二〇二三年五月二十日
気が付いたらゴールデンウィークが終わってましたよ。そしてゴールデンウィークなんてありませんでしたよ。あれ? 私だけ別の暦を生きていますか? こどもの日はこどもだけが休みになる日なんでしたっけ?
まあそれでもね、先日、とにかく明るい安村さんが英国で大人気だと聞いて、ちょっと嬉しかったなぁっていうか、よかったなぁって思って、ちょっと泣いた。頑張ってるんだなぁって。頑張ってほしいなぁって。私も頑張らないとなぁって。私は言葉も通じない場所に行って挑戦する勇気なんてないから、本当に凄いなって、思ったんだよ。
ダンディ坂野さんが言っていたらしいんですけどね。
「一発屋に二発目はない」
って。その言葉がずっと心に残っていて。どういう意味なんだろうなって、考えている。ネガティブな意味、なのかもしれないけど、そうとも思えない気がしていて。本人がどういう意図で、どういう文脈で言ったのかは分からないんだけど。
一発屋は一発当てた人、つまり、武器を一つ手に入れた人。二発目はない、のであれば、武器を二つ持つことが難しい、ということだろうか? だとしたら、一発屋は、その手に入れた一つで戦っていくしかない。その武器を磨いていく以外にない。そういう意味なのかなって、思っています。才能が有れば、もっと器用であれば、あれもこれもやって武器を増やしていけるのだろうけど、そうでなければ、今この手にあるもので勝負するしかない。ある種の覚悟の表明なのではないかな、と。
私はたぶん、いわゆるテンプレは書けない。私は物語を作る時、明確に書きたいシーンが最低一つある状態で書き始める。それをテンプレにうまく落とし込める能力は私にはない。書きたいものしか書けないのだ。それはもう、どうしようもないことだ。私の限界、ということだ。
私はまだ一発も当ててないから、私の武器が何か、はっきりとしているわけではないのだけれど、結局私は、私の中にあるものを磨いていくしかない。磨いたからと言って光るとは限らないし、世に届くわけでもないだろう。それでも、書いていくんです。誰に強いられているわけでもない、私が書くと決めて書いているから。
残酷で優しい、そういう物語を書きたいと思っています。世界は残酷で、誰もが幸せになることなどできない。でも、そんな世界の中で、最後の最後に、優しさがほんのわずかだけ世界の残酷さを上回る、そういう物語が書きたい。光あふれる希望の未来ではなく、暗闇にほんの少しだけ灯りが点る、そういうものが書けたら――
そんな願いを込めて、私はトラック無双を書いています。