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終末世界にひとりきり  作者: 鳥ノ音
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思い出の欠片

ボロボロの道路の真ん中に大きな水溜まりが出来ていた。


「あの、何をしてるんですか?」


「何してるように見える?」


「馬鹿が見えます。」


「酷い!」


そんなやり取りをしているのは少年と特徴的なデザインのドローンだった。

電子レンジくらいのサイズの黒い箱に4つプロペラが着いたようなデザインのドローン。

少年は道路に出来た大きな水溜まりの近くに座り込み釣竿で糸を垂らしていた。


「何をしているんですか?」


「いやさ、せっかく何か高そうな釣竿拾ったのに海が一向に見えないからさ。ちょっと使ってみたくて。」


「ふむ。」


「でさ、どう?釣りしてる感ある?何してるように見える?」


「馬鹿が馬鹿な事をしていますね。」


「もうわかったから!アホな事をしてる自覚はあるから!」


「あったのですか。」


「わざわざオーバーリアクションの為に腕まで出さなくていいから!」


言われてドローンはカタカタと小刻みに揺れた。


「唐突に奇行に走ったのでついにとち狂われたのかと。」


「いや、あんまり触ったことないものっていじってみたくなるじゃん。」


「おもちゃ屋に初めて行く子供見たいですね。特に躾の悪い。」


「何か凄い悪意の感じる言い回しなんだけど嫌な事でもあったの……?」


「いえなにも。」


「あ、そうですか……すいません……。」


いつもと変わらない声の筈が何故か凄くドスの効いた声に聞こえ思わず謝る少年。


「それで、満足したのですか?」


「うーん、どうせなら釣ってみたいよね。」


「そうでしょうね。」


「でもまあそこそこ面白かったや。」


少年は釣竿を地面に置き立ち上がる。


「貴方様はアレですね、悩み事とかなさそうですね。」


「そんな事ないよ、悩み事だらけだよ。」


「例えばどんなですか?」


ドローンは小首を傾げるように傾きながら少年に問う。


「アイスクリームが食べたいんだけどどうやって調達しようかなとか。痛いっ!」


ドヤ顔の少年の右頬にロボットアームの拳がめり込んだ。


「悩み事に謝罪した方が良いかと。」


「概念に謝るの!」


「いませんからね、人が。」


「そうだね。」


しばしの沈黙。


「話は変わりますが私の冷却機能を応用すれば作れるかも知れません。アイスクリーム

。」


「マジで!」


「はい。材料や調理器具がないといけませんが。」


「よし探しに行こう!今すぐに!」


「あ、あの、まってください。」


よほど食べたかったのであろう食い気味に反応する少年。

そのままの勢いで止めてあったモトコンポに乗り走り出した。

ドローンを置いていった事に気付くのはもう少し後の事だった。

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