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110.すっかり忘れていた

Happy Birthday to Me!!!

と昨夜いそいそと自分を祝うイラストを描いて0時ジャストにTwitterに上げた暁月です、どうも。

えー、1030歳になりましたーわーぱちぱちぱち!

「……という訳で、何とか相手を灰にして井戸に飛び込んだって感じかなあ」


 夕飯を食べながら、今日の顛末をヴィオラへと話している。洋士や千里さん、ジャックさんは料理に夢中で話を聞いている様子は一切ない。


「なるほど。それじゃあガンライズくんは無事なのね?」


「うん。今さっき家迄送り届けてきたところ」


「ふうん……それにしてもよく井戸の中から上がって来れたわね? と言うよりも青森からここ迄よく戻ってこられたわね?」


「あ、それに関しては井戸の中が別世界になってて……女神様が助けてくれたんだ」


「ちょっと何言ってるか分からないのだけれど、ゲームの話をしてるのかしら?」


 こめかみを押さえながら確認してくるヴィオラ。そう言いたくなるのは分かるけれど、間違いなく現実の話なんだよね……神様だなんて急に現実味のない人物が登場してきたせいで、僕もまさに「ここは小説の世界だったかな」と勘違いしそうになった位。


「いや、信じがたいけれど現実の話だよ。ホレおばさんっていう女性の神様が居たんだ。なんか立派なおうちに住んでて、僕らの種族についても詳しくて。色々教えて貰ったり怪我の手当をして貰って、最後には東京迄送って貰ったって感じ」


「ホレおばさん……確かドイツかどこかの民話にそんな人が出て来たわね。正体不明と書かれていた気がしたけれど、神様だったのね」


「へえ、ホレおばさんのことを知っているんだ」


「ええ、何でも彼女が布団を叩くと、舞った羽根が雪になって地上に降り注ぐとか……。確かドイツでは雪の日は『ホレおばさんが寝床を直している』と言うそうよ」


 随分とロマンティックな物言いをするのだなあ。ドイツの人達は皆、作家や詩人になれるのではなかろうか。


「それにしても、食事が出来ることを教えてくれたのもその人なんでしょう? 随分と物知りなのね。神様だからかしら?」


「どうだろう? どうも吸血鬼の知り合いが何人か居るみたいだったよ。僕らの生態はその人達に聞いたんじゃないかな?」


「言い方は悪いけれど、吸血鬼って創作物の中だと割と悪魔の眷属のように書かれることが多いじゃない? だから神様が吸血鬼と知り合いって何だか不思議な感じがするわね」


「まあ、確かに僕らって何となく輪から外れた種族って感じがするもんね、エルフもライカンスロープも生まれた時からその種族だけど、僕達は言わば感染させることが出来る訳だし。人間が不老不死の生き物になるって、それこそ悪魔と契約したって言った方が納得しちゃう。ホレおばさんは僕達の種族のことを『夜を統べる者』って呼んでた。随分と仰々しい呼び方だと思ったけれど、その辺りが何か関係してるのかなあ」


「夜を統べる者って一種の支配者ってことよね? 案外吸血鬼も神様に準ずる立場だったりして」


「まさかあ……」


 何となく、それ以降会話が途切れてしまったので黙々と食事を続ける。


「そう言えば、今後はどうするの? 今迄同様に巡回するのかしら?」


「そうだな、ひとまず明日、明後日はそうなるだろう。が……今までに二人、今日は二人。計四人殺った。明日、明後日次第では斥候が全滅したと仮定して一旦巡回は終了するかもしれん。俺達の側も無傷じゃない、回復に専念する時間が必要だ」


「そう。蓮華くんは? 怪我をしたって聞いたから明日、明後日の巡回には不参加かしら?」


「今迄通り、お前の護衛だ。お前が出掛けでもしない限りは待機になるだろう」


「じゃあ蓮華くん。仕事に支障がなければ明日はGoWにログインしてちょうだい。やることがたくさんあるから」


「うん? 仕事は問題ないけれど……何かあったの?」


「まず、貴方の師匠がお怒りよ。王都クエストのときに助けて貰うだけ貰って、そのあと顔を出してないでしょう」


「あ……」


 まずい。すっかり忘れていた。そう言えば師匠(シモン)から「いやというほど魔法陣についての講義をしてやるから覚悟しておけ」と言われたんだっけ……。大変お怒りのご様子だったのに、そのあと逃げるように顔を見せなくなったのだから火に油を注いだようなものだ。地獄の授業が待っているに違いない。


「それと、もう一つ。教皇が東に行きたいそうよ。新たなクエストってところね。各プレイヤーが教皇とパーティを組んでいる状態だからちょっとしたホラーになっているけれど」


 なるほど、NPCは基本的に一人しか存在しないけれど、各プレイヤーが主人公というゲームの関係上、どうしてもキーとなるクエストにはNPCがプレイヤーのパーティの数だけ増えるという状況が発生するのか。想像したらちょっと……いや、かなり非現実的で違和感がありそうだけれど仕方がないのかな。


「東? なんだって東に……いや、それよりも教会の許可は得られたの?」


 まあ、あの教会のトップが教皇なのだから許可が必要なのもおかしな話だけれど、ああ見えて教皇だからこそ絶対周りは反対するよね。


「教皇のお母様が東の、マカチュ子爵領で昔消息を絶ったんですって。それが元で教皇は教会に所属することになったみたい。元々は王都で母一人子一人、静かに暮らしていたそうよ。周りの人はお母様は既に死んだものと思っているみたいだけれど、教皇は諦め切れていない。『亡くなっているとしても、せめて遺体は見つけたい』と言ってて……今は時期的にも裁判が始まっていないから、王都は教皇にとって余り良い空気じゃないでしょ。それで、裁判が終わる迄の間ならとプレイヤーが護衛として同道することを条件に許可が下りたのよ」


