二〇二三年一月十四日
冬童話が書けなかったなぁ。小説家になろうに登録した一番の理由は冬の童話企画があったからなのに。書くつもりだったんだけどなぁ。でもね、ぬいぐるみっていうお題が難しかったの。うまくお題を消化できなかった。もともとお題に沿って書くのは苦手なんだ。自分の中にないものからはお話が作れない性質なのさ。
でもね、一個だけ思いついた話があるのよ。自分で言うのもなんだけど、かなり書きたいと思うんだよね。でも、たぶんこの話、十万字を超えるんだ、全部書くと。私の執筆ペースじゃ一ヶ月程度じゃ書きあがらない。だから二の足を踏んで、結局書かずじまいさ、ははん。書かなきゃ書き終わらないのにね。
主役は幼い兄妹。七歳のお兄ちゃんと五歳の妹。ある日の夜、窓から射しこむ月光を浴びたぬいぐるみが動き出し、兄弟に告げる。
「ぬいぐるみの国が今、おそろしい敵に侵略されているの。どうか力を貸して!」
そのぬいぐるみは妹が大切にしているお気に入りの白うさぎ。兄弟は白うさぎに手を引かれ、おもちゃ箱の奥の底を開いたら出てくる扉を開けて、ぬいぐるみの国へと旅立つ。
ぬいぐるみの国では、ぬいぐるみたちが仲良く暮らしている。しかし今は正体不明の敵の侵略を受けて、ぬいぐるみたちはひどく怯えていた。ぬいぐるみたちはぬいぐるみ以外の存在を敵ではないかと疑っている。白うさぎは兄弟を長老の許に案内し、長老は二人に着ぐるみを手渡した。お兄ちゃんにはライオンの着ぐるみ。妹には仔猫の着ぐるみ。これを着ていればぬいぐるみの国の中でも目立ってしまうことはない。着ぐるみを着たお兄ちゃんに、長老は真剣な声音で言った。
「その獅子の着ぐるみには、かつてこの国にいた英雄の魂が宿っておる。お前が英雄に相応しい行いを為すならば、そのたてがみは輝きを増し、お前に無限の力を授けるだろう。しかし英雄の名にもとる行いを為すならば、たてがみはくすみ、お前は何の力も得られぬだろう」
ちなみに妹の着る仔猫の着ぐるみはただ可愛いだけです。
ふたりは白うさぎに連れられ、ぬいぐるみの国の各地を巡る。大きな町には大きな町の、小さな村には小さな村の問題があり、ぬいぐるみたちは分断され、いがみ合っている。ライオンの姿のお兄ちゃんはそれらの問題に巻き込まれ、あるいは首を突っ込み、懸命に走り回ってそれを解決していく。最初は一生懸命話を聞き、両者の間を取り持って解決を図っていたお兄ちゃんは、ある時、怒りのままに獅子の力を振るう。その力は天を裂き、怯えたぬいぐるみたちはお兄ちゃんに争いを止めることを誓った。お兄ちゃんは思う。そうか、こうすれば争いを簡単に治めることができるんだ。
それからお兄ちゃんは、ぬいぐるみたちの話を聞かず、獅子の力を見せつけて強引に争いを止めるようぬいぐるみたちに迫るようになった。お兄ちゃんは気付かない。獅子のたてがみが徐々にくすみ始めていることに。獅子の力は弱まり、そしてある日、お兄ちゃんの強権的な態度に傷付いていた妹が泣いた、その時――獅子のたてがみは完全に輝きを失った。
獅子の力を怖れて息をひそめていたぬいぐるみたちは再びいがみ合い、治まっていたはずの問題は何も解決していなかったのだという事実をお兄ちゃんに突き付ける。力を失ったお兄ちゃんはぬいぐるみたちに追われ、ふたりは森に逃れた。森でふたりはとあるぬいぐるみの親子と出会う。その母親は病を得て床に伏し、子は為すすべなく泣き続けていた。母親の病を治すことができるのは、険しい山の頂上に生えた木に生る小さな実。お兄ちゃんはその実を取ってくることを決意する。獅子の力さえあれば簡単なこと。しかし力を失った今のお兄ちゃんには、山の麓までたどり着くことさえ容易ではない。何度もあきらめかけ、手足に無数の擦り傷を作ってようやく木の実を手にした時、獅子のたてがみがわずかに輝きを取り戻した。
さあ、お兄ちゃんは力を取り戻すことができるでしょうか? そしてぬいぐるみたちの問題を解決することができるでしょうか? ぬいぐるみの国を襲う謎の敵の正体は? 幼い兄妹たちを待ち受ける運命や如何に!?
どうよこれ? 面白そうじゃない? ダメかな? 流行らないよねぇ。力を振るえば力を失うなんて、昨今の潮流からすれば論外? スカっと勧善懲悪が世の皆様の求めるものですか?
そんなことをごちゃごちゃ考えていたら、結局書けなかったよ。
まあ、どうせ受ける作品なんて書けないんだから、グダグダ悩んでないで書けばいいだけなんだけどさ。