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107.昔からこんな感じだった気がする

「どこかの公園……っすね」


「あー……この景色見たことあるなあ。若干雰囲気が変わったけれど、昔からこんな感じだった気がする」


 どこだっけな、確か何かの折に景勝地として有名なこの場所に足を運ぼうという話になったのではなかっただろうか。


「あ、そうだ。多分三宝寺池じゃないかな」


「となると……練馬区の石神井公園ってとこっすかね。正直神奈川とか千葉とか、首都近郊を覚悟してたんで都内で良かったです」


「昔から変わらない場所もあるんだねえ……」としみじみする僕。


「そうすね、俺も初めて来たけど何か良いところですね、心が洗われるというか。……ところで蓮華さんはどこに住んでるんですか? 良かったら送りますよ?」


「えっとねえ、六本木駅……かな? うーん……実を言うと電車の乗り換えとか不安だからお言葉に甘えても良いかな? 本当迷惑かけちゃうけれど。……あ、っと、まずは洋士に東京に戻ってきたって報告しないとね。申し訳ないのだけれど、もう一回携帯を借りても……良いかな?」


「勿論良いですよ。えーと、あ、六本木となると車でもそんなに変わらない時間っすね。もし迎えに来るって言われてもここに来る迄の時間を考慮したら俺達が電車乗っちゃった方が早いと思います」


「分かった、それも踏まえて聞いてみるよ……もしもし洋士? 今ホレおばさんに送って貰ったところ。えっとね、石神井公園だから練馬区、らしいよ。それで、ガンライズさんが電車乗った方が早いって言うんだけど……うん? 一人じゃないよ、電車に乗るのが不安だからガンライズさんが送ってくれるって」


 大の大人が電車に一人で乗れないというのを報告するのはいささか恥ずかし過ぎるけれど、仕組みが本当に良く分からない。どうして同じホームなのに違う場所に行く電車とか、停車駅が違う電車が存在するの?


「うん、うん。分かった。あ、ガンライズさん、洋士が一回話したいっていうから代わって貰っても良い……?」


 ガンライズさんに携帯を返却すると、何やらドスの利いた声が携帯を通して聞こえてくる。「何があっても送り届けろ」とかなんとか。いや、送って貰う立場なのになんでそんなに圧が強いのかな? あいつ僕が聞こえてないと思ってガンライズさんを脅してるのかな?ん?


「はい、はい。分かりました!」


 ガンライズさんも緊張気味に頷くばかり。いや、貴方は善意で送り届けてくれるだけなんだからそんなたわ言真剣に聞かなくて良いんですよ……怒って良いところです。良い人過ぎませんかこの人?


 洋士との通話を終了し、携帯を再び腕につけるガンライズさん。そう言えばガンライズさんの携帯は腕輪型。僕が洋士に貰ったのは板型だった。全然気にしてなかったけれど、一口に携帯って言っても色々な形があるんだなあ。現代物を書くことがあるかもしれないしちゃんとリサーチしておかないと。


「さ、それじゃあ行きましょう。ここから六本木へ行くならまずは西武池袋線。それから都営大江戸線に乗り換えます」


 洋士から脅迫を受けたにもかかわらず、それを微塵も表に出さずに爽やかな声で告げるガンライズさん。凄い……この人凄いよ……僕も見習いたい。


「色んな線があったり同じホームから違う場所に行ったりして、電車って難しいよねえ」


「確かに、俺も最初に乗ったときは間違えてちょっと涙目になったなあ……蓮華さんは普段は全然乗らないんすか? 車移動?」


「うーん、今はこっちに住んでるけど普段はもっと地方に住んでるからねー。コクーンの修理……が終わったら戻ると思うし、一生慣れないかも」


「あー。修理……修理っすね、はい。俺も修理して貰ってます。あれ凄いですよね、本当ソーネ社の人には頭が上がんないっすよ。でも、そうか……帰っちゃうんすね。今回の件が落ち着いたらまたオフ会も兼ねてどうですかって言おうと思ったんすけど。帰っちゃうのかあ……」


 残念そうに呟くガンライズさん。心なしかその頭上に、垂れた耳が見える気がする……。それにしてもオフ会かあ。良い響きだなあ。


「オフ会……そそられる……。小説でも皆和気藹々(わきあいあい)としててちょっと羨ましかったんだよねえ。そう、食事も出来るってことが分かったし日光問題さえクリア出来れば是非行きたい……」


「お、良いっすね! まあ蓮華さん位しか今のところオフの知り合い居ないし、サシで遊ぶことになっちゃうかもしれないっすけど」


 ふむ。確かになあ。ヴィオラ……のことは黙ってた方が良いのだろうか?


「僕の方はガンライズさんと二人でも大歓迎だけど……駄目元でナナを誘ってみたら? まあ、首都圏近郊に住んでなかったら厳しいかもしれないけれど」


「あ、それは大丈夫です。ナナは千葉に住んでるらしいんで。ただ……女性をいきなりオフ会誘うって気持ち悪くないっすか? 引かれたら俺生きていけないっすよ……あ、いや、別に好きとかそういう訳じゃないんですけど」


 いや、大丈夫君の気持ちは多分ほとんどの人が知ってると思う。余程鈍い人じゃない限りバレバレだからね、うん。でもそうか、そうなるとナナ本人も気付いてるだろうし、さすがに下心あるって分かってたら警戒して来ないかなあ……。僕とヴィオラが居るって分かれば安心するとかあるだろうか?


