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FreeStar〜短編集〜  作者: 楽俊
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アメ玉

『秘密基地』の続きになります!


 あの夜は声が出なくなるまで歌い、声が出なくなってからも歌い続けた。

 知ってる歌を、ただただ歌い続けた。最後には何故だか涙がこぼれた。

 なにが悲しいのか、なんで泣いてるのか理由もわからず歌い続けた。


 翌朝、私は風邪をひきましたと会社を休んだ。

 本当はカラオケで叫び倒しただけなのだが、掠れた声のおかげで真実味が増した。

 

 普段、頑張ってる自分へのご褒美だと、まだ何も成し遂げてはいないけれど、今日は自分のために使うのだと心に決めた。


 私はまず古着屋に行って。

 手頃な服を買い着替えた。スーツでは、なんだか気が休まらないし気分転換をしたかったのでちょうどよかった。

 少し時代遅れで古くて安い服だったが、それは昔私が着たかった服に似ていたので、なんだか少しだけ時間が巻き戻った気がした。


 ここから電車で少し行けば、古い温泉街がある。

 私はネットで温泉だけ入れる場所を探し、そこを目的地にしたが、駅に向かう途中で香ばしいパンの香りに誘われて朝食をとった。

 

 チョココルネとアップルパイ、それと紅茶を買った。

 あまあまのあまである。

 近くに小川があったので、パンの香りが届く距離の場所にあるベンチに座って、私は先程のパンを口にした。

 コンビニでも売っているから久しぶりに食べたわけではないけれど、懐かしい味がした。

 何故だか、また泣きそうになったけれど通学路なのか制服を着た学生や通勤途中のサラリーマンやOLの姿があったので、私は人知れず涙をこらえた。

 昨日はいっぱい泣いたから、今日は笑顔の日にしたい。


 私が笑えることとはなんなのだろう。

 何をしたら幸せを感じるのだろう。


 そう思い、私は見下ろすとそこには食べかけのアップルパイがあった。

 私はうまいうまいと、そんな自分がおかしくて笑いながら食べた。

 ほんのちょっとだけおいしくなった気がした。

 ぜひとも、未来の旦那様にはハートと一緒に私の胃袋をつかんで離さない方になっていただきたい。


 電車に揺られながら私が笑顔になれる方法を考えた。

 甘いものが好きで、赤より青が好き。

 みんなは晴れが好きだけど、私は雨の中でコーヒーの香りに包まれながら本を読むのが好き。

 でも、コーヒーはちょっと苦手。

 夕暮れよりも、朝の太陽が昇る前の青の時間が好き。


 そう考えると、私は最近その時間に出会ってないなと思った。

 甘いものは食べていたけれど、それをおいしいと感じる心の余裕もなかったのだろう。

 休みの日は、休まないと仕事に差し支えるからと義務感で身体を休めたり無理にストレス解消していた気がする。


 乗り換えの駅に到着した。

 今度は乗り遅れるわけにはいかない。

 ローカルな路線なので、電車が来るまでかなり時間の余裕があったので売店でチュッパチャプスを買った。

 

 あめ玉を舐めながら、昨日のお婆さんのことを思い出していた。

 あのお婆さんはもしかしたらお孫さんと同じくらいの年の私が必死に頼んでいたから、断るに断りきれなかったのではないか。

 終止、優しそうな笑顔でうなずきながら私の話を笑顔で聞いてくれた。そして、ほんの気持ちばかりとあめ玉をくれた。


 あのあめ玉は、一体どんな味がしたのだろうか?

 もしもこの話が本当で、優しさに味があるとしたら、お婆さんからもらったあめ玉は、きっと優しさの味がするのだろう。

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