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絶賛勘違い中の遥は、生徒会長にしなさいと太郎に命令。

自分に対する想いを惚ける太郎が許せない!

なら自分への気持ちを利用して、コキ使うまでだ!

と、愛の主従関係が出来上がる。勘違いだけど。

訳の分からぬまま奴隷にされた太郎は、同校卒業生でもある姉に生徒会選挙のアドバイスを求めるが…?!

どたばたラブコメディ…かもしれない第四話です!

「大体ね、あんたは大げさなのよっ!」


 一喝。張り手もセットに含まれています。背中に綺麗な紅葉が残された……はずだ。


「女の私に張られたくらいで、泣く奴があるかっ!」


 尻から太ももにかけて、ゲシゲシ踏みつけられる。


 ご紹介しよう。山田家の絶対的権力者山田花子やまだはなこその人である。

 切れ長なその目。高くシャープな鼻。花びらを思わせる薄い唇。類まれなる美しい顔の持ち主である。

 モデルと見紛うほどの完璧なスタイルで、見る者を圧倒する。所謂、ボン! キュッ! ボン!  だ。

 太郎の姉で、この春から社会に出た山田家の長女だ。

 お頭の出来も半端なく、学生時代はひたすらトップだったらしい…完璧超人かよ。


「お前にやられて泣いてる訳じゃ……ねえよっ!」


「なにぃ?!」


 花子の美貌がめくれ上がる。般若か、夜叉か。大迫力である。

 その足が、尻の辺りから顔面に移動した。


「お使いを忘れたお前が。この私に。逆らおうと? はっ! さすがは高校生ですこと」


「偉くなったものだねぇ。仕事から解放された私が、どれだけ晩酌を楽しみにしていると思ってるの」


 姉に顔面を踏みつけられながらも、太郎は反論する。勝てるとは思ってないけれど。


「だから忘れるくらいのショックがあったんだよ! 話くらい聞けっ! その耳は飾りか?!」


 自由になれたであろうその顔は、余計な一言によってさらに踏みつけられる。


「お姉ちゃん。その辺で勘弁してあげなよー」


 虐げられる太郎に、救いの手が差し伸べられる。

 山田家の次女。姉に負けないその美しさ。が、まだ幼い感じが抜けない中学二年生。

 お頭の出来は少し残念。勉強や恋よりもひたすらにアニメや漫画を愛している腐女子? とからしい。

 それらのお世話になり、オタク知識は育まれた。と言うか、洗脳されたってのが正しいかも。


「さっきから、パキポキって変な音もしてるよ?タロ君死んだら、誰がお酒買ってくるの?」


「あんたの言うことも一理あるわね。さくら。お使いが居なくなるのは、確かに困るものね」


 なんちゅう姉妹だ。でもこれが日常だ。と言うか、未成年に酒を買わせるな。

 日々姉に虐げられ、妹にフォローなのかちょっと考えてしまう救いの手を差し伸べられる。

 山田家の名物である。両親はこのやり取りをニコニコ笑って眺めている。

 長女、花子。長男、太郎。次女、さくら。何ともそのまんまな感じの名前二人と、そうではない一人。

 さくらが産まれる際、可愛い名前にしてあげてと、花子が考えた名前だそうだ。

 ちなみに……生まれた子が男であったならその名は、次郎になっていたそうだ……。なんだかな。


「まぁま、花子。父さんのをやるから、この辺でご飯にしよう」


 絶対的権力者は父の一言で、完全に戦意を失ったようだ。黙って母の手伝いにまわった。

 母を手伝いながら、花子は、


「あんた学校はどうなの? 一応私の後輩なんだから、恥ずかしいことしないでよね」


 花子は高校時代を太郎と同じ高校で過ごした。もちろんトップで入学、トップのまま卒業した。


「恥ずかしいってなんだよ。誰もそんなことしてねえよ」


