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読みにくいと思いますが、よろしくお願いします。

感想などいただけたら、幸いです。

見つけることって…できるかな?


自分らしく、いられる場所。


自分らしく、付き合える人。


それは、きっとどこにでもありふれている。


だけど…なかなか見つからない。


だからこそ、皆一生懸命に探すんだ。


苦しくて、切なくて、辛いけど。





山田太郎やまだたろうです。京南中出身。趣味は…これから見つけます。友達には、ヤマタロって呼ばれてます。あとマウント。一年間よろしく!」

拍手と同時に着席。高身長というだけで、頂戴した恥ずかしい方のニックネームを晒した甲斐はあったようだ。

マウントヤマタロよろしく! なんて言葉ももらい、上々な出足と言える。


入学式を終え、教室で最初のホームルーム。自己紹介も進み、前後左右のこれから一年間クラスメートとして付き合っていく奴らとのお喋りで、少々ザワついている。

これから高校生活が始まるのだ。少々浮ついているのは、自覚できる。趣味はこれから見つけるなんて、宣言もしてしまった。

正に今。青春の一ページ(高校編)は開かれたのだ。


正直に言えば、変わりたいのである。中学時代は高身長という特徴しかなく、それを活かすこともできなかった。運動はどちらかと言うと苦手なので、運動部にも所属しなかった。恋もしたい。というか、恋がしたい。頼られ体質なのか、相談されるばかりで恋の当事者になったことはない。男女問わず、どころか学年を超えてまで相談者は後を絶たなかった。

自分も人並みに恋がしたい。誰かに相談されるのではなく、誰かに相談したい。


難しい顔をしてあれこれ考えてはいるが、要は楽しみたいのだ。高校生活を思い切り。


ああ、でもしかし。まだあと一人。ちゃんと聞かなければ。これからクラスを共にする奴だ。中学時代の出席番号はいつも最後尾だったが、さすがは高校。まだ一人残っている。


立ち上がった最後の一人は、確か女子だったはずだ。それもなかなかに可愛い。いや、かなり可愛い。いや…すごく。背はそんなに高くない。と言っても自分と比べてだ。

赤毛?ぽいというのか、赤色の強い茶髪。後頭部で確認。

まるで陶磁器のような滑らかで白い肌。すれ違った時に確認。

大きすぎると言ってもいい、その瞳。これもすれ違った時に確認。左目は髪に隠れて見えなかった。

真正面からは見てないので、ザックリな印象だがそんな感じ。所謂、超美少女である。


「ゆゆみつきっ」


「…は」


「はるきゃですっ!」


 噛んだ。噛んじゃったよ。可愛いかも。いや、可愛いだろ。キャラ設定おかしいっての。


 教室中の視線が美少女に集まる。噛み噛みの自己紹介になってしまった。

 第一印象としては、上出来なのか?少なくとも男子には、好印象を与えたようだ。

 一部の女子には、与えてないようだが。

 こういう時、振り返って彼女を見るってのはデリカシーに欠けるんだろうな。


 うわー耳まで真っ赤。色っぽーい。頑張れー。よろしくね!はるかちゃん!


 見たいぞ。かなり見たい。冷やかしの声が余計に、想像を掻き立てる。ああ見たい。

 あの白い肌が朱に染まると、どんな感じなのだろう。大きい瞳はどうなっているのだ。

 恥ずかしげに伏せられているのか。それとも恥ずかしい余り、窓の外でも見ているのか。

 なにせお嬢様中出身だ。男子がいるこの学校では緊張するのも仕様がないってものだ。

 男子と話すのも恥ずかしいのだろうか。目も合わせられず真っ赤になるのだろうか。

 その手は、胸の前で組まれたり口元を押さえたりするのだろうか。くぅっ…見たい。

 こんなことなら、ザックリではなくジックリ見ておくべきだった!

