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いろいろあってダンゴムシ  作者: macchang
4/10

ダンゴムシ4 布団に寝っ転がる

新キャラ登場

 幼女の襲撃により捕らえられた僕たちは、母屋の居間で人間の家族と対峙している。テーブルに置かれた小さな木箱に入れられた僕らをキラキラした瞳で見つめるミザリィちゃん。お母さんは丸まっている内は興味ありげに見ていたが、防御を解いた姿には顔をしかめ、それ以降はこちらを見ようとしない。父親の方は幼女とは違う興味ありげな顔で、虫メガネの様な物で此方を遠目に観察している。恐らく鑑定の魔道具で此方の事を探っているのだろう。


 そんな事よりも大事なのは僕の彼女である。ミザリィちゃんが握りしめてしまったものだからかなりの負担を受けて弱っている。魔獣とはいえ小さなダンゴムシ、その防御能力は幼女の握力すら脅威となるのである。危険に巻き込んだ事を謝罪しながら必死で治癒魔法をかける。見た目的にダメージは少なそうだが内的負担が大きい様だ。傷は治し切ったので体力回復に切り返る。ちなみに僕の甲羅は幼女の握力ではビクともしなかった。


 傷が治り体力も回復しているのに彼女の顔色は優れない様子なのは、今の状態に不安を覚え怯えているからだ。なんとか安心させようと頭部の甲羅を軽く当てたり触角を触れ合わせる。人間でいえば抱きしめて額を合わせたり手を強く握る様な行動だと思ってくれ。2匹の間ではこういうやり取りなのだ。

「赤いキラキラ虫さんは元気ないの?」

そう言って指で彼女を突こうとしたミザリィちゃんの指を遮る様に身を割り込ませ、威嚇の為に警告の為に怒りの感情を似せた意思疎通の魔法を行使する。それに驚き手を引っ込めるミザリィちゃん

「ミザリィ、キラキラ虫さん達は突然捕まえられて怒っている様だ。優しく元居た場所に戻しておいで。」

少し硬い笑顔で諭すお父さん。良い提案ですよ。

「でもこんなに綺麗なのに。」

そう言って再びこちらに触れようとするミザリィちゃん。再度魔法で威嚇する。それでも手は引っ込めるが物惜し気な彼のミザリィちゃんだったが

「じゃあパパが戻してこよう」

そういってお父さんが木箱をミザリィちゃんでは届かない高さに抱え上げてしまった。母親の無言だがその行動を肯定する様な表情を浮かべている。

 

 縋る様な瞳で父親を見上げるミザリィちゃんの表情を見ないように、パパさんは足早に居間を出る。恐らく娘のあの表情に弱いのだろう。察して彼に感謝の意思を伝える。

「驚いた、随分賢いんだな。」

足を止め驚いた顔で此方を観察する。

「魔獣なのはわかっているし、魔法が使えるのも判ったがこちらの言葉は解かるか?」

問いかけに肯定の意思を送る。驚きの表情がさらに顕著になる。言葉が分かるのは自分だけだと加えて伝えると少し表情は和らいだ。

「ともあれ、娘が迷惑をかけた、どこに住んで居たか教えてもらえると助かるな。」

気を取り直したらしいパパさんに薪置き場に連れて行って欲しいと伝える。


 正直な所、この家族に飼ってもらう事も選択肢あるにはあったが、ミザリィちゃんは少し幼くお転婆過ぎた。僕は平気だが僕に寄り添う彼女への負担が大きいし、今後、子供が出来た時に間違いなくママさんに追い出されるだろう。