「泣くほどショックなことがあったって言ったじゃない。あんた学校でも泣いたんじゃない?」


「泣くかアホ。色々あったのに、お前に蹴られまくったせいで、余計くるもんがあったんだよ!」


「なにぃ? まだ蹴られ足りないのか!? この馬鹿弟は!」


「お前がそんなだからだよ! 女だろ? もっと淑やかでいろよ!」


「お前に淑やかでいてどうする! 私だって相手を選ぶわっ!」


 テーブルを挟んで、互いを罵倒し合う。両親はやっぱりニコニコ笑ってやり取りを眺める。


「ははぁ。つまりタロ君はお姉ちゃんに姉萌えしたい訳だ?」


 ここがゴルフ場なら思い切りファアアアアア! とか聞こえそうなくらい場違いな台詞。

 こうやって、姉弟のやり取りを強制終了させる。恐るべきは、さくらか。

 花子も太郎も二の句を告げる事ができない。絶句しているのだ。

 分かってるのか、分かってないのか、さくらは笑って、


「そうかそうか。姉萌えかー。妹萌えは出切った感あるもんねー。そっかー」


 何が出切って何が出切ってないのか、いまいち理解に苦しむが、さくらは勝手に納得しているようだ。

 夕食を進めながら太郎は思いついたので、花子に尋ねてみた。


「花はさ、高校の頃、生徒会長ずっとしてただろ? 確か」


「してたわよ。一年からずっとね。それがどうかしたの?」


「いや、ショックって話がさ、その選挙に関係してるんだよ」


「は? だからショックってなんなのよ?」


「ショックは……まぁいいや。とにかく、選挙に出るんだよ」


 クラスメートが実はお前そっくりな性格なんだよ、とは言えるはずもない。

 しかし高校時代、生徒会長であった花子に選挙がどういうものなのか聞いてみたかった。


「はぁ? 入学してまだ一週間ほどなのに?! あんた馬鹿なの?通りっこないわよ。そんなの」


「馬鹿は余計だよ。それに出るのはおれじゃねえ。おれのクラスメートだ。おれはその手伝いをするんだよ。しなきゃいけなくなっちまったんだよ。で、選挙ってどんなもんか聞きたかったんだよ」


 はぁ。と大げさに姉は、ため息までつく。本当に大げさな奴だ。政治家でもあるまいに。


「まぁね。入学最初から学校行事に携わろうとする気持ちは、分かる。分かるし、いいことだと思う」


 でもね、と花子は続ける。


「いい? 選挙は年2回よ。悪いことは言わない。今回は諦めて、後期選挙に出るようになさい」


「はぁ? なんでだよ? 花だって一年から生徒会長やってたんだろが。同じじゃねえのかよ」


 はぁ、我が弟ながらアホだわと、またため息。大げさだっちゅーの。


「だから後期って言うのよ。私が会長になったのは、後期選挙でよ」


 よく考えてもみなさいと、花子は続ける。


「まだ入学して一週間足らず。まぁ選挙まで二週間はあるわ。でもその間に、どれだけの票を稼げると思う? あんたはまだ入って三週間そこらの人間に投票する?会長に相応しいと思う?」


「そ、それはやってみねえと分かんねえだろ。しかも一年からの票は期待できるだろ」


 ああ、やっぱりこの弟は馬鹿でアホだと、花子はさらに大きいため息。だから大げさだって。


「確かにあんたの言う通り、同学年の票は他学年のそれより期待はできるわ。でもその条件なら他学年でもそうよね? 問題なのは、二年三年からの票は期待できないってことよ。一年だからね」


「が、頑張ればなんとかできるんじゃねえの? 一年なのに頑張ってるなって」


「それはあるでしょうね。面白がる人からは、票をもらえるでしょうよ。でもそんな甘いもんじゃないわ。前期では、絶対に一年は通用しない。特に二年の誰かが立候補すれば、確実にね」


