第一話!マジでクソゲーかもしれない休日の朝。
嫌あああああああああああああああああああああああああああああああああ
やめて痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
「やめて!」
息があがる。この夢をみたのは何回目だろうか。
夢の内容ははっきり覚えていない。けど、毎回同じ夢を見ている気がする。
抽象的に言うと、私が殺される夢。
「はぁ。」
ため息をついて、いつものように寂しさを紛らわすように声をあげる。
「おはよう!!!!」
声に反応して、テレビがつく。
最近、便利になってきたな。昔のスマホは手のひらサイズで重かったのに。
今は空中に画面が表示され、ずいぶん軽い。動きも軽い。
テレビも、設定さえすれば声だけでつく。
『おはようございます。ニュースです。一ヶ月前から続く殺人事件の被害者が今日で38人になりました。容疑者はまだ見つかっていません。』
「だっさ。警察何してんだよ。もう38人とか。」
こんなにいろいろ便利になったのに、警察が動けないのは、犯人側のものも便利になっているからだろう。
殺人範囲もばらばらで、1人目から12人目までは、ここ 東京。
13人目から19人目までは、沖縄。20人目から30人目は長崎。31人目から36人目までは山口。37・38人目は広島。
「お嬢様、お嬢様。今日は休日じゃが、どうなさるのじゃ?」
「うっせー、じじー。」
「爺に設定なさったのは、お嬢様でしょう。」
さっきのうるさいのは、私のスマホ。というより、カードを入れるとスマホと繋がる、人形。
「で、お嬢様、朝食を早く取らないと昼食のお時間になりますよ?今日は爺がお作りしましょうか?」
「いいし。自分でやるし。」
私はパッと立ち上がり、伸びをする。
去年から切ってない髪が頬をこそばす。
「髪傷んでるし。爺、どうすんのよ!」
「では、『髪が傷んでいるとき 対処』と検索いたします。検索中。」
人形が気をつけのまま、動かなくなる。
私は髪をくしゃくしゃっといじって、検索完了を待つ。
「お嬢様、ちゃんとお風呂のあとは髪を乾かされているじゃろうか?」
「あ?面倒いし、時間無駄、する意味ねぇし、カス。」
「お嬢様、髪を乾かさないと、菌が繁殖して、傷みやすんじゃ。」
人形の答えを左耳から入れて、右耳から出す。そのまま、キッチンへ行った。
私の後を、人形が困った顔をしてついてくる。
「クソゲー!」
私の口癖。
一日に何回言うか数えていたら、キリが無い。
声に反応して、ダイニングルームのテレビがつく。
『今日、38人目の....』
「ほんと、クソゲーだな。最初のときから、毎日この事件のニュースやってるぞ。防犯カメラ設置しろよ。」
フっと、鼻で笑ってやった。
私は、2つ卵を割り、牛乳を卵と同じ量くらいいれ、混ぜ合わせる。砂糖をスプーン3杯入れて、また混ぜる。
混ぜ終わったら、トレーに注いで、食パンを二枚、浸ける。
「爺、三分経ったらひっくり返して、また三分経ったら呼んで。」
「お嬢様、その間に何をなs」
「爺、一々聞くなし。」
洗面所に行って、髪を融かす。ゆるふわのくせ毛。少しピンクがかった茶色の髪。
顔を洗って、鏡を見る。青紫の目に、白い肌。薄ピンクの唇。
「爺、ねぇ、ニキビ治った!」
鬱陶しかったニキビが、人形の勧めてくれた薬で完璧に治ったのだ。
「お嬢様、時間ですよ。」
人形が呼ぶ。私は少しスキップしながらキッチンへ向かう。
料理をよくする人、よく食べる人ならわかると思うが、私は「フレンチ・トースト」をつくっている。
手軽に作れる、おいしい朝食。
焼いていると、バターと、卵の甘い香りがキッチンに広がる。
ほんのり焦げ目がついたら、ひっくり返して、もう片面も焼く。
「最高っ。」
冬の朝の冷たい空気の匂いの次に好きな匂いだ。
「お嬢様、もう10時ですぞ。」
「まじで?いいや、もうブランチにしよう。どうせ夜食喰うし。」
「お嬢様、夜に食べると太りますぞ?」
「クソゲーだな。」
私は鼻で笑うと、百合の花の模様が入った皿を手にとって、いい焼き目のついたフレンチトーストを載せる。
右手に皿、左手にフォークとナイフとメープルシロップ。
ダイニングルームに持っていって机におく。
「よし、じゃあいただきます!」
休日の始まり。