「なるほど。で、ヴィオラは僕のせいで東に向かえずにいた感じか」


「まあ、有り体に言ってしまえばそうね。一人で行くのもやっぱり……ねえ? それに東行きは貴方とアインくんにとっても良いと思うし」


 確かに、噂が消えていない以上王都の居心地ははっきり言って最悪。アインに至ってはここ最近はずっとエリュウの涙亭の二階で一日中読書をして時間を潰している状態。噂が出回る前迄は一人で気楽に出掛けていたものだからアインにとっても相当なストレスだろう。それに元々、そろそろ東側に行ってみようという話はしていたのだ。東が解放されたのは前回の王都クエスト直後。むしろタイミングとしては遅すぎた位。


「確かに、裁判迄はまだ時間があるだろうし今は王都から離れておいた方が良いかもしれない。それじゃあ明日は東に向けての荷造りと情報収集かな?」


「ええ。……その前に蓮華くん、ギルドからの報酬は受け取った?」


「……あー……まだだった」


「ちょっと、何やってるのよ。まあ、こっちがごたごたしてたからのんきにゲームなんか出来なかったんでしょうけど……ずっと仕事してたの? 凄い集中力ね……」


「現実逃避には丁度良いんだよね、仕事って。仕事は仕事で辛いけれど」


「まさかそんな心境で書かれてるなんて誰も思わないでしょうね……」


 もしも小説などに対して「このときの筆者の気持ちを答えなさい」なんて問題があったとしたら、正解は「苦しい」あるいは「辛い」だと思う。大抵書いてるときってもっと良い展開がある筈だ、ここの描写が気に食わない、って四六時中悩んでいるから……。まあ論文じゃない限り、実際に聞かれるのは「登場人物の気持ち」だろうけどね。


「……おい」


「うん?」


 見ればジャックさんが僕に話しかけている。


「お前、良い腕をしているじゃないか。……僕はジャックだ。まあ、これだけ美味しいご飯を作ってくれるならここに居てやっても良い」


「お前も家妖精なのか?」と洋士。


「いいや、僕は霜の妖精……雪を操るのさ」


 霜の妖精と言えばジャック・フロストだろうか。名前がジャックさんとはまた安易な……とは思ったものの、ここは黙っておいた方が良さそうだ。


「なんだ、随分偉そうな態度だったが要するに役立たずか」


 この子はどうしてジャックさんに対してこんなに喧嘩腰なのだろう。普段からよそでもこんな感じなのだとしたら、もう一度教育し直すことも視野に入れないといけない。でも和泉さんに対してはここまでひどい態度じゃないし……。それとも、僕に敵対心を向ける人に対して喧嘩腰になる? いや、それならヴィオラが当てはまらない。難しいな、単に相性の問題なのかな?


「なんだと!? 僕にとって最適な場所に居たのに、お前達の都合で突然連れてこられたんだから怒って当然だろう!」


「だから青森に帰って良いと言っているんだ。働かざる者食うべからず、うちに役立たずは置かない方針だ」


 その理論で行くとボクとヴィオラも特に役に立ってはいないと思うのだけど……。ヴィオラは保護対象だから良いとしても、僕に関しては完全にお荷物、ただの居候である。


「そ、それならそこの二人は何の役に立つって言うんだ!?」


「父さんは家族だ、役に立とうが立つまいが関係ない。そもそもお前が今食べた料理は誰の手作りだ? そこの女は……父さんの客人でもあり、俺達の護衛対象だ」


 おお、洋士がヴィオラの援護(?)をしている。こんな日が来るなんて……父さんは嬉しいよ。


「む……。じゃ、じゃあ俺も何かを手伝う。それなら問題ないだろう?」


「別に手伝って貰うようなことは何もない。さっさと青森にでも帰れ」


「まあまあ洋士……僕達のせいで彼がここに来てしまったのは事実なんだし、青森迄自力で帰れというのも酷な話でしょう。青森に帰るにしても、ちゃんと僕が送り届けるから安心して? ここに居たいのなら『僕の客人(・・)として』居れば良いし」


 「客人」という言葉を強めに発言した結果、ジャックさんの残留は無事決定しました。そりゃあ自分がヴィオラを客人と言った手前、僕がジャックさんも客人になるのだと言えば洋士は何も言えなくなる。ジャックさんから僕を守ってくれた洋士には申し訳ないとは思うけれど、いくらなんでも意地悪が過ぎるからね。


「それじゃ、ジャックさん。改めてよろしくね」


「お、おう……あんた思ったより良い奴だな。……洗い物は任せてくれ」


 そう言うと、急に姿がかき消えたジャックさん。次の瞬間には僕達と大差ないサイズの、それはそれは見目麗しい銀髪の青年――性別はないんだっけ?――が居ましたとさ。なるほど、大きくなることが出来るのか……。

明日はホグワーツレガシー発売日ですね……予約し損ねて予約特典が……;x;

こんなに早くに出るとは思っていなかった(リサーチ不足w

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2024年4月20日2巻発売!

吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

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― 新着の感想 ―
[一言] え、 遅ればせながら誕生日おめでとうございます。 いつも面白く、楽しく、なごみながら拝読させていただいています。 これからもご健勝にご活躍お祈りいたします。 おめでとうございます!
[良い点] 遅れましたが誕生日おめでとうございまーす! [気になる点] 1030…凄いです! [一言] …
[一言] なるほど1030歳か…若干こちらが上ですか… まあ、小説書けるだけ貴方が上位の存在なので五体投地で敬う事にします
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