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01



 遥か昔、神は新たな生命を創ろうと考えた。

 神は〈ヒト〉を創り出した。

 しかし、創り出された〈ヒト〉はあまりにも脆く、儚く消えてしまう。

 嘆き悲しんだ神は己の能力を〈ヒト〉に与えた。

 東の〈ヒト〉には書の力を。

 西の〈ヒト〉には眼の力を。

 南の〈ヒト〉には声の力を。

 北の〈ヒト〉には変の力を。




 雲一つない空に浮かぶ大きな太陽が、広い大地を見下ろしている。

 夜が姿を消し、また一日が始まる。

 この町は朝から活気に満ちていた。


「さぁ、見ていらっしゃい、買っていきんさい! 今朝採れたばかりの野菜だよ! そこの綺麗なお嬢さん、美肌を保つには新鮮な野菜と果実だよ!」

「どうだ、見ろよ、このでかさ! 昨夜の漁で釣れた魚なんだが、今日は格安にしておくぜ! 見て行ってくれよ!」


 フラン大陸南部に位置するゼーゲン国の城下町マナドの大通りは人の声で溢れていた。騒がしい中でも褒め言葉と、お得な情報は人の耳によく入るようで、綺麗なお嬢さんに反応した女性たちが野菜売りの前に集まり、向かい側にある魚売りの前には綺麗なお嬢さんに反応しなかった人が集まった。

 長年、朝一にここで商売をしてきた魚売りは、自分のもとに集まった人数の方が少ないことをすぐさま見抜き、パンッと大きく手を叩く。そしてこんがりと焼けた逞しい腕を広げ、腹の底から声を出した。


「今日は、おまけとしてサルバ魚もつけよう! 今この時期脂がのって一番うまいぞ!」


 その声を聞いた()()()()()()()たちが魚売りの方へ移動した。


「これと、それと、あれを二匹ずつちょうだい!」

「あっ、ちょっとあんたそれ私が狙ってたやつよ!?」

「はぁ? 先に買わない方が悪いじゃない!」


 賑わう目の前の光景を見た魚売りは勝ち誇ったように笑った。

 それを見ていた野菜売りは客に聞こえないように舌打ちをし、数回手を叩いた。


「もう残り僅か! 全品、50リジーだよ!」


 先程まで売り出していた金額から半額になったのを聞いた客たちは我先にと野菜売りのもとへ駆け寄った。

 フッと鼻で笑う野菜売りと、青筋を立てる魚売りの間には激しい火花が飛び交っていた。

 その大通りを鼻歌混じりにルーシィは歩く。

 三つ編みに結われた赤毛が、彼女が歩く度に左右に揺れる。

 大通りを抜け、脇道に入ったルーシィは石畳の道を慣れた足取りで歩き、住宅街の少し手前にある店の扉を開けた。


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