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とんだとばっちり

初投稿です。よろしくおねがいします。


済みません。文章がだいぶダブってましたので直しました。(10/22)


運営さんから指摘を受けましたので性的描写を削りました。

「あっちーな」

 夏の夕方。

 アスファルトからの強烈な照り返し。

 むあっと絡みつく湿気。


 よくある日常。

 よくある夏の下校時の風景。

 しかし、よくあるのはここまでだった。

 胸ポケットのスマホがけたたましく通話を告げる。画面の表示は……真一。


 あの世界的な名探偵の名言「真実はいつも一つ」から名付けられたのに、いまや立派な半グレ集団のメンバーとなってしまった実の兄。


「アニキ」

オレには特にカツアゲとかそういう嫌なことをしなかったので2コールで電話に出た。

(……)

 返事がない。

「どうした」

 荒々しい息遣いだけが返ってくる。

「! おい、アニキ!」

「真二……」

 やけに声が弱々しい。

「じ、爺にやられた……はぁ……日本刀(ポン刀)でバッサリさ」

 半グレ集団に加入してからはいつもオラついている兄にしてはらしくない、やけに自虐的な言い回しだった。

「マジか、すぐに救急車を」

 スマホを耳から話す。迷わず指が電源ボタンにかかる。一旦切って119番通報しないと。

「待て」

 重症のはずなのに、力強い声だった。

「何?」

 あわててスマホを耳に当てる。汗ばんだ手なので滑り落ちそうになった。

「もう、呼んである。……それより、……(じじい)を止めてくれ。……店の場所を吐かされた」

 店とは、半グレのリーダーが差し押さえた――ヤミ金のまがいごとをして――繁華街のはずれの飲み屋とのこと。むろん半グレ集団のたまり場である。

「分かった」

「頼む」


 オレは繁華街を駆け抜けた。額から流れる滝のような汗も、ベタつくYシャツも気に留めている場合ではなかった。

――爺ちゃん、なんで。

 元々アニキと爺ちゃんは折り合いが悪かった。半グレと元警察官だから喧嘩なんかしょっちゅうだった。だからって、そこまでするか……。とにかく今は爺ちゃんに会って訳が聞きたい。

 それに、リーダーをも手にかけようとしている。

――止めないと

 そう思って全力疾走したのだが……。

「「「キャー」」」

 この叫び声が無関係であることを祈ったが、

「警察だ、だれか警察を呼べ」

 どうやら遅かったらしい。


 角を曲がり裏路地に入ると、店の近くの橋の上で二人の男による大立ち回りが始まろうとしていた。

「今日こそ、叩っ斬ってやる!」

「面白れぇ、やれるもんならやってみな」

 祖父の白装束は返り血を浴びて一部が真っ赤に染まっていた。そして血まみれの日本刀。あまり血を拭わないまま鞘に納めたのか、抜刀にかなり手こずっていた。


――正気じゃない。でも……止めないと。

「爺ちゃん、これ以上罪を重ねないでくれよ」

 すくむ足を無理やり気力で動かし、祖父の前に立ちふさがる。

「黙れ。ワシは真一を引き込んだこいつが許せないんじゃ。こんなクズは真一と一緒に地獄に送ってやる」

「てめえ、真一を()ったのか」

 小学校以来の親友が切られたことを知り、リーダーの顔つきが険しくなった。

「どうしてなんだよ? なんでアニキを切ったんだよ? それが元警察官のすることかよ!」

 普段頭の上がらない祖父に対し、思わず詰ってしまった。

「黙れ。もうあんな奴、孫でもなんでもないわい」

 般若のごとき形相でこちらをにらみつけている。

「そうだな、真一は殺人犯の孫じゃねえよな」

 怒りのこもったこの一言が祖父の逆鱗に触れた。

「キサマ、一体誰のせいで」

 血走った目で刀を握りしめ、正眼の構えをとる。 

「上等だ」

 リーダーが懐から銃らしきものを取り出した。

「先輩も、待って下さい」

 この男、アニキの幼馴染で子供のころから知っている。……爺ちゃんが「此奴のせいでアニキが道を踏み外した」と確信するくらいの不良である。

「ああん、真二。下がれ。それともこいつの餌食になりたいか」

 ガンを飛ばしながら、安全装置をセーフティポジションにすると、オートマ拳銃を「片手」で構える。

――ひょっとして

「先輩、それモデルガンですよね」

 本物を持っているとは思えないし、人目があるところでぶっ放すほどいくらこの人も「バカ」じゃないだろう。

 第一片手では狙いがつけられないだろう。ドラマや映画じゃあるまいし。それなりに訓練していればこの5mの距離でも、オレが半身でも当てられるかもしれないが、努力という行為とは全く無縁の人だからそんな技術もないだろう。

