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終末世界にひとりきり  作者: 鳥ノ音
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終末を刻む

「広いねー。」


「広いですね。」


カチッカチッと規則的なリズムで鳴る音がする。

決して遅くはないリズムで鳴るその音は聞いていると何処か心地の良さを感じさせる。

しかしながら音の元が見つからない。


「うーん……止まってる。」


「そうですね。」


壁に掛かっているたくさんの時計を眺めながら少年が唸る。

そんな少年に何処か無機質に返答をするのは大型のドローンだ。

電子レンジくらいのサイズの黒い箱に4つプロペラのようなパーツがついたデザインのドローン。

ドローンは少年の頭くらいの高さを飛行しながら同じく時計を眺めていた。


「君にも分からないのかー……。」


「量が量ですから。」


「そうだねー……。」


少年が周りを見渡す。

何処を見ても視界に入るのは時計ばかりだ。

木製の大きな建物。

少年とドローンはその建物から時計の音がするのを聞いて中に入った。

動いている時計は今となっては珍しいので一人と一機は内心ワクワクしていた。

建物はどうやら時計屋だったようで壁一面にはたくさんの様々なデザインの時計が掛けられていた。

しかしあるのは止まった時計ばかりだった。


「それにしてもたくさんあるね。」


「そうですね。こんなに種類があるんですね。」


シンプルな丸いだけのデザインの掛け時計からレトロな物、電波時計や機械式の物まで様々な時計がある。


「人間はデザインを変える事が好きですよね。性能は特に変わらないのに。」


「あれ?何か不機嫌?」


どことなく不機嫌そうな気がして少年が訪ねる。


「いえ、別に……。何故人はこういった事に力を入れるのでしょうか?」


「儲けるためだね。」


「そうですか……。」


「あ、あれ……何か拗ねてる?」


「いいえ……別に。」


なんとなく何時もより反応が薄い気がして少年はドローンを観察する。

やはり心無しか少し元気が無いように見える。


「もう一つ質問しても良いでしょうか?」


「良いけど?」


「何故私を選んだのですか?」


「何でって?」


「私以外にもあの場にはドローンはたくさんあった筈なのに何故私を選んだのですか?」


「何故……かー……。」


考え込む少年。

思い出すのは彼女に初めて出会った時の事。

真っ白な広い室内には様々な形の機械があったのを覚えている。

小型犬の形をしたロボットや円盤型の物など色々な形をしたロボットが棚や机の上などに置かれていた。

ドローン一つでも様々な形があったのが記憶にある。

そしてその中に一際大きなサイズで目立っていたドローンがあった。

電子レンジくらいのサイズの黒い箱に4つプロペラのようなパーツが付いたデザインのドローン。

他のドローンは綺麗に置かれているのにそのドローンだけが部屋の隅に雑に置かれていた。

埃もたくさん被っていてとても汚かったそのドローンを少年は手に持ち上げた。


「お答えください。」


「ゲフッ!」


ロボットアームで腹を殴られて少年は我に返る。

少し考え過ぎてしまっていたようだ。


「お答えください。」


表情はわからないが圧力が凄かった。


「うん……、何て言えばいいのかな……。なんとなく特別に見えたから……かな?」


「特別に……ですか?」


「うん。」


ドローンは少年の表情をじっと見た。

そのまま数分間、2人は静かに見つめ合っていた。


「……そうですか。」


最初に沈黙を破ったのはドローンの方だった。


「納得してくれた?」


「そうですね。」


少年の問いにドローンは素っ気なく返答を返す。


「所で静かですね。」


「そうだね……あ 、時計!」


先程まで規則的なリズムで聞こえていた音がいつの間にか消えていた。


「見つける前に壊れてしまった見たいですね。」


「動いてる時計が見えると思ったのになー……。」


その場に座り込みガックリと肩を落とす少年。


「まあ良いじゃないですか。見つけた所でどうしようもないんですから。」


「それもそっか……。」


「はい、もう時間の概念なんて無いのですから。」


「そう考えると止まってる時計の方が今らしいのかもね……。」


少年は立ち上がるともう一度壁に掛かっている時計達を眺める。

それぞれ違ったデザインの時計達は皆違った時間刺して止まっていた。

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