表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/316

114.鋭い視聴者さん

マカチュ子爵領迄の距離を、東の森と同程度から東の森より遠い描写へと変更しました。

 アインとの食事も済ませ――エリュウの涙亭は店主であるジョンさんの人柄もあって、悪い噂が広まっている今の状況でも僕とアインを悪く言う人は居らず、居ても追い出される――、明日に備えてログアウトしようかと思っていた矢先、視聴者の一人がある提案をしてきた。


『切り抜き動画を作っても良いですか?』


「ええと、切り抜き動画って何ですか?」


『蓮華さんの配信の中から特に興味深い部分をまとめて作る短めの動画のこと』

『切り抜きがあると初見プレイヤー増えると思うぞ』

『ファンになって貰えれば収益も増えるし良いこと尽くし』


「えーでも、それって詐欺にならない?」


『詐欺……?』

『切り抜きが話題になると確かに収益の問題は発生する』


「あ、えっと、そうじゃなくて。切り抜き動画とやらを観て『面白い!』って思って大元の僕の配信を見ても、『思ってたのと全然違う!つまんない!』ってならないかな? 僕の配信って他の人と違ってずーっと流しっぱなしだから特に山場とかも意識してないし……」


『そう言うwww』

『いやー、別に面白くないと思ったら登録解除すれば良いだけだし詐欺って騒ぐ奴はいないでしょ』

『切り抜きってそう言うもんだから気にしなくて良い』


「そういうもの……なの? いやね、最近は配信されてるって知ったこともあって六時間ただひたすら日光浴をする……なんてことは控えてるけれど、また唐突にやり始めたら視聴者さんにも迷惑だよねって思って」


『六時間日光浴wあったな』

『今なら視聴者と雑談も出来るし需用はあると思うけど』

『まあ六時間ただひたすらぼーっとする動画、俺は好きだったけどな』

『アレなにげに投げ銭多いって知ってた?w』

『控えなくても良いのにwってかどうしても気になるならそんときだけ配信切れば良い』


「あれが好き……? 皆の感性が分からない」


『ブーメランなんだよなあ』

『それこそゲーム内で日光浴六時間しようって気持ちが分からない人も居るのでは』

『まあ、話は戻って切り抜きよ』


「あ、うん。そうだね。僕は別に切り抜き動画作って貰って良いけれど……、基本的にいつもヴィオラと一緒に行動しているから、もしもヴィオラも映っている部分を切り抜くのであれば、彼女の許可も得てからにして欲しい。あとアイン。……あ、良いの? 良いそうです」


『www』

『NPCに聞くスタイルw』

『そりゃそうだ』

『うむ、許可、大事』

『切り抜き側の収益の話はしなくて良いのかい?』


「そう、それね。実は未だに良く分かってないのだけれど、収益って投げ銭のことだけであってる?」


『蓮華くんは広告オンにしてないから投げ銭だけであってる』

『広告オンにすると、広告収入も得られちゃう。無断で他人の切り抜き作って収入得る乞食みたいな人も居るから、そこの線引きはちゃんとしておいた方が良い』


「なるほど。えっと、どうしようかな……僕的には切り抜きをわざわざ作ってくれる労力に報いる為にも広告収入はあっても良い気はするけれど」


『切り抜きって特に面白い部分だし、人気が出たら広告収入の額が馬鹿にならないよ』

『きちんと広告収入を明確にして貰って、収入は折半するとか決めた方が良い』

『蓮華君から支払う形にするのも手』

『報酬を支払ってやって貰うなら、ちゃんと字幕付けたりとか凝った編集する人選んだ方が良い』

『収益認めちゃうと猫も杓子も切り抜き作り始めるし、中には低クオリティ、字幕もない、文字通り一部分だけ切り出した動画上げる輩もいるから気を付けて』


「ほー……難しいんだね……まあヴィオラが映ってる部分とかもあるだろうし、一応こっちからもヴィオラには相談しておく。それから、収入に関してトラブルに発展したら面倒臭いし、もし作って貰うならサンプル動画作って貰って、こっちで確認してから正式にお願いした方が良さそう。あとはまあ……無許可の切り抜きってそもそも著作権侵害じゃない? それでも普通に動画は上がるものなの?」


『まあ法律把握してる人少ないし、皆やってる!とか儲かりそう!とか面白そう!って理由でやり始める人は多い』

『一人やったらそれみた奴がまたやりはじめて……ってどんどん増える』

『昔っから同じ問題起こってるのに何十年経っても減らないんだよな、これが』

『だなー。無許可の切り抜きは通報する感じ』

『雇うにせよ折半するにせよ、その人以外は「無断掲載」って分かるように告知して貰えればこっちも判断しやすい』

『削除されてもしつこく上げる人とか、一動画でとんでもない額の収益得てる人は蓮華君が運営側に申し立てて、チャンネル凍結とか法的手段とった方が良い』

『あと、悪意のある切り抜きもあるから気を付けて。切り抜いた部分だけ見ると意図した発言とは真逆の意味に聞こえたりとか』

『あるよねー、本当。そう言うのに限ってソースとして出回るからたちが悪い。ちゃんと公認切り抜き師として明記して貰えればそう言うのも一掃出来る』


 なるほど、どうやら法律違反なんて気付かずに流行りに乗って動画を作ってしまう人も居る、と。だからまずは運営側に通報して警告の上削除して貰う、と言うのが対処方法として主流なのかな。で、悪質な人に対しては、チャンネルごと凍結して貰ったり、僕の方で法的手段に出る、と。


