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112.予想通りでした

出先で投稿忘れそうだったので今日は早めに投稿します

「遅いわ馬鹿者が! どれだけ待たせれば気が済むんだ?」


 シモンさんからの第一声がこれです、事前情報もあったので、まあ予想通りでした。


『メチャクチャキレてるwww』

『ええー、怖いわ』


「すみません、ちょっと立て込んでいまして……」


「そうやって常日頃からサボるから肝心なときに他人を使いに出す羽目になるんだ。忙しさにかまけて魔法の修行を怠った結果が教会での一件。少しは反省したかと思えば全然顔を見せに来ない……どうして弟子にしてしまったのかと悔やむ寸前だったぞ」


『オーレさんだっけ?頑張ってくれたの』

『彼がいなきゃクエスト失敗してたかもしれない』

『魔法って大事なんだなー(白目』


「まあ良い。ところで、どうやって魔法陣を無力化したんだ、うん? 説明を聞いただけで出来るとは、なかなかどうしてやるじゃないか」


「あ、えーと、つい最近ケーキを作る為にチョコレートで文字を書く練習をしてたんです。その経験を元に頑張りました」


『チョコぺンwwww』

『それ師匠余計に怒るんじゃね』

『火に油を注ぐスタイル』


「ほう……チョコレートで文字か……なるほどな。私の教えを守っているようだ、褒めてやろう」


『まさかの』

『ええ……(困惑』


 視聴者同様、僕も少し困惑してしまった。てっきり魔法を馬鹿にしているとか言うのかと思ったのだけれど……。


「何だその阿呆面は。私が怒るとでも思っていたのか? 前にも言った筈だぞ、『想像力を鍛える為に、色んなものを観察しろ』と。それは何も魔法の発動に限ったことではない。全てに対してだ。魔力の制御に関しても勿論当てはまる。自分の経験を元に、魔法陣に対する魔力の制御方法と、チョコレートで文字を書く方法が同種だとお前は考えたのだろう? これは褒めるに値する快挙だぞ。飲み込みが早く、思考が柔軟な証拠だ」


『なるほど』

『確かに仕事とかも一緒かも』

『奥が深いな……』

『だがチョコぺンである』


「あ、ありがとうございます……」


「さて、それでは次の段階に進む。基本の魔法陣は六種類。その形を丸暗記しろ。一部の例外を除いて、どんなに複雑な魔法陣も基本の形から派生する。基本さえ覚えておけばその魔法陣がどのような効果なのかが分かる訳だ。……それから、先日はあえて言わなかったが、魔法陣の中には無力化を想定して罠を仕掛けてあるものが存在する。その特殊な記法も覚えておけ。ま、今回は魔法陣の作成者が中途半端な腕前で良かったな」


 にやりと意地悪い笑みを浮かべながら言う師匠(シモン)。しかし正しい指摘なので、僕は神妙に頷くに留めておく。


 教わっても居ないのに自分なら出来ると変な自信でもって試したのだから、「少しは痛い目に遭え」と思っていたのだろう。そもそも事前に警告して貰っていたとしても、その罠とやらの形が分からない以上、結局あの場では試してみるしかなかった。やはり普段からもう少しここに通う必要があるよなあ……またしばらく東に行くから来れないのだけれど。


「基本の魔法陣はこれとこれとこれ……それからこれとこれとこれだ。六種類ある理由が分かるか? それぞれ元素の属性だ。基本の六つは火・水・風・土・光・闇に対応している。それ以外の特殊なものに関しては複雑な模様になるから気合で覚えるしかない。が、まあ使用頻度はそこまで高くない、追々で良いだろう。それから、これが魔法陣の種類がまとめてある図鑑だ。お前に渡しておくが……これがあるからといって絶対に暗記を怠るな。何故だか分かるか?」


「有事の際に図鑑と見比べている暇がないからですか?」


「半分正解で半分外れだな。お前の言う有事は魔法陣の無力化の意味だろう。だが、当然自分が描く側になる状況もある筈だ。先日も言ったが、魔法陣は繊細な魔力操作や描写の丁寧さが求められる。お前は図鑑を見ながらその場で描き写した魔法陣の質が良いと思うか?」


「あ……確かに。本と魔法陣を何度も見比べますし、線一つとってもガタガタになる自信がありますね」


「だろう、そういうことだ。当面の目標は基本の魔法陣六種を覚え、自分でも描けるようになること。こればっかりは座学より実技、ひたすら練習するしかない。今日はもう帰って良いぞ」


「あ、はい……えっと、明日からまた暫く居ないのですが……」


「またか。まあ良い、最低限必要なことは教えたからな。あとは反復練習と解析実践あるのみだ。戻って来たら上達したかチェックするからそのつもりで励めよ」


『この感じ、懐かしい』

『塾感ある』

『抜き打ちじゃないだけ良心的』


 感謝の言葉を伝えて師匠(シモン)の元を後にする。さて……あとはアインとの食事の約束だけれど、まだ時間が早いし、ミルコ少年のところに顔を出してこよう。大丈夫だとは思うけれど、無事にお兄ちゃんが戻ってきたか確認出来てないからね……。


 前回はふらふらと適当に歩いていたこともあり、余り道順も覚えていない。クエスト一覧から報告者アイコンの位置表示を選択し、ときおりマップを見る感じで目的地を目指していく。


『時間あきすぎてミルコ少年に忘れられてそう』

『本当それ。ギルドも寄付してくれると思ってたとか言われてたしw』

『俺達の数日がこっちじゃ二十日近いからな……』


「本当だよね、せめて救出した人達の中にミルコくんのお兄ちゃんが居たのか確認しておけば良かったのだけれど、あのときはそれどころじゃなかったというか……本当に申し訳ないなあ」


