7.求めていたのはこれじゃないです
ストックなんてものは2話目で切れているので、
ノリと勢いで毎日書き上げていますが、投稿できない日があったら申し訳ないです。
一応推敲はしていますが、誤字脱字を見つけたからは報告していただけたら涙が出るほど喜びます。
第8回オーバーラップWEB小説大賞(後期)に応募しました。
まだ規定文字数いっていませんが、超えるようにもくもくと頑張っていきます。
2022/10/11 ゲーム略称の誤字修正。
ただひたすらに日々を生きてきた。
書きたい話だけを一心不乱に書きなぐって、けれども長く存在してきた代償か、心は日々磨耗していく。確かに昔は感動したことに、今はもう心が動かない。
いつまで生き続ければ良いのだろう。書きたかった筈の話も、今はもう本当に書きたかったのか、生活の為に書いているのかも分からなくなってしまった。
人との繋がりを断ったのはいつのころだったか。何度も何度も出会いと別れを繰り返した結果、僕は別れるのが怖くて人から逃げた。
看取るのが怖い。年を取らないことに違和感を持たれる前に、自分から姿を消さなければいけないのも辛い。
「いつまでもお若いですね」という言葉に、笑ってごまかすのが辛い。
動かない筈の心臓が、ずっとずっと痛みを訴えていた。
洋士は笑って「適度な距離を保てば良い」と言っていた。他の仲間も「食料供給兼仕事斡旋業者と割り切ってる」とも言っていた。
言い方はそれぞれ違うけれど、要するに皆、人と深く関わることをやめたってことだ。
僕は一時期、本気でエルフを探していたことがある。火のないところに煙は立たない。「僕ら吸血鬼が存在するのだから、エルフもまた、どこかに存在しているんじゃないだろうか」と思ったのだ。
長命種なら友達になれるかもしれない。淡い期待を胸に、洋士経由で偽装した身分証を発行して貰って、全世界中を旅したものだ。けれど、残念なことに、エルフはおろか伝説に語られる類いの種族は一人も見つけられなかった。
居ないわけじゃないだろう。多分、見つけられないだけ。今でもそう思っている。
まあ、大抵の話の中で、エルフやドワーフは善のものとして、吸血鬼は悪のものとして描かれているし。必死に探し回っていた僕から、向こうもまた必死に隠れているのであれば、見つける手立ては無い。
だから技術の進歩は素直に喜んでいる――姿を隠して人と関われるから。残念なことに機械音痴すぎて、高度なコミュニケーションツールとしての活用は出来ていないけれど。
今回篠原さんから薦められたGoWは、僕の心を掴んで離さない。久々に気分が高揚しているのはきっと、久方振りに心臓が動き始めたから、だけではない筈。
日々新しい発見があるし、まだプレイヤーとかかわる勇気は出ないけれど、NPCとは交流出来ている。
けれど――そう、これは予期していなかったし、求めても居なかった。
確かに長命の、欲を言えば不老不死の人と知り合いになりたいとは思ったけれど、ここはゲームだしこれは違う!!
「ちょっっと骸骨とは仲良く出来ないと思うのでお引き取り願えますか???」
そうは言ってみるものの、全然引き下がってくれない。と言うか、後ろでなんか蠢いてるのは、貴方のお仲間ですよね? あ、これちょっともう限界かもしれない。
せめて他に人が居たらね!? 怖くはないんだよ。でも今一人でしょ? しかも夜の森でしょ? 控えめに言って怖いですね。僕は日光浴を満喫しにGoWに来たのであって、夜の森は満喫したくない。
目つぶって戦ってるこんな姿、師匠が見たら絶対に殴られるけど、これは目つぶっちゃうよね。直視したくないもん。さっきちらっと後ろの方に骸骨じゃない感じの、ちょっとフレッシュな身体の人見ちゃったし。もう無理。その手の類いは映画も小説も読めない勢なんです。僕は料理を満喫しにGoWにきたのであって、腐ったお肉は食べたくありません。食欲失せるから視界に入ってこないで欲しい。
どう考えてもエリュウとかお持ち帰り難しいし、撤退するのもやぶさかではないけれど……。王都に近いし、これ放置したらまずいことになりそうなんだよなあ。
けど、何もせずに帰って報告?とかしても信用ないよね。
「なんかこう……とりあえず貴方とかお持ち帰り出来たら、話に信憑性とか出て来ますかね? はあ……お持ち帰りするなら肉が良かっ……あ、貴方のお仲間のお肉は要らないのでこっちに来ないように言って下さい。
それより、貴方どうやったら死ぬんです? あ、もう死んでるのか……えっと、心臓的な物はどこにあるんだろう。とっても開放的なお姿なのに弱点らしき部位が見当たらない……」
恐怖心と戦いながら目を開き続けてみたけれど、弱点が見当たりません。本当にありがとうございました。
「もー、貴方骨密度高すぎませんか? 剣の方にダメージ入って先に限界迎えそうなんですけどこれ……」
何度か切り付けてみるも、ダメージが全く入っている気がしない。骸骨さんもわらわら来ているし、フレッシュな身体の方も、足が遅いだけで段々集まりつつある。ひとまず、解決策を見つけるまで、一時撤退。流石に森の入り口付近まで戻れば、暫くは追ってこられないだろう。目標を見失えば諦めて眠りについてくれるかもしれないし。
「フレッシュな方を狙った方がお持ち帰り出来るかもしれないけど……あれを剣で切り付けるとかごめん被りたいなあ。やっぱり骸骨さんをどうにかする方法を考えないと。
最近読んだ小説の中では……アンデッドな方々は確か、光魔法とか火魔法とかが弱点、だっけ?
うん? 魔術師、居ないんじゃなかったっけ、現状。え、これ本当に王都に来たらどうすれば? 森ごと火をつけ……さすがに駄目か。食料難に拍車をかけて、僕が食肉にされる運命が見える。
うーん、光魔法は兎も角、火魔法は松明で代用? と言うかこの世界、神官とかそう言う類いの人居ないのかな。プレイヤーが倒せないなら、NPCにお願いすれば良いじゃない。By蓮華・デイチュワネット。
いや、神官とか何か僕も浄化されそうで怖いから探したくないな。精神的にドキドキする。
とりあえず火魔法と光魔法練習してみる……? 指先に炎は灯せたんだから何とかなる筈。この次のステップとか聞いてないけど、なんかこう、気合で! ここで火は怖いから光魔法にしよう……なんかこう指先に集中して……眩しい感じを想像すれば良いのかな。お日様が指先にあるような……えっ、ちょっと待っ、目が! 目があああ!」
あまりの衝撃に森の中をごろごろと転げ回る僕。いや、そんないきなり成功すると思わないよね。目が潰れるかと思ったよ。
「でもこれをどうやって攻撃用途にしろと……? 小説の描写では確か……光の槍とか光の矢とか生み出してたんだっけな? う……、指先からどうやって外部に魔法を発動させるのか、さっぱりわからない。
とりあえずこの目潰し攻撃を一旦さっきの骸骨さんに試してから考えよう。目潰し出来る様な目が骸骨さんにないけど、眼窩に指を突っ込んだら悶絶するかもしれないし」
ノリと勢いで再び森の奥へと引き返す。どうせゲームだし、死んでも王都で復活出来るでしょう。……あれ待って、今僕NPC扱いだけど、ちゃんと復活出来るのかな? もしかしてこのまま死んで骨密度が異常に高い骸骨にジョブチェンジなんてことは……。