「分かったよ、皆色々ありがとう。えっとそれじゃあ、さっきコメントくれた人は申し訳ないけれど、……どうにかしてテスト用の動画を僕の方に共有してもらっても良いですか?」


『どうにかしてw』

『具体的な共有方法が頭に思い浮かばない系配信者』

『そういうところ疎いよねw』

『ファンクラブとかは作らないの?』


「ファンクラブって何……? いや、言葉の意味は分かるけれどそれは自分で作るものなの……?」


 ファンクラブって誰かのファンになった第三者が勝手に立ち上げるものだと思っていた。


『月額課金制のコミュニティみたいなもの。ファンクラブ限定動画の配信とか、チャットで使うオリジナルスタンプの配付とか?まあ特別なことが出来る』

『蓮華君を推したい!って人はファンクラブに入るだろうね。配信者も継続的に月額収入入るし、視聴者側も推し活が出来てWin-Win』


「難しい単語が一杯出てくるな……。一つ分かったのは、現状では常時配信してるから『ファンクラブ限定動画』とやらを作る機会が全くないってことだね」


『確かに』

『まあ蓮華さんにはまだ早いな』

『ゆっくりやっていけばいいんだよ、うん』

『ファンクラブがない方が皆公正で良いって思う人も一定数いるしね』


「とりあえず存在は覚えておくよ、今後どうするか考えるときがあるかもしれないし」


 今回みたいな王都クエストの仕様がこの先もあるのならば、常時配信も考えものだしね。とはいえ、先日ちらっと聞いたときには常時配信を望む声も確かにあった。曰く「リアルタイムで視聴したい」「蓮華君の行動が不安だから見守りたい」「配信外でやらかしそうだから見逃したくない」まあ散々な言われようではあるけれど、確かに今みたいに「クエストの報告位だし配信しなくて良いか」なんて思っていたら限定称号獲得、とかもあり得るわけで……、基本的に情報を独占するつもりはないし、皆で協力してゲームを進行させたい僕としては、公開する範囲と非公開にする範囲を自分で決める必要がある、手動配信の塩梅を判断するのが難しい気がしている。


 とはいえ、今すぐに答えを出さなければいけない訳でもない。ひとまず今日は仕事もする必要がないので、視聴者さんに挨拶をしてそのままログアウトした。さて、先日買ってきた書籍類を読みますかね……。


   §-§-§


 翌日、デンハムさんから刀を受け取り、報酬を支払ったり、僕の方でも教会で聖下の護衛クエストを受領したり。準備が整ったのでいざ出発。ちなみにパーティ内に聖下が二人登場するなんてことはなく、そこはちゃんと一パーティにつき一人でした、なるほど。


 デンハムさんから刀を受け取るときに追加説明してくれたのだけれど、魔核の属性によって発動する強化内容も微妙に違うらしい。例えば火属性の魔核であれば攻撃威力向上の割合が大きく、次いで攻撃速度が上がる。土属性は、装備の耐久力が向上し、持っている間はプレイヤー自身も少し身体が頑丈になるとか。ただし攻撃速度は上がらないとのこと。


 こう考えると、意外と土属性も優秀では……? この世界だと日本刀と相性が悪い相手が多そうだけれど、刀そのものの耐久力が向上するのであれば、多少の無茶も出来るというもの。将来的に業物の日本刀が入手出来たらヤテカルの魔核を埋め込んでも良いかもしれない。


 無属性の魔核はもっと凄い、六属性全ての魔核と同じ能力が向上し、且つ装備に六属性やその他特殊属性の魔法を付与することが出来るという。それは確かに喉から手が出る程欲しい代物だ。


 デンハムさんがつけてくれた魔核は質が余り良くなく、ツリーマンの魔核と同レベルといったところらしいけれど、それでも三十銀。なるほど、魔核の価格が低いのではなく、取り外しにかかる手数料が高いから買った方が安いということらしい。まあ確かに一度埋め込んだものを取り外すって、なかなか難しいよね……。


 装備全体の料金としては三金。思ったよりも安いけれど、今回の報酬の半分以上が持っていかれた形。相性があるとは言え、今回の遠征で全部壊れる……なんてことは避けたい値段である。道中なるべく鍛冶屋で手入れして貰うことにしよう。……あるよね、鍛冶屋?


「さて、それじゃあ行きましょうか」


 ヴィオラの言葉に僕は頷く。いよいよ東へと出発。事前に聖下から聞き出した情報を元に色々調べた結果、マカチュ子爵領は東南方向にあるらしい。距離的には東の森よりも更にかかるとのこと。そして何故か、マカチュ子爵領はここ数年でいきなり砂漠化したとのこと。それもあって前子爵は財政難に陥り、元子爵令嬢に無理な縁談をさせようとしたのではないか、と……これはジョンさんからの情報。あの人本当に何でも知ってるなあ。


『ちょっと気になってたんだけど、最近二人で一緒にゲームしてなくない?今日東に行くっていつ決めたの?』

『確かに』

『おっと……?』


「「あ」」


 なんて鋭い視聴者さんなんだ!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2024年4月20日2巻発売!

吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

二巻表紙


1巻はこちら

― 新着の感想 ―
[一言] 即バレで草なんだ
[一言] 大丈夫ですよ、ここからまだ挽回できます!(挽回できるとは言ってない)w
[一言] あ、じゃなくてパーティ組んでるから連絡先交換したでいいと思うんだけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