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雑記  作者: 曲尾 仁庵
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二〇二二年五月十七日

日付が変わっちゃったことは気にしない方向で。

 ヒーローとは何か、なんてことをぼんやりと考えている。ヒーローという言葉は(ヒロインに対置されるものとして)やや語弊があるのだが、勇者、あるいは英雄と言い換えるとそれはそれで違和感がある。私の中ではヒーローと勇者と英雄はそれぞれ微妙に(もしかしたら相当に)違う。では、それらを分かつものはいったい何なのか。


 あくまで私のイメージとして、という前提の下に、


 英雄は為した功績の大きさによって英雄と呼ばれる。

 勇者は正義の在処を示すことによって勇者と呼ばれる。

 ヒーローは誰かの願いを引き受けることによってヒーローと呼ばれる。


 と思う。


 英雄は善悪とは本質的に関係がない。結果さえ出せば当人の善性は問題にならない。

 勇者は功の大小とは本質的に関係がない。善を志向し悪を告発する態度が問われる。

 ヒーローは善悪とも功の大小とも本質的に関係がない。『誰か』を『救えた』なら、それがどんなささいなことであっても、善でなくとも(もしかしたら悪であったとしても)ヒーロー足り得る。


 私のヒーロー像をひとつ示そう。

 高校サッカー大会決勝、0対0のまま後半ロスタイムが終わり、PK戦となった。

 先攻の一人目、成功。

 後攻の一人目、成功。

 先攻の二人目、成功。

 後攻の二人目、成功。

 先攻の三人目、成功。

 後攻の三人目、失敗。


 緊張していたのか、疲労のせいか、後攻の三人目の子が蹴ったボールはゴールの枠を大きく超えて飛んでいった。その子は真っ青な顔をして、仲間のところに戻ると、うつむいて、呻くように「すまん」と言った。後攻の四人目の子が、彼とすれ違いざまに、険しい顔で吠えた。


「任せろ!」




 これは今からたぶん十年以上前に実際に私が見た光景だ。この四人目の子は間違いなくヒーローと呼ぶにふさわしい。そしてそれは、四人目の子が実際に成功したかどうか、あるいは試合に勝てたかどうかとはあまり関係が無いように思う。「すまん」と言ってうつむく仲間に「任せろ!」と言った、そのこと自体が彼をヒーローたらしめている。


 望んで、望んで、それでも届かなかった。その時に、


「あなたが間違っていないことを、この私が証明する」


 そう表明する誰かをこそ、ヒーローと呼ぶのだと、そう思う。

 そしてそういうヒーローを、描きたいと思う。

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