「なんだよそれ。なんで二年が出れば確実なんだよ。三年は強くないのかよ」


「あんた選挙の概要ちゃんと読んだの?それで手伝うとか。立候補する子が可哀想だわよ。協力者がこれなんてね」


「可哀想なのは、おれだよ!よくも分からないままだな……」


 はっ! と気付く。ここで事の顛末を語れば、語るも落ちた、だ。危ない危ない。

 花子からは、必要な情報だけ取り出さねば。可哀想な理由を語れば、自動的に説教だ。


「よく分かってねえんだよ。頼むから教えてくれよ。いや、教えて下さい」


 ふふん、と花子は鼻を鳴らす。弟に頼られて悪い気はしないようだ。


「まぁ教えるのも、やぶさかではないわ。いいでしょう教えてあげる。ただし、食べ終わってからね」


 お願いしますとだけ返して、箸を進める。

 そんなにも難しいものなのか? とも思う。一年だって、いいじゃねえかよ。

 二年三年ってだけでそんなに偉いのか? 太郎は、一年魂で知りもしないニ年三年を睨み付ける。


 二年三年ってだけでそんなに偉いのか? と考える太郎は、間違ってないだろう。

 ただ二年三年が一年のクセにと思う理由が、自分と同じ気持ちであることまでは、気が回らない。


 生徒会長になると言う、弓月遥ゆみつきはるか。正しくは生徒会長にしなさい、だったが。

 妖精のことを思い出し、太郎は考える。


 そう言えば、弓月はなんで生徒会長になりたいんだろうか。

 何か会長になってやりたいことでもあるのだろうか?


 放課後あんなに遅くまで残っていたのだから、適当な気持ちではないだろう。


 太郎は弓月の立候補の理由を色々考えた。考えたが分からない。

 分からないまま、花子が続きを話し出したので、その考えを手放した。


「いい?まず言っておくわ。一年が何故、圧倒的に不利なのかね」


 いつもはビールな花子だが、太郎が買い忘れたので父の焼酎水割りを片手に切り出した。


「この学校はね、生徒主導なのよ。つまり生徒が自主的に学校を動かせるわけ。悪く言えば、放任なのよ。何でも好きなことできるって訳じゃないけどね。で、その活動を主にするのが生徒会なのよ」


 なるほど。ペンを走らせ太郎は頷く。姉から引き出した情報は、無駄にはしない。だからメモを取る。


「それが、どういうことか分かる?例えば、文化祭に体育祭。社会見学って名の遠足から修学旅行の計画。部活動の部費。球技大会みたいなイベント。その他諸々。これらを一手に動かすのが生徒会なの」


「もちろん、それぞれの実行委員と一緒にだけどね。でも実質的には生徒会主導よ。」


 つまり学校を支配する一団が生徒会と言う訳か。その長が生徒会長。

 何かすごい話になってきたぞ。どうする? 弓月。


「で、生徒会が決定した事柄を教職員や理事会に提出して、今度はそっちと交渉するの。それは生徒会長と副生徒会長の仕事」


「おいおい。先生達どころか、学校の運営者とも話するのかよ? なんだよそれ、無茶苦茶じゃねえか」


「まぁね。だから生徒会の仕事は大変よ。大変なだけ、周りからの期待も大きくなる」


 それでか。生徒会が学校を動かす。つまり、自分達の要望が届くかは生徒会次第。

 中でも会長と副会長の力にかかってるってことか。なるほど、こりゃ大変だな。


「私立の高校だからね。馬鹿高い授業料払ってるってんで、親もその方がいいみたいよ。自分の子供達が通う楽しめる学校作りっていうのは。お坊ちゃん、お嬢様も多いみたいだし」


「本当にややこしい話だな、おい。まぁ大体言いたいことは分かったよ。それを頼りない一年には任せられないってことだろ?」


「中々物分りが良くなったわね、あんたも。そうよ。前期は絶望的って言った理由はそれが大きいわ。だけどそれ以上にね」


 グラスの水割りをグイと流し込み、プハーとかなんとか言いながら


「一年が前期選挙に立候補した前例はないのよ。あんたの友達が立候補すれば…そうね。前代未聞ってやつね。大事件だわ。いい?「私」が断念したのよ?それくらいすごいってことよ。前期に一年は」