「まあ確かに警戒はしちゃうかもしれないね。もしナナが来るならこっちはヴィオラを誘うけど……」


「えっヴィオラさんってこっちに住んでるんすか!?」


「えっ、あー、うん。そうだね? そんなこと言ってたよ? うん」


 まさか隣に住んでますなんて言えないしここはそういう話になった体にしておこう。


「あれ、おかしいっすね。蓮華さんの配信でそんな話になった記憶が……」


 何この子。僕の配信全部チェックしてるの? どこにそんな時間があるんだよ大学生。


「きっと見逃しただけじゃないかな!? ほら僕常時配信してるからアーカイブの数は他の配信者さんの比じゃないしね!」


「あ、確かにそうですね」


 ふう、危ない危ない。


 そんな話をしてる間にも練馬駅に到着、都営大江戸線へと乗り換える。僕はガンライズさんについていくのがやっとでした。


「何か切符買う人初めて見ました」


「あ、うん。ごめんね、お金迄借りて……家に帰ったら返すから」


 着の身着のまま千里さんに送って貰ったので、財布すら持っていなかったのだ。携帯さえあれば口座と紐付けて何とかかんとか~とかガンライズさんが説明してくれたけど、家に忘れてしまっているしそもそもその域に辿り着けるのかも怪しい。僕はまだ通話がやっとなんですよ……。


「あ、すいませんそういう意味じゃなかったんすけど。切符って概念は理解してたけど初めて実物を見たなあ、っていうのを言いたかっただけなんです。あ、これも失礼な言い方だな」


「いや、大丈夫。正直僕も切符ってまだあるんだなって思った……」


「そう言えば六本木のどこに住んでるんですか? 駅からの帰り道は分かります?」


「ああ、うん。多分。駅からは直結って聞いてたから多分降りたら分かるんじゃないかな」


「駅から直結の家って……億ションとかそういう奴っすか。うわー、凄いっすね」


「僕の家じゃないからね、凄いのは洋士だよ」


「そうかもしれないっすけど……住む世界が全く違うって感じっすねえ……」


 色々と話していると、あっという間に六本木駅に到着。途中でマンション名を聞かれたので教えたら、電車内で調べてくれていたらしく駅に降りてからも先導してくれた。何から何まで本当に申し訳ないです。


「えっと……一応部屋の前迄は送ってくれって洋士さんに言われたんですけど俺が入れるもんなんですかね、これ?」


「多分洋士の方でコンシェルジュに話は通してあるんじゃないかな? 大丈夫だと思うよ」


「こんしぇるじゅ……人生で一度耳にするかしないかって単語が出て来るんすね……」


 だよねえ、僕も最初に来た時はそう思ったよ。今じゃすっかり慣れてしまったけれど。それにしても「部屋の前迄」とわざわざ言ったのはもしかしてガンライズさんに話があるのかな? 僕としても、僕が噛んだ傷口を一応洋士にも確認して貰いたいし、丁度良かった。


 予想通り、コンシェルジュに話は通じていたらしく、にこやかな笑顔と完璧な角度の礼で迎え入れてくれた。そのままエレベーターで五十九階迄上る。今更だけれど、部屋からいきなり青森に行ったので外出記録はない。コンシェルジュさんは疑問に思ったりしないのかな……。ずっと同じ人が詰めてる訳でもないだろうし平気か。


----------------------------—


【個スレ】名前も呼べないあの人3【UIどこぉ】


 名前を呼びたくても呼べない、あの人に関する話題です。

 名前は判明しましたが、諸々の事情で名前が呼べない為、タイトル継続しました。

 万が一本人にばれたら困るからね!!!

 ※運営側も確認してあげてください。何だかおかしいです。

 ※もうそろそろタイトル変えて良くない?駄目?掲示板はまだ内緒?


689【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

あ、ありのまま今見たことを話すぜ……やばいものをみた


690【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

>>689 どうした


691【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

なんか……がたいの良い青年と電車に乗ってる、蓮華さんに瓜二つの人を現実で見てしまった……


692【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

ふぁっ!?


693【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

なんか高そうなコート着てた凄い似合ってた

そんなことよりもだ

背中に背負ってた細長い鞄っぽい何かの中身が気になるんだがお前らはどう思う?


694【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

日本刀


695【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

刀以外にあると思うか?


696【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

確実に日本刀だろwww


697【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

おい、いくらなんでもそれは捕まっちゃうって……。

銃刀法違反って言葉知ってるか蓮華さん?


698【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

わんちゃんどっかの湖の土産物の木刀ってことない?


699【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

>>698 木刀なら銃刀法違反じゃないしな!ヨシ!


700【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

どうでも良いけど満場一致で刀型の何かだと思ってるの草

あと木刀でも軽犯罪法に問われる可能性はあるからな?

正当な理由がないとアウトだぞ?


701【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

蓮華さんには正当な理由があったんだろ……


702【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

そうだよ、謎の不審死とか神奈川とか……事件解決に奔走してたんだよきっと……

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吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

二巻表紙


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― 新着の感想 ―
[一言]  真剣を用いた剣術の道場に通ってる人がいるんですが、普通に刀を肩掛けの専用ケースに入れて電車に乗ってましたぞw。
[一言] >大の大人 介護必要なお爺ちゃん(ボソ) >事件解決に奔走して 割と当たってるがwスレ民は信じていないw
[気になる点] 六本木駅直結、今ならヒルズかミッドタウンあたりなんだろうけど、 この時代だとさすがにどっちも老朽化してるかな、 ていうかあんな外国人満載なとこ歩いて大丈夫なのか蓮華さんw
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