「娘も悪気があったわけでは無いんだ。虫である嫌悪感さえなければ確かに綺麗な姿だとは思うし。」

そう言われると悪い気はしない。

「恐らく娘は明日から君たちを探し回るだろう。捕まえたり触らないように言い聞かせるので、時々は姿を見せてやってくれないか。」

娘に弱い父の願いだ。こちらが意思疎通できると知らなければこんな事は言わないだろう。触らないという条件でなら大丈夫と伝えると共に魔法で自分の周囲に火球を生み出す。人間基準で初歩の魔法だが、小さな子供に大怪我をさせる事は可能だ。本当にそんな事をする気は無いが、今回は大事な妻を守るのが最優先だ。傍らの赤い個体が妻であり、今回の事で大分消耗した事と、それに対する怒りを伝える。

「これは、随分我儘な願いを言ってしまったようで申し訳ない。」

普通なら危険な魔獣と分かれば退治しようとするだろう。本来は攻撃手段に乏しい小さな存在だ。大人の人間なら簡単に踏みつぶせる。同族の中では際立って頑丈な僕でも魔術を使える人間相手では早々に炎の魔法で焼かれて甲羅を残して息絶えるだろう。しかしこの家の管理人であるミザリィの父親はそういった対応でなく。こちらを一つの意志ある命として誠実な対応をしてくれている。なので、今の脅しで捕まりそうになった逃げると改めて伝え、今度は風の魔法で少し浮かんで見せた。後ろで一緒に浮かんだ彼女が驚いているが今は気にしない。

「それを聞いて安心した。とにかく娘にはちゃんと言って聞かせる。改めて今回は済まなかった。」

ちょうどそう言ったところで薪置き場の前に到着し、木箱が降ろされる。浮かんだままそっと着地しそのまままだ少し気が動転している彼女を先導し積まれた薪の裏に隠れた。それを見て管理人の男は母屋へと戻って行った。


 翌朝、ミザリィちゃんが僕たちを探しに来たが、彼女の手が届かない隙間に入り込み難を逃れた。悲しさと悔しさを滲ませた表情の幼女が少し可哀そうになったので、光の魔法で僕達の姿が煌めく様に演出すると、その表情は驚きに変わり母親が食事だと呼びに来るまで夢中で此方を見つめていた。その後も時間があればやってくるので、朝の決められた時間のみ、朝食前の十数分だけそうして姿を見せてあげる事にした。時間が決まっているので元の生活に僕達の観察時間が加わっただけで、ミザリィちゃんの生活に支障は生じなかった。


 そうした事があって無事に引っ越しを終えた。引っ越し先の環境は床下に比べると明るいものの雨よけの屋根のある環境。3方を壁に囲われただけの小屋の中に薪にする前の木材が置いてある。開口部が広いので小屋の奥まで木の葉が入って来きて隅に積もっている。奥に行けば積まれた木材が邪魔をして人が入って来れなくなる。そこに積もった枯れ葉の下に潜り込めば、そこは床下と大差ない環境だ。


 人間に捕まった事で彼女がこの家の付近に住むことを嫌がるかと心配したが、僕が意思疎通をして解放された事が分かっているようで、それほど忌避する様子はない。ただ、引っ越しの後しばらくはいつもより触れる面積が多かった。その結果として彼女が卵を抱えるかと思ったが今回は残念だった。


 床下で彼女の為の環境を整えた矢先に引っ越しすることになったので、再度住環境を整えることにする。最初は床下では食用として枯れ葉の他にキノコの菌も持ってきていた。生えてくる前に引っ越してしまったので、今度こそという思いで菌を探して植える。このキノコはアミノ酸を含む旨味成分を含んだキノコだ。僕と彼女の殻はどうにも特別な組成に物らしく同族と同じ物を食べているのに甲羅の質が明らかに違いっている。どうにも体内で精製した金属成分を通常ならカルシウムを含んで固化させる所で代わりに使っている様だ。僕が正体不明の銀色の金属。彼女は魔力を含んだ銅と思われる金属だ。


