二〇二三年六月十九日
曲尾仁庵はちょっと困っている。いや、どうでもいいと思うんだけど、まあ聞いてよ。興味ないと思うけど聞いてよ。聞くふりだけでいいから。私も勝手に言ってるだけだし。
読者の需要が読めん。私はいったい何を期待されているんだろう?
いや待て、分かっている。別に期待なんかしちゃいないって返事はしなくていいんだ。重々承知だ。読者の需要は異世界恋愛で婚約破棄でざまぁだ、という情報もいいんだ。それを教えてもらったところで私には書けん。コレジャナイロボみたいな話なら書けるかもしれんが。そうじゃなくてね。私が戸惑っているのは、
『月の王』が思いのほか読まれている
ということなんだ。有難いことなんだけど。私の中での勝敗ラインであるユニークユーザー100を投稿二日目で突破している。不満があるわけじゃないよ。むしろ出来過ぎだ。じゃあ何が問題なのかって言うとね。
私の作品の中に、『月の王』と同系統だと思っている作品があるんです。『赤涙王の死』と『白き聖女と黒き魔女』という作品なんですけど。『北の魔女と名もなき英雄』も含めてもいいかもしれない。それらと『月の王』との間にある差が分からんのです。
『月の王』にあって他の三作品にないものって何なんだろ。どの作品も私の趣味全開で書いて、どれも0ポイント覚悟で投稿したという点で共通している。作品の構成も、文章の巧拙も顕著に差があるとは思えないんだ。『月の王』は何が良かったのか。他の三作品は何が足らないのか。有意な差が現れる要素が見つからないの。それがわかればもうちょっと曲尾仁庵は読者に喜ばれる作者になれるかもしれないんだけど。どうよ、今ならあなたの一言で曲尾仁庵をあなた色に染められるかもよ? 願い下げ? うむ、想定の範囲内だ。
え?
自分で考えろ?
……
ごもっとも。