 なにやらアレな想像だが、太郎だってお年頃である。普段見れない顔を想像したりするのは、日常茶飯事だ。なんの取り繕いもない素の顔が見たい。油断した顔が見たい。

 太郎の場合、一般男子高校生のそれとはすこし違う理由からなのだが。


 噛み噛みの自己紹介に耐え切れなかったのか、彼女は俯いたまま座ってしまったようだ。

 初顔合わせということもあってか、後は担任が引き継いでの他己紹介。


 噛み噛みの美少女こと、弓月遥ゆみつきはるかはお嬢様中学で有名な、桜花女子中出身。お嬢様中出身より驚いたのが、彼女はクォーターであるらしい。おばあちゃんが、外国の方で、と担任は言っていたな。外国ってどこだなんて、考えたのが悪かったのか他の紹介は聞き逃してしまった。


 噛み噛みで、お嬢様で、赤毛で、目ぇ大きくて、クォーターで超美少女か。

 クォータだから美少女なのか、美少女とクォーターは関係ないのか。

 またアレな想像を廻らす太郎は、考えもしなかったし気付きもしなかった。


 そりゃあ未来を観れる超能力者でも悟りを開いた仙人でもないから、考えもしなくて当然であるし、気付きもしないのはそれはもう当然なのである。当然過ぎるのである。

 まさか自分が、高校入学して間もなくこの美少女と創立以来の事件を起こすなんて。

 自己紹介で噛み噛みだった美少女の本性がアレで勝手な想像とは違っていることに。






 それは入学式から一週間も経たない。新入生最初のイベント発表日のことである。






「やーっぱ可愛いよなぁ」

 お洒落眼鏡が憎らしい。学年でも男前の部類にはいるであろう中学からの親友、河田陸郎かわたりくろうだ。彼とは小学校から今に至るまで、同じクラスである。

 奇跡的偶然か。陸郎は、運命の赤い糸と豪語している。もちろん二人ともノーマルだ。


「むふふ。ロリっぽい。しかしてロリではない。これは逸材ですぞー」

 自他共に認めるデブオタ野郎。この高校での最初の友達、斎藤一さいとうはじめ

 あなたは私と同じ匂いがすると、友達になった。同じ匂いとはつまり、オタクということだ。否定しようにも心当たりがありすぎる。彼はそれを恥ずべきではないと言う。


「昨日の再放送観たぁ?マウヤマ〜?」

 この高校での二人目の友達、井口俊いぐちしゅんだ。彼は話し方もだが、なんというか間抜けで憎めない奴である。入学式の翌日、元中へ登校してしまうような、お間抜けさんだ。そのあまりのお間抜けぶりに担任も苦笑するしかなく、遅刻もお咎めナシ。




 陸郎と一は、噛み噛みの美少女の愛らしさを、弁当をつつきつつ絶賛している。

 二人が絶賛するのも無理はない。噛み噛みの美少女こと、弓月の愛らしさと言ったらそれはもうすごいのである。美人やら可愛いやらは、家で散々見慣れている太郎もグッとくるのである。その愛らしさを表現するのは、難しい。ただ語彙に乏しいだけなのだが。