「真二、お前なめてんじゃねーぞ」

 人差し指が引き金にかかる。

「真二、そこを退くんじゃ。退かねば、お前まで切るぞ」

 爺ちゃんがすり足でオレのすぐ隣まで近づいていた。

「その刀は人を切るためにあるんじゃないだろ、剣術の修行の為に手に入れたんだろう」

 警察学校で剣道を修練して以来、40年以上修練に努めた結果がこれでは、アニキにとっても爺ちゃんにとっても悲しすぎる。

「ワシの剣術は正義の為にあるんじゃあ」

 怒髪天をつくように吠えた。


――もう狂っちゃったのか。

 オレの頬を二筋の涙が流れる。

「爺ちゃん、正気にもどってくれよ。爺ちゃんのやってることは殺人未遂に銃刀法違反じゃないかー」

 かつては法の番人だったのだから、法によって説得しようとしたのだ。


 祖父はわなわなと肩を震わせた。

「お、お前、ワシを犯罪者扱いするのか、ゆ、ゆるせん」

 説得はむしろ逆効果だった。普段から蓄積していた二人への怒り、そこに「オレに犯罪者扱いされた」新たな怒りが加わってしまったのだ。

 「はっ」と掛け声を上げ、刀を一閃した。半身だったオレの左首筋が血を噴き上げる。

 同時に右脇腹に激痛が走り、銃声がこだまする。どうやら先輩は啖呵を切ってから息を止めて狙いを定めていたようだ。


 ここは古い石橋、なので欄干はとても低かった。具体的には後ろによろめいたオレを支えるには聊か不十分な位。あとは悲鳴を聞きながら川に落下するだけだった。

(うっ)

 浅い川なので、川底に思いきり激突した。しかも後頭部。頭蓋骨の折れる音が頭いっぱいに広がっている。

 頸動脈切断による失血死、腹部を撃たれたことによる失血性ショック死、頭部強打による脳挫傷、あるいは溺死。

――死ぬのか。

 今の自分に突き付けられた運命のカードは4つだが、どれを引いてもカードを裏返せば「死」と書かれている。そもそも選ぶことすらできない状態であるが。さらには川に落ちてから目が開かないので、そのカードが読めないが。


――死にたくない

 やりたいことは山ほどあるぜ。まず彼女作りたよな。今彼女がいないのは男子校に通っているからであって断じてモテないわけではない。大学に入ればきっとDTだって卒業できる。うん、そうだ。あと……そう、深夜アニメだって続きが見たいのは山ほどある。今期は粒ぞろいだから週30本は見ているし、あとは、あとは、『あのー』そう、そうパソコンだって、だって……しまった。履歴はみつかったら不味い。アニキ(19歳)名義でプロバイダー契約しているから、18歳未満が見られないアレやコレに接続しまくりだ。そんなのがバレるのはヒジョーに恥ずかしい。『もしもし』いやいや誰も履歴なんて見ないだろう。そうだ、きっとそうに『ちょっといいですか』……ってさっきから誰だ一体って、川の中なんだから幻聴に決まっているだ……ろ……う?いやなにかおかしいぞ。もしもーし。誰ですか?って脳内で呼びかけても無駄だよな。なんつー非科学的な。

『良かった。気づいてくれたんですね』

「……え、マジ。ほんとに誰かいるんですか。いたら助けてください」 

 藁をもすがる、いや手が動かないしそもそもここ川底ですけど――そんな思いで救助を求める。

『いいですよ。私が貴方を直してくれる人のところまで連れて行ってあげましょう』

「病院までですか! ありがとうございます」

『いえ、ちょっと違いますけど、まあ、助かるでしょう、きっと』

「そうですか、本当にありがとうございます。ところでお名前は、……ああ申し遅れました、自分金子真二と申します」

 さっきから頭が動かないが、心の中では数十回頭を下げている。

『これはこれはご丁寧に、私アメノウズメと申します』

「…」

『?』

「……」

『??』

 沈黙がこの空間を支配する。

「………はあ、アメノウズメだあ」

 つい口調が荒くなる。


――たしか天岩戸伝説で全裸(まっぱ)になって踊ったていう……

『いやですわ、紐は残っていましたわ』

 全然嫌がっている口調ではないが。

「紐一本じゃねーか、しかも腰より下までずり落ちたんだよな」

『ええ、まあ』

 古事記でも日本書紀でもたしかそんな記述だったはずだ。

 一般にはただ踊っていたことになっているのは、まあ、子供達に配慮したのだろう、きっと。

 それよりも……。

「アメノウズメって神様じゃねーか」

 突っ込みを入れずにはいられない。

『それが何か?』

――絶対今、コイツ首をかしげたよな、見えねーけど。

「あのなー、『神様』を名乗っている奴なんて頭のおかしーやつか詐欺師しかいねーだろ」

『でも、私本当に神ですよ』

「じゃあ、オレを直してくれよ」

 投げやりになっているのが自分でもわかる。まあ、これで助かる望みは潰えたのだから当然だ。

『ですから、直せる人のところまで連れて行ってあげると』

「ああ、分かった、分かった。分かったから早くしてくれ」

『その代わり、この世界には二度と戻ってこれないかもしれませんよ』

「ああ、分かった、分かった。分かったから早くしてくれ」

『じゃあ、早速』

 オレの身体が得体の知れない何か暖かいものに包まれたような感覚に襲われる。それがこの世界での最後の記憶となった。


――ん、ん。

 おお、意識があるぞ。つまりオレは、――生きている。

「ああ、良かった。目が覚めたんですね。私の言葉分かりますか?」

 オレの顔を覗き込んだのは、同い年位の女の子だった。

 窓から差し込む夕日を浴びて輝くような金髪、サファイヤのように煌めく蒼い瞳、桃のように瑞々しく食べたくなるような赤みがかったピンクの唇。オレにとっては彼女の方がよっぽど女神に見えた。

天岩戸伝説の下りが古い日本語混じりだったので直しました。


全体的に文章が読みずらかったので直しました

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