてもらうしか≫

≪なりきり鬼セット=鬼に豆ぶつけた証だぞ……蓮華くんがくれると思うか⁇≫


「あはは……まあ、気になる人は家で作ってみて。もしくは王都に戻ったらエリュウの涙亭のメニューに加えられないか打診してみるよ」


≪ねえ、飯テロに夢中になってる間に幻の華急成長してない?≫

≪あ、まじだ≫


『蓮華くん、魔獣達がそっち方面に向かってる! なるべく早く戻るから、それまでなんとか耐えて!』


「え!?」


 料理をインベントリにしまってからテントの外の様子を伺う。確かに地響きのような音が聞こえている……いけない、幻の華が逃げたらどうしてくれるんだ!


≪華のせいなのか、飯テロのせいなのか≫

≪後者に一票≫

≪マジレスするなら前者≫


 視聴者さんは推理で盛り上がっている。その中の一つ、幻の華の成長に合わせて魔獣が引き寄せられているのではないか、という意見がとても興味深い。ふむ……見れば確かに幻の華は、いつの間にか蕾をつけていた。関係がないとは考えにくいかも。


「幻の華には魔獣を引き寄せるなにかがあるのかな……もしかしてこれの対応に追われているせいで撮影が失敗した冒険者も居るのかも?」


 なににせよ、ただぼうっと魔獣達を眺めている訳にはいかない。幻の華目当てなのであれば尚更だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 『幻の花』いい匂い~ 遠くから撮影していたのに、花が咲いた瞬間に足元でくんかくんかしてたりして(笑)
[良い点] いつも楽しく読ませていただいています。 [気になる点] 「この豆は既に炒ってあるから、まずは見ずに数時間浸して……この世界なら二十分位で良いかな。その間に、玉ねぎとにんじんをみじん切りにし…
[一言] 更新有難う御座います。 駆け付けたヴィオラが見たのは ご馳走を前に、土下座をする大量の魔物であった。
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