 おいおい。花で断念ってどういうことだよ。この傲岸不遜。唯我独尊女が?どんなイベントだよ。


「ちょっと待てよ。概要を教えてくれよ。三年は強くないのかって話しただろ?それにそんな大変なら途中で辞めたいとか言う奴出ないのかよ?」


 ズイとグラスをこちらへ押しやる。水割りのおかわりを作れということだ。黙って作る。

 手際よく作られた水割りを受け取り、花子は面倒そうにだがちゃんと説明してくれた。


 選挙概要はこうだ。

 生徒会長選挙。生徒会の長なる者を選ぶイベントは年に二回行われる。前期選挙と言われる一回目はこの四月。新入生の最初のイベントにもなっている。

 後期選挙と言われる二回目は、十月に行われるらしい。一年が立候補するならここ。つまり、任期は半年ほどになる。その半年間に行われる学校行事を一手に担う。

 選挙に立候補する者がおらず、また三年の前期までなら現会長がそのまま着任するらしい。

 三年は前期までしか生徒会に携われない。まぁ、大学受験などの進路を考えれば当然だが。それが後期で、候補者がいない場合は…花子も忘れたらしい。何せ何年も前のことだもの。

 二年が強い理由は、ある程度学校のことも理解していて、そのまま三年まで一年間会長を勤め上げれるからだそうだ。頼りない二年なら三年がやればいいし、何より二年なら御し易いとのこと。新三年生は生徒会に携わらずとも、二年時に携わっていた人間が絶大な影響力を持っていることが分かっている。

 だから生徒会長は、二年か三年がやればいいと思っているらしい。

 途中で辞めた奴とかいうのは……、知るかボケ、としか聞いてない。


 そして一年は……。

 まず経験不足。だから頼りない。先生達や理事会との交渉を任せられない。

 つまり自分達が楽しめる学校にできない。

 面白がって。それ以外に票を取るのは難しいようだ。鼻で笑われて、まず相手にしてもらえない。

 花子が一年の後期選挙で生徒会長になった時は、ギリギリでの当選だったらしい。

 それ以降は……、言わずもがな。バリバリのカリスマを持ってして、学校を支配したそうな。

 一年の後期から三年の前期まで。二年の前期選挙からは、他の立候補すら無かったと言う。

 我が姉ながら恐ろしい。本当に恐ろしい。



「あーあ。前期選挙にあんたの友達が立候補して、あんたはその手伝いか。ご愁傷さま。あんた大変よ。なんせ前代未聞だからね。多分、新聞部だとか、放送部まで取材に来るわよ? 一気に学校の有名人になれるわね。下手すりゃ風紀委から呼び出しされるかもね。本気か?って。まぁ頑張んなさいよ」



 前代未聞だとか。


 新聞だとか放送部だとか。


 有名人だとか風紀委だとか。


 なんだかえらいことになっちまったな。


 風紀委ってなんだ?とか、選挙でのアドバイスくれよ?とかは聞いてもらえなかった。


「自分で調べろ。自分達で考えろ」


 それだけ言って、ソファーで寝ていらっしゃる。


 取り合えず明日、弓月に報告してみるか。

 この話聞いたら、諦めるかもしれないしな。あの花が諦めたんだ。

 なんとかなるか……? いや、ならないか。


 ただでさえ不利な選挙を戦う想像よりも、明日この話を弓月にする方が現実的で恐ろしい。


 今のところ太郎の予想は間違ってはいない。


 長く姉に虐げられてきたからか、太郎は的確に明日の自分の行く末を想像するのであった。


















文章書くって難しいですね。

読みにくいのに最後まで読んで下った事に感謝感謝です。

まったりいきます!またお読み頂ければ幸いです!

ありがとうございました!

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