 俊の話を右から左に受け流しつつ、お洒落眼鏡とオタクの話に意識を集中させる。



「おれはあのさ、白い肌と赤毛がたまらないよ」

 と、お洒落眼鏡。

「河田君は弓月嬢の首筋を、ご覧になられたことがありますかな?」

 と、デブオタ。


「いやー、そこまで見れないよ。さすがに無理あるだろ」


「くふふ。河田君もまだまだですな」



「すごい滑らかそうな肌だよなー。で、マウヤマあの推理無理なくない?」

 と、お間抜け。

 お間抜けはどうやら、弓月よりも再放送ドラマに夢中らしい。奇特な奴だ。


「おれはあの推理無理あると思うなー。まーでもさ、高嶺の花ってやつだよねえ〜」


 あるのか、ないのか、はっきりして欲しい。が、お間抜けの言うことも納得だ。


 まーなー。相槌をうちながら、窓を開ける。廊下の喧騒と、まだ少し冷たい風がはいってくる。後頭部を風で冷やしながら、弓月の姿を探す。教室にはいないか…。

 太郎はあの自己紹介から、面と向かって弓月と話したことはない。

「おす」やら「じゃな」みたいな挨拶をするのがやっとだ。ギリギリだ。

 その挨拶だってまともに顔も見れない。でもその美少女は、弓月は答えてくれるのだ。

「おはよ」やら「さよなら」と。



 もっと親しくなりたい。自分だけじゃない。学年、いや学校中の男子がそう思っているだろう。クラスメート。すぐ後ろの席。親しくなるための材料は沢山あるはずなのに。


 ダメだ。悲観的になるな。高校では変わるんだろう?変わらなくちゃダメだ。

 顔を上げ、男気を奮い立たせる。

 いやでも、まだ入学して一週間も経ってないじゃないか。そんなフランクでいいのか?

 上げた顔をまた下げ、男気を萎ませる。

 入学早々、こんなに悩むことではないかもしれないが、太郎もお年頃なのである。


 はーぁ、便所いこ。


「マウヤマはそうなんでしょ?絶対そうだわー」


 お間抜けのドラマ話は続いていたようだ。その隣で美少女話も続行中。


「あー、ちょい便所いってくる」


 太郎は陣取った廊下側の席を立った。



 席を立った太郎に舞い降りたのは偶然か、はたまた必然か。運命か。不可避の宿命か。



 教室に姿が見えなかった噛み噛み美少女弓月は、窓の開いた壁の向こう。



 廊下で友達に肩を叩かれ、太郎のすぐ後ろで立ち止まった。



 今、二人を隔てているはずの窓は、太郎が開けてそのまま。



 太郎を囲む三人は、太郎が立ったため弓月が見えない。



 太郎と弓月は背中あわせなのでお互い気付かない。



 弓月が見えないため、お洒落眼鏡とデブオタは、弓月話を続けている。



 お間抜けは、用を足しに席を立った太郎に、なおもドラマ話を展開させる。



 ここで奇跡は起きた。起きてしまった。起きたからには止まらない。止められない。



 誰にも止められない。きっと神様にだって無理だっただろう。



 デブオタの

「弓月嬢のこと(…これからももっと詳しくサーチせねばなりませんな)」



 お洒落眼鏡の

「お前もしかして、弓月のこと(…ストーキングするつもりじゃねえだろな?)」



 お間抜けの

「マウヤマぁ〜?やっぱ好きなんでしょぉー? (…なんだかんだこのドラマ(笑))」



 太郎は苦笑しつつ

「ああ、好きだ。大好きだ。初めて(ドラマを)見た(観た)時から好きだったよ」


 何の関連もない話であったが、彼らの一言一言は見事に組み合わさってしまった。


 この世でたった一人。噛み噛み美少女だけへの言葉に。単に勘違いなのだけど。


 お間抜けのお間抜けな、ドラマ話に苦笑しながら答えた、太郎の後方。


 噛み噛みで、お嬢様で、赤毛で、目ぇ大きくて、クォーターな超美少女はビクと震えた。


 廊下で談笑していた愛らしい少女は、30cmほど空を跳んだ。垂直に。驚いたのだ。


 次いで、恥ずかしさの余り廊下にしゃがみ込んでしまった。突然の告白であるからして。


 太郎を除く三人には、弓月はまた見えなかった。しゃがみ込んでしまったからして。


 教室を出た太郎にも弓月は見えなかった。見つけられなかった。


 なにせ、弓月がしゃがみ込んだ反対方向にトイレはあるからして。



 これを奇跡と言わずして、なんと言おう。太郎の願いは届いたのだ。どこかに。


 親しくなれるという結果が、そこに保証されているのかどうかは、また別だが。



 今や陶磁器のように白い肌は、ほんのり桜色。むしろ真っ赤なゆでだこ色。

 しゃがみ込み、両手でその頬を押さえながら…もちろん両手も、腕まで真っ赤。


 ……押さえながら、弓月はトイレへと向かう高身長の男を見つめ続けた。























































最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

まったり書いていきますので、生暖かく見守ってください。

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