その少女は人でなしである。
河童さんはずっと傍に居て、私にしか見えなかった。
他の人には見えないものが見えた。他の人には聞こえない声が聞こえた。きみのわるいこ、と言われた。そして「嘘つき」と呼ばれた。
それはおかしいこと、だから、誰にも言ってはいけないんだって、やっと気付いた。
遊びに来た従兄弟にはうちの一族を馬鹿にしてるのかと言われた。祖母は嘘をつくところがあの女にそっくりだ、と言った。
私が嘘つきだから父さんは死んだんだって。
嘘じゃないのに。河童さんは最近、家の裏にある森の中の水辺にいる。
今、あの家には沢山〝あくい〟があるから近寄れないんだって。
みんなはようかいだから、ずっとここにはいられない。もうすぐ、次の場所に移ると聞いた。
座敷童子さんは、私のお母さんに言われて私を護ってるだけだから、私が出ていけばつい来てくれるって。
「一緒に行くか?」
赤いおじさんに聞かれた。
「行きたい」
私は躊躇わなかった。祖母は私をいらない子って言うし、従兄弟も「お前、死ねばいいのにな」って言っているから。
いなくなっても、誰も困らない。
一つだけ心配だった。みんなは、私がついて行っても困らないのかな?
赤いおじさんも、河童さんも、私がいた方が嬉しいと言ってくれた。
私は、みんなと楽しく過ごして10年がたった。
ようかいのお母さんにも合うことが出来たし、みんなに大切にしてもらった。
そんなある日、河童さんから「お前の前の家、座敷童子いなくなってから10年で朽ちたぞ」って聞いた。
従兄弟が継ぐはずだったその家は、浪費によって没落したらしい。別に何も思わなかった。覚えていない父親の実家、というだけ。
私が冷たい人だと?いや、私が冷たいのではない。親切にしてくれた人にはできる限り親切にしている。嫌がらせをしてきた人を許し、手を差し伸べるほど私は優しくないだけ。
人でなしだと罵られても構わない。
だって、私は半妖怪だもの。