『まあ兄ちゃん無事なら大丈夫だろ』

『無事じゃなかったら泣かれるだろうけど』

『縁起でも無いこと言うのやめたげてwwww』


「お……ここか」


 「アネス孤児院」のプレートを見つけ、立ち止まる。深呼吸をしてからドアノッカーで何度か扉を叩く。


「はい? どちら様……あら」


 出てくれたのは前回容赦なくほうきで叩いてくれた女性。あいたたた、思い出しただけで身体のあちこちが痛くなってきたぞ……。


「お久しぶりです。ミルコくん、居ますか?」


「ええ、居ますよ。その節は大変お世話になりまして。……どうぞお入りください、お茶を用意しますから」


 にこやかな笑顔で招き入れてくれる女性。この様子から察するに、お兄ちゃんは無事なのかな?


「おにいさん!!!」


 大きな声が聞こえたかと思うと、ミルコが僕目がけて突っ込んできた。


「やあ、元気だったかい?」


「うん! ずっとお礼が言いたかったの! 兄ちゃんを助けてくれてありがとうって!」


『お』

『無事だったか』

『良かった良かった』


「良かった」


「今兄ちゃんを呼んでくるから待ってて!」


 そう言うと弾丸のような速度で階段を駆け上がるミルコくん。本当に良かった。


「あ……あのときのお兄さん」


 ミルコくんに引っ張られるようにして階段を降りてきたのは、見覚えのある顔。ああ、黒髪黒目の人が閉じ込められていた場所に居た記憶がある。そうか、彼がミルコくんのお兄ちゃんだったのか。


「先日は本当にありがとうございました」


「いや、もう少し早く助けられたら良かったのだけれど……遅くなってごめんね」


「いいえ、正直もう、諦めていたので……ミルコから色々聞きました。ミルコが教会迄の道のりをお兄さんに伝えたって。正直、俺達みたいな底辺生活をしてる人間のいうことを信じて協力してくれる人が居るなんて思っていなかったので驚きました」


「役に立てたなら良かった」


「あの……それで、ミルコとも話したんですけど。お兄さんたちは冒険者なんですよね? ギルドを通して依頼を受ける人達だって自警団のおっさん達から聞きました。少ないですがこれを受け取ってほしくて……」


 ミルコのお兄ちゃんが差し出してきたのは銀貨が二十枚といったところ。


「……受け取れないよ」


「お、俺達が働いて稼いだ金です。盗みとか、そういう金じゃないです、安心して受け取ってください」


 僕が断った理由を勘違いしてしまったらしい。彼らの言葉の端々から、常日頃どういう扱いを受けているのかが垣間見えたような気がして気分が重くなった。


「あ、ごめん、そういう意味じゃなくて……えっと、そのお金は二人が稼いだ大切なお金だから、二人の為、あるいはこの孤児院の為に使って欲しいんだ」


「でもそれじゃあ、お兄さんに渡せるものが何も……」


「ね、僕の髪と目の色を見て。君と同じでしょう? 僕は僕の今後の為に教会の噓を暴いた。ミルコくんに頼まれたからじゃない。それじゃあ駄目かな?」


 この年である程度敬語らしい言葉も話せるあたり、彼らは頭が良い。この世界の学校制度が分からないので何とも言えないけれど、もしかしたらこのままお金を貯め続ければ将来学校に通うことが出来るようになるかもしれない。貴族の子供達のみが通うのだとしたらどうしようもないけれど、それならばそれで独学で勉強をする為に参考書を買うのも一つの手だろう。


「そんなの……悪いです」


「じゃあ、もしも今後僕が困っていることがあったら今度は君達が助けてくれたら嬉しい。それならどう?」


 二人はどうすれば良いのかと相談するように顔を見合わせている。困らせるつもりはなかったのだけれど、こればっかりはこちらも折れる訳には行かない。二十銀といえば二万円。この年の子供達が鉄くず拾いでこの額を稼ぐのにどれだけの時間がかかったのかを考えると、絶対に受け取る訳にはいかない。


「ほらほら、お兄さんを困らせてどうするの? お礼をしたいのであればお兄さんの言うことを聞きなさい。……それじゃ、お茶はここに置いておきますね」


 女性が空気を読んで子供達にアドバイスをする。最も身近な大人である先生のいうことだからか、少しだけ悩んでから二人は勢いよく頭を下げた。


「ありがとうございます! お金は大事に使います。何かあったら僕達に何でも言って下さい。役に立てるかは分からないけれど、精一杯頑張りますから」


 ミルコのお兄ちゃんが最後迄喋るか喋らないかと言うところで、クエスト達成画面告知が頭上に瞬いた。と、それと共に何やら別の告知も続けて表示される。


【告知:限定称号『少年達の救世主』を獲得しました。装備効果及び設定はキャラクター画面より行うことが出来ます】


 ……お? 何だろうこれは。


『限定……称号……だと……!?』

『装備効果!?』

『まじかよこんなものが存在したのか……』


 何やらコメント欄も大賑わい。ふむ……また何かやらかしたのだろうか、僕は?

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― 新着の感想 ―
[一言] >少年達の救世主 何かいかがわしいイベントで少年たちを救出したような称号ですねw >また何かやらかしたのだろうか、僕は? はいはい、またぼくまたぼくw
[一言] 更新有り難う御座います。 こうして、平然と(?)地雷を踏んでいくぅ!?
[一言] やだ蓮華先生がなろう主人公してる(笑)
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