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番外編:名前の由来(昇 銃一)

本編の続きじゃなくてごめんなさい。突然書きたくなったので書きました。

あと「幸」と「明」がつく名前の人、不愉快にさせたらごめんなさい。創作なので根拠とかはないのでお許しを!

 破壊衝動は、中学に上がるか上がらないかという時期に突然腹の底から湧き上がってきた。それまで仲の良かった友達も、毎日喧嘩に明け暮れて傷だらけで登校する俺を見て離れていった。あの頃は、それはもう大荒れに荒れていた。


 そんな時期に俺は両親に半ば八つ当たり気味に聞いた事がある。


「なんでこんな名前をつけたんだよ!」


 いきなり俺に怒鳴られた両親の表情は今でも頭から離れない。困ったような、泣くのをこらえているような、そんな表情だった。


 両親を傷つけた。そう分かっていても、俺の口は止まらなかった。


「こんな名前だから俺はきっとこうなんだ!」


 ライカンスロープという種族は大なり小なり破壊衝動を持ち合わせているから、名前のせいじゃないのは分かってる。でもその当時の自分は、それまで当たり前に出来ていた友達付き合いが出来なくなった事もあって、同族の中でも特に強い衝動を持っている自分はこの先ずっとこうなのかと絶望していた。結果としてそれも全てこんな名前のせいなのだと思い込むようになった。要するに八つ当たりだ。


 「銃一(しゅういち)って名前の通りだな」「同じクラスなんて最悪」「学校に来ないでほしい」。やっとの思いで衝動を抑えて登校しても、クラスメイトにはそうやって陰口を言われる始末。


 きっと名前のせいでいきなり暴力的になったんだ。両親はどうしてこんな名前をつけたんだろう。名前なんてもっと他にもたくさんあった筈なのに、どうしてよりによってこんな名前を。


 そんな考えで頭がいっぱいになって限界に達し、俺は両親に怒鳴ったのだ。


「なあ……もしかして俺の事が嫌いなのか? どうでも良いからこんな名前をつけたのか?」


 「だったら望み通り出ていくから正直に言ってくれ」と続けようと思った瞬間、頬に鈍い痛みが走った。母だった。母が、泣きながら俺の頬を叩いていた。


「銃一」


 母の声は行動とまるで一致してなくて、未だかつて聞いた事がない位それはもう優しい声音だった。


「銃一。辛いよね。母さんも父さんも衝動が薄くて、銃一の苦労を分かってあげられなくてごめんね。でもね、名前は決して適当につけた訳じゃないの。ちゃんと貴方の幸せを願って、母さんと父さんが一生懸命考えた名前なの。……それでも、その名前のせいで誤解させちゃうなら改名手続きをしたって良い」


「……なんで?」


「え?」


「考えたなら理由があるんだろ。理由を教えてくれよ。名前を変えるかどうかはそれから考える」


 正直な話、口から出任せじゃないのかと疑っていた。だって、そうだろう。どうやったら一生懸命考えた結果「銃一」なんて名前をつけるんだ? でも母さんは、ちゃんと理由を説明してくれた。


「名前を決めるときは、『こういう大人になってほしい』『こういう人生を歩んでほしい』、色々考えてつけると思う。私達もそうだった。だから銃一の名前も、最初は『静』とか『穏』を使おうかって。でもね……、私達の経験上、周りの子は皆つけられた名前と逆の人生を歩んでるのよ。知り合いの手前大きな声じゃ言えないけど、例えば『幸』の字がついてて幸せそうに見える人は居なかった。『明』の文字の子で明るい子は居なかった。だからいっその事逆の名前をつけようって話し合ったの」


「それじゃあ、銃一にはどういう意味が込められてるんだ?」


「銃は戦争に用いられたりとか、危険な事を連想するでしょ。だから逆に平穏無事に過ごせるかな、と思って。ほら、実際あなたはいつだって大怪我もせずにうちに帰ってくるでしょう?」


「ふっ……なんだよそれ……」


 俺は思わず笑った。大怪我さえしなければ平穏無事って、ちょっと判断がガバガバすぎやしないかと思って。でもまあ、俺を思ってつけてくれたのは事実だと分かった。


「ま、まあ読み方は普通だし、ちゃんと理由があるのは分かったから改名は保留する……」


 早い話が、理由を聞いて自分の名前を好きになった訳だ。我ながら単純だとは思う。


 あのあと、両親には言わなかったけど自分に一個だけ誓った事がある。それは皆を守れる位強くなるという事。


 銃は護身の為に持つ事だってある、攻めじゃなくて守りの為に拳を振るったっておかしくはないと思って。


 まあその結果意に反して吸血鬼狩りに巻き込まれた訳だけど。両親を守れるなら、と思ってさして反発もせずに従った結果がもう少しで殺されるか吸血鬼にされる所だったと思うと、なんとも情けない。


 中学、高校と相変わらずの破壊衝動だったし、なんなら年齢を重ねる毎に強くなっている自覚はあったけど、有名になるにつれて売られる喧嘩は多くなった。その結果、外である程度発散させられるようになったので、家で勉強をする余裕が出来た。勉強の出来るヤンキーなら皆も親しくしてくれるかもしれない、という打算も少しあった。世の中そんなに甘くはなかったけど。


 でもどれだけ勉強しても国語はどうにも苦手だった。そもそも普段から話す相手が両親しか居ないし、子供の頃に読んだ物語の中ではライカンスロープが討伐される立場だったせいで、頭のどこかで物語その物を毛嫌いをしていたってのもある。結局、大学は理系の学科に進んだ。


 そのせいか? 合格祝いに貰ったコクーンでGoWを始めたとき。昇 銃一の名前からガンライズとつけたまでは良かったけれど、問題はそのあと。


「ガンライズだけじゃちょっと味気ないよなあ……なんかつけるか」


 そう思って、最近クラスで話題になっていたアニメの部隊である帝国を思い浮かべた。


「帝国……大陸を統一したっぽいし、まさに強さの象徴って感じだな。一騎当千って感じで案外悪くないか?」


 そうして決めた「ガンライズ帝国様ご一行」の名前。「様」の位置がおかしいと言われて恥ずかしい思いをしたのはついこの間の話だ。

ストック切れました。また数日おきの投稿になっちゃうかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] かーちゃん、だからといって、日本国内にいるのに銃はあかん、銃は(゜ー゜)(。_。)ウンウン
[一言] 更新有り難う御座います。 「……良いなぁお前、銃一なんて”普通”の名前で……。  俺なんて”海人(マーリン)”だぜ?」 「……オレ、弾武琉怒亜(ダ○ブルドア)」 「ぼくは針保多(○リポ…
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