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ピッロ、南の国の王様に会う

「ピッロよ、おまえは頭のいい誠実な若者のようだ。南の国へ行って解毒剤を探して持って帰ってきておくれ」


 王様はピッロに特別早い馬を用意させるようにお付きの者に命じました。

 おじいさんはいいました。


「恐らく南の王からの小箱にハチが隠れていたのじゃろう。問題はそれが、偶然か故意かじゃが」

「故意? しかし、何故南の国の王が冬の女王様を傷つけねばならんのだ?」と王様。

「わかりません」


 王様はしばらく考えてから言いました。


「冬の女王が病気になると力が暴走すると知っていたのだろうか?」

「まさか、我々でさえ初めて知ったことです」


 さらに王様は考えていいました。


「南の王が故意に冬の女王を傷つけようとしたのか、それとも、偶然ハチが小箱に入ったのかわからんが結果として南の国は高い食料を我が国に売りつけ、我が国の民を安い賃金で雇って儲けておる。雪と寒さで我が国に人が住めなくなったら軍隊を進めてこの国を占領すればいい。それから、冬の女王に解毒剤を飲ませて冬を終わらせればいいのだ。……ハチは故意に小箱に仕込まれたに違いない。なんということだ。南の国の王がこれほど、奸計に飛んだ男だったとは! 戦争だ。やられる前にやってやる!」


 お付きの人達は皆で王様を止めました。


「王様、憶測で判断してはいけません。もしかしたら、ハチが小箱に入ったのは偶然かもしれないではありませんか?」


 ピッロは南の王様の手紙を持って来たのを思い出しました。


「王様、これをお読み下さい」


 王様は手紙を読んで言いました。


「この言葉が真実なら、小箱にハチが入ったのは偶然という事になる。そうだ、南の国の王に頼んでみよう。クマンバチの解毒剤を至急、届けてくれと。どんな対応を見せるかみてみようではないか?」


 王様は急いで手紙を書き、ピッロに渡しました。

 ピッロは火狐の襟巻きを学者のおじいさんに返し出かけようとしました。暑い国に行くのです。火狐の襟巻きは必要ありません。

 すると、おじいさんが小声でピッロに言いました。


「ピッロよ。皆にはまだ時間があるように言ったが、このまま冬の女王様が力を使い続ければ、女王様は死んでしまわれるかもしれん。針を抜いた後、一度目覚めたというが、その為に死期が早まったように思う。見よ、雪の降り方が尋常でなくなった」


 おじいさんの言う通り、外は猛吹雪です。


「さあ、襟巻きは国境までして行け。きっと役に立つじゃろう」


 おじいさんはもう一度、火狐の襟巻きをピッロの首に巻きました。

 ピッロは支度が出来たので王様の手紙を持って猛吹雪の中南の国へ向いました。襟巻きのおかげでピッロは凍えることなく南へ進みました。

 やがて雪が小止みになり国境につきました。国境を越えしばらく進んで行くとあたりはすっかり砂漠になってしまいました。この砂漠を越えたら南の王の都です。

 すると向うから立派な行列がやってきます。ピッロが馬に乗って近づくと兵隊達がやってきて言いました。


「この行列をなんと心得る。南の国の王様の行列ぞ。馬を下りて道端に平伏さんか!」


 ピッロは馬を降りて兵士に言いました。


「僕は南の国の王様に会う為に来ました。四季の国の王様からの手紙を預かっています。南の国の王様に会わせて下さい」


 兵士はピッロを嘘つきに違いないと言って笑いましたが、兵士長はピッロの乗っていた馬があまりに立派だったので、ピッロの話を信じました。

 ピッロは兵士長に連れられて南の国の王様の前に連れて行かれました。


「王様、この者が季節の国の王からの手紙を持って来たと言っております」


 南の国の王様は豪華な輿の中からピッロに声をかけました。


「その話は誠か? 冬の女王様ではなく、王から手紙とは? すぐにその手紙を出しなさい」


 ピッロは恭しく手紙を南の国の王様に差し出しました。

 手紙を読んだ南の国の王様は真っ青になりました。


「大臣!」


 呼ばれた大臣がすぐにやってきました。


「大臣、冬の女王様に送った小箱にサバククマンバチが入っていたそうだ。女王様はハチにさされてご病気なってしまった。すぐに、解毒剤を用意せよ」


 大臣は大急ぎで医者を呼びました。医者は薬師くすしを呼び、薬師くすしは荷物持ちを読んで薬カゴの中を調べさせました。荷物持ちは叫びました。


「ありました。ご主人様。サバククマンバチの解毒剤でございます」


 小さなガラス瓶に入った解毒剤は、荷物持ちから薬師くすしへ、薬師くすしから医者へ、医者から大臣へ大臣から王様へ手渡されました。


「ピッロよ、解毒剤をすぐに届けてほしい」


 ピッロは王様から解毒剤のガラス瓶を受取り、来た道を引き返しました。

 しかし、ずっと走って来たのでとうとう馬が力つきて倒れてしまいました。ピッロは懐からチカを取り出して言いました。


「チカ、この薬瓶を冬の女王様に届けておくれ。女王様の口に垂らすんだよ」と言いました。


 ピッロはチカに火狐の首輪をしました。ここは砂漠です。チカは暑くて仕方ありませんでしたが、国境を越えたらきっと必要になるでしょう。チカは暑いのを我慢して薬瓶を持って飛び立ちました。

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