変わっていく関係 ホウレンソウは大切なこと
周りを見ながら校舎内を歩いてみる。
以前は目的地へ直行直帰だったが、敢えて回り道をしてみる。
雰囲気が悪い。
ギスギスしている。
あちこちで小さなグループができ、そこから撥ねられた者は小さくなって足早に移動している。
ヒソヒソ、クスクス。
蔑むように、嘲笑うように、俺を見ている。
「楡崎さん、傷が付きますよ」
腕を引き、空き教室へと誘った大島が唇を指す。
無意識に噛んでいたようだ。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
でも、かなりキツイ。
「無理はしないでくださいね」
「ありがとう」
「…顔色が悪いですね。目も潤んでいます」
そう言うと、大島は俺の額に手を当てた。
「少し熱っぽいですね。今日はやめにしますか?」
「いや、先送りにはしたくない。今は少しでも手が欲しい。…と言ってもどうなるかはわからないけどな」
俺は今、俺の親衛隊が拠点としている部屋へと向かっている。
退院後、深山の勧めもあり、顧問に相談した。
幻滅されると、呆れられると思っていたが、先生は相談されるのを待っていたと言ってくれた。
「こちらから声をかけようかとも思ったんだが、お前が頑張っている姿を見ていたらかけることができなかった。倒れたと聞いて後悔していたんだ。相談しに来てくれてよかったよ。うん、よく頑張ったな」
そう言って俺の頭をポンポンと軽く叩いた後、髪がクシャクシャになる程撫でた。
撫でられるのは恥ずかしかったが、少し嬉しいと感じたことは誰にも言えない。
深山と大島も交え相談した結果、風紀委員と俺の親衛隊に手伝ってもらうことになった。