 そういう所からして僕も彼女も魔獣なのだろう。今日も寄り添う彼女の触覚を撫でる。先端からゆっくり自分の触覚の先を這わせていき、根元にある小さな触角に触れると身体を震わせて、照れた様な仕草で頭の甲羅をこちらにこすりつけて付けてくる。カワイイ!そんなやり取りを挟みながら環境を整えていく。途中、覗き見るミザリィちゃん対策を忘れない。光り輝く僕と彼女。磨かれた銅の様な甲羅の反射する彼女の姿は何度見ても美しい。妻が三日で飽きることの無い美人虫でしあわせだ。光を反射する僕の姿も、彼女から見ると美しい様で、見惚れて呆然とした感情が漏れ伝わってくる。


 引っ越し前に卵が深し子どもたちをお腹から解放出来ていたのは幸運だった。捕まった時に卵を抱えていたらもっと大変だったと思うからね。これからは床下の時と違い、外の様子がはっきりわかり朝昼晩のある生活になる。夜行性な同族と床下の外を始めて知る彼女。僕がしっかり支えてあげないとな。


 新たな環境も整い、生活も安定してきた。朝、枯れ葉の下で目覚め、彼女一緒に枯れ葉の下から這い出すと、朝食の枯れ葉を食べて、ミザリィちゃんが来るまでイチャイチャしながら待機。ミザリィちゃんがキラキラというよりランランとさせながら煌めく僕達を堪能して後にまた枯れ葉の下に戻る。枯れ葉自体が食料でもあるが最近ようやく白い小さなキノコが生えて来た。キノコと言っても人間にはカビにしか見えない小ささ、だろうがダンゴムシの体には充分な大きさ。彼女の美味しいと好評である。


 この環境での生活も今のところ順調だ。僕の隣に彼女が居てのんびり暮らす理想的な環境。元からいた同族たちも住みやすい環境の恩恵を受けている。そしてそういう環境が整うとそれを察して捕食者と言うのは集まってくるのである。しっかり魔法で撃退する。ムカデにトカゲ、見た事も無い鳥。薪を燃やしてしまわない様に炎の魔法は控えめで対応する。


 順調に外敵も追い払っていたが、今回森からやって来た奴は一味違った。それは甲虫の固い殻をもつ虫型の魔獣。固いアゴでダンゴムシを甲羅事噛み砕く天敵である。人間だったころアパートのゴミ収集場にハサミムシと共に捕食者として発生していたあの虫。ゴミムシの魔獣が森からやって来たのである。森に近い薪小屋にエサの気配を感じての登場。気付けば数匹の同族が食い殺されていた。これが普通のゴミムシならいざ知らず、魔獣化した天敵の登場となると、今までには無かった危機感を感じる。案の上、そいつは出くわすなり僕の後ろに控えていた彼女が張った防御魔法をいとも簡単に喰い破った。


 あの顎で襲われたら彼女の甲羅も砕かれてしまうだろう。もっともその牙を届かせないのが僕の使命である。場所が悪いので風の魔法で吹き飛ばす。抵抗しても無駄である、発生させたつむじ風は人間すら少し浮き上がらせる。目の荒い木材に爪を引っ掛けて堪えれも腕がもげて吹き飛ばされるだけだ。吹き飛ばすところは薪小屋の外。追い出してしまえばこちらの物。燃え移る者の無い場所で焼き払う飲み。


 つむじ風に巻かれ、何とか姿勢を取ろうと固い甲羅を持ち上げ羽を広げた状態で着地したゴミムシに炎の球が3連続で直撃する。その炎は広げられた薄羽を漏らし、固い外殻に纏わりつく。そのまま外骨格の上で燃え続け中の内臓を蒸し焼いてしまい、ゴミムシの命を絶った。


 防衛手段も確立してきて益々生活は安定する。相変わらず炎に照らされた僕に見惚れてくれる彼女が愛しい。母屋の管理人家族の関係も今のとこと問題はない。結構順調にダンゴムシライフ送れてるんじゃなかろうか。


もっとラブラブ成分多めで甘くしたい

精進だ

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