楓2
「楓さんが好きなもみじって、どんなのですか?」
「そうね~、京都のお寺なんかも結構まわったけれど、近所にあったもみじの木の通り道が私のお気に入りよ。
普段、何気なく通ってる道をその季節だけもみじが赤く染めるの。その日常だけど、なんだか少し特別なものみたいに感じられるのが好きかな」
「なんか、少しだけわかる気がします」
「ずいぶん前になくなってしまったのだけれどね。今は味気のないマンションが建っているわ」
「あ、それは残念ですね……」
「そうでもないわよ。だって、しかたないことだもの。それに、それがきっかけで足を運べば新しい出会いにも恵まれるし」
「恐縮です。この温泉のもみじには何か思い出があるんですか?」
「そうね。あるけれど、長くなってしまうから止めておくわ。年よりの長話ほど退屈になるものはないでしょう」
「いえ、そんなことは! 私から聞いてるわけですし……」
「ふふっ、ありがとう。優しいのね」
私はその声だけで、なんだか頭を撫でられているような感じで、こそばゆかった。
「今度はこずえちゃんの番、好きな人とかいないの? 女子二人いるのだから恋ばなでもしましょうか?」
楓さんは、今度はちゃめっけたっぷりにそう言った。
「ええ、居ませんよ~! 最近、忙しくてそんな暇なかったです」
「あら、じゃぁ初恋の話でも聞かせて!」
「私の初恋は……」
私の初恋は多分中学の頃の吹奏楽部の先輩だったと思う。あやふやなものいいなのは、その恋が始まってすらいなかったから。
もしかしたら、憧れに近かったものなのかもしれない、けれどそれは同じグループの子がその人を好きだというカミングアウトから、私はその気持ちに蓋をした。
そうして私の初恋は始まる前に終わってしまったのだ。
「あら、そうなの。その男の子はみんなにとって憧れの存在だったのかしらね?」
「たぶん、そうでした。あとからわかったことですけど他の子も結構気になってた人はいるみたいです……」
「高校の頃はどうだったの? 初めての彼氏さんとか?」
「高2の時に付き合った人は居ました。でも、すぐ別れちゃいました」
「あら、どうして?」
「突然、告白されて流れで付き合うことになったんですけど、お互い合う話があまりなくてなんか違和感みたいなものがあったんです。
二人とも無理に話を合わせてるのがわかって、向こうも私が初めての彼女みたいで、どうしていいかわからなかったんだと思います。なので、学年が上がってクラスが別々になったのをきっかけに勉強に集中したいからと……」
「本当は他に好きな人がいたんでしょ」
「なんで、わかるんですか?」
「今、言ったことはたしかに別れる理由になるけれど、私にはあなたが別れる理由を探してるように見えたの」
言われて気づいた。私は理由があったから別れたんじゃなくて、別れるために理由を探していたのだ。
「こずえさんのお話聞いてもいいですか? それと、よかったら恋の秘訣でも……」
「私は書道の先生をしていてね。
彼は大学の先生をしていたの。女とは家族とはこうあるべきと決めつける人だったわ。
私の世代はみんなそうなのかもね。その人は病気でなくなってしまって、子供も成人してしまってからは私はやることがなくなってしまって。
でも、書道家の性なのか筆をとって何か書きたいと思ったの。
最初は鉛筆で絵を描いてみたら、思いのほか楽しくなっちゃって、それでデッサン教室みたいなところに通ったら、その人と出会ったの。
映画と写真や絵が好きな人でね。結婚はしなかったけれど、いつも一緒に居たわ。会うのが、とても楽しみだった。
そうね、恋の秘訣だったわよね。
秘訣はお互いがお互いの世界を持っていて尊重し合うこと。ううん、そんなたいそうなものではないけれど、お互い好きにやってても文句言わずに、一緒に入れたことかな」
「それぞれの世界?」
私の世界には今何があるのだろう。
「そう。そして、あなたへのアドバイスは今一番やりたいことをやってごらんなさい。
そしてら、きっと趣味の合ういい人が見つかるわ!」
「やりたいこと……」
「ええ、やりたいこと」
「でも、私あまりかわいくないし魅力がないんじゃ……」
「そんなことないわよ。
魅力っていうのはね。楽しそうな人、幸せそうな人に勝手につくものなのよ。だから、笑顔を見せてちょうだい。
それに、今だってリンゴみたいでとてもかわいいわよ。」
「あの、そろそろ出ませんか?」
私はリンゴみたいに真っ赤であろうほっぺを両手で隠しながらそう言った。
こんにちは!
いつもご覧戴きありがとうございます。
楓さんの回は、作者もお気に入りの回ですが
自分の文章力のなさを実感した回でもあります^^;
キャラクターの魅力を、もっと表現するために他の物語を書いたあとにもう一度書こうと思います!
なので、今は至らない点も多いと思いますが、そのまま物語を書き続けさせていただきます。
読者の皆様には、このままお楽しみ頂けたら幸いです。




