④家人が濃いとか失礼だろ?
タイトルか~。短く「バッドガール」位にしとくべきかな?
「そんじゃ、また後で来るかんね、グランマ!!」
【ええ、それではまた後程!】
結局、街中には入れないグランマは、街外れの馬丁町近くで地に降りて結果を待つ事になったけど……どうなるやら?
とりあえずグランマの義勇兵参加は置いといて、ワタシは姉御を引き連れて久々に家に帰ったんだが……
「……ねぇ、ここが本当にホーリィちゃんの家……っ!?」
「んぁ? 姉御、どーしたぃ?」
門を開けてくれた侍従の若い方ことヴァルゴに手を挙げて挨拶すっと、姉御がワタシの袖を引っ張って聞いてきた。
「……だって、普通の金持ちだって言ってたのに……【猛牛ヴァルゴ】って言ったら……私だって知ってるわよ!?」
「ヴァルゴって、そんな有名なん?」
ワタシが何となく聞き返すと、姉御は呆れてたっけ……十年前にウチに来た時は「若輩者ですが、お屋敷の守衛も承ります」って最初は言ってたらしいから(あー、強かったのかなぁ?)って最近になって思ってたけど?
「……いえいえ、セルリィ様の足元にも及びませんが……武人として敬意を評してお迎え致しますよ?」
いつもと同じよーに、落ち着いた感じで挨拶するヴァルゴ。父様よりは若いから、普通のヒトにしか見えないんだよね、更にじー様もいるし。
「そーいや、ネブじーは?」
「ネブラスカ様ですか? 今朝方、予備役呼集に応じて登城されましたが」
「……ネブじー、ってもしかしてベベル・ネブラスカ!? あんたの家、帝国を代表する剣豪を二人も抱えてるの!?」
あー、ネブじーは昔は凄ぇ強かったって言ってたがな……ワタシには剣豪ってよりも、一緒になって立ったまま寝たり立ったまま食ったりするのを教えてくれた【無茶苦茶なじじー】としか思ってなかったけどなぁ……そんなスゲーのか?
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「……まぁ、いいわ……で、ホーリィちゃんはどうするの?」
「ん~、一先ず義勇兵登録……かなぁ?」
一応、名前出しちまえば、新兵教練なんざパスなんだし、義勇兵なら前と同じような立場でまた戦に出られる筈なんだがなぁ……。
「……ホーリィさま!! お戻りになられたんですかッ!?」
バタバタと騒々しい音と一緒にサマセッタねーちゃんが走って来た……あー、五月蝿いのが来ちまったなぁ……。
「もう!! 黙ってお屋敷を抜けて何ヵ月も連絡一つも寄越さないで……心配したんですからね!!」
「はいはい悪かったって……でもよ? どーせ何処で飯食ってたかとかは筒抜けだったんだろ?」
ワタシは首飾りを掲げて見せて、サマセッタねーちゃんの出方を窺ってみる。コイツ使って飯食っちまったせいで、いつ何処で何してたかなんて、いちいち連絡が行ってた筈なんだからワタシから手紙だの何だの出す事ぁ、ねえんじゃねえの?
「そー言う事じゃありません! もし、ホーリィさまが何処かで誰かに酷い目に遭わされて居るんじゃないかと思ったら、私は心配で心配で……」
……そんな言われ方したら、コッチが悪いみてぇじゃねーか……サマセッタねーちゃんはワタシよか十歳も上だから、歳の離れた姉御みてぇにとやかく世話になってはいたがよ……まー、心配かけたのは悪かったけど……
「……可憐なお姿のホーリィさまが……男達の乱雑な腕に組み伏されて……ああ!! もう……何と罪深い事を……」
「あー、別にそーゆー事は一切なかったんだがよ……」
「……ねぇ、ホーリィちゃん……このメイドさん、様子がおかしいわよ?」
姉御に言われるまでも無ぇよ……サマセッタねーちゃんの唯一の欠点は、ワタシをネタに変な妄想に浸る事だけなんだがな……そーなるとプルプルすんのはいつもの事だし。
「ハイッ!! ねーちゃん終わりにしろっての!!」
「……あごっ!? ……あ、あれ? ……あ、ホーリィさまお帰りなさいませ!」
一発はたいて気合い入れたら、普通に戻るのもいつもと変わんねぇな。よかったよかった♪
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とりあえず正気に戻ったサマセッタねーちゃんの淹れたお茶飲みながら、これからの事を姉御と話して、二人でグランマの所に行く事にした。
だってよ、まだ誰も登録すらしてねぇし、戦の詳細も判んねぇし……で、二人で出掛ける準備してっと、外が何だか騒々しいぜ……怪訝な顔の姉御に待つよう言いながら窓に近付くと……!?
「…… ホ ー リ ィ ぃ い い い い ッ ! ! ! 」
馬車が門を抜けて駆け込んで来たかと思ったら、馬車の扉をマジで蹴り開けながらでっかい図体が転がるよーに飛び出して、ワタシの名前を叫びながら屋敷の扉を体当たりでブチ開けて飛び込んできやがった!!
……つーかネブじー!! お前、城に呼ばれて行ってたんじゃねーの!?
「くおおおおおぉらあああああぁ~ッ!!! 帰ってきたなら帰ってきたと言わんかぁ~!!!! 心労で倒れるかと思うたぞぃ~ッ!!!!!」
「ううううぅっせええええぇ~ッ!!! 帰ってきたんだからいーじゃねぇかよ~ッ!!! それと五月蝿ぇんだよネブじー!!!」
ダダダダダッと廊下に飛び出して踊り場に出ると、ネブじーが鬼人種みてぇな身体をやっとこ包む位のパッツンパツンな衣服を破きそうに膨らませながら、玄関口に突っ立ってコッチに向かって両手を広げたまま待機してやがる……なら、やるこたぁ、一つだな!!
「うおおおおおりゃ~ッ!!! ただいまぁ~ッ!!!」
ワタシは踊り場から飛び降りながら、んばきいぃッ!!! と床板が曲がる位の組み手拳をネブじーに向かって振り下ろすと、
「ぐぬぬぬぬぬぬぅ~ッ!!? なるほどぉ~ッ!!!」
十字受けで耐え切りながら、落下したワタシを受け止めたネブじー。
「……おおぉ!! 中々の鍛え具合ッ!! ……いやはや流石はセルリィ殿!! 不肖、ネブラスカは……猛烈に感動しとるぞッ!!!」
がっちり受け止めながら、首を器用にクイッと曲げて踊り場にやって来た姉御に最上級の笑顔でネブじーが言い放つと、
「……あ、ど、どういたしまして……って、何で私の名前をっ!?」
「カカカカカカカッ!!! なぁにを言っとるかっ!! 【竜眼相貌】と名高いセルリィ殿の所で、我がホーリィが腕を磨いておったと聞いて、老いた身に再び力が滾る思いですぞおッ!!」
暫く間が空いて、やっとこ納得出来たのか、姉御は疲れきった顔のまま、
「……濃いわ……ホーリィちゃんのお家、濃厚過ぎて眩暈がしてきたわぁ……」
姉御はそれだけ言って、フラフラと部屋に戻っていっちまった……。
「なぁ、ネブじー……ウチのシショー、どーかしちまったのかな?」
「ふむぅ……女人、ましてや森人種となれば、儂にはとんと判らんのぅ!!」
こーして、無事に家に帰ったけど、戦働きに出ちまうとまた暫く戻れねぇ……。
……ま、みんな元気そうだな!! 安心したわっ!!
良い案が有りましたら宜しく!




