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メビウス・クラウン ~あなたに至る為の物語~  作者: 野久保 好乃
――mission 1 アヴァンツァーレ家
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1 冒険者生活 其の一


 昼前から降り始めた激しい雨に、足元が川のようになっていた。

 硬い地面は水捌みずはけが悪く、所々で大きな水溜りが出来ている。逃げ場のない水は時間と共に深みを増すばかりだ。下手をすればくるぶしまで浸かるその上を、委細構わず四つの影が走る。実際には五つ目が存在するのだが、厚い雲と激しい雨を通したせいか、五人目は影すら存在の主張をやめてしまったようだ。雨音のせいか足音も聞こえない。


 ウォーォオオーッ


 かわりとばかりに響く遠吠えは、黒い大きな狼のものだ。その数、三十と少し。体の大きさは馬より一回り小さい程度。頭部に一本の角があり、その尾は毛では無く鱗で覆われている。

 狼の変異種ヴァリアント――人族で言うところの『魔物モンスター』――一角黒狼メラン・リュコスだ。


「囲い込みは成功。さて、これはどう処理するの?」


 俺達のパーティにおける紅一点、煌めく青いドレスのような神官服を纏った女が愉しげに声をあげる。本人との距離はかなり離れているうえ、バケツの水を天から叩きつけられるような大雨なのだが、その言葉はハッキリと聞こえた。


「討伐証明部位は角。素材としては、角、牙、爪、毛皮、尾、肝かの。肉は魔獣用の飼料にしかなるまい」


 女の対面に位置する場所の男がそう答える。高い身長と声で男だとは分かるが、濃い藍色の全身金属鎧フルメタルアーマーに覆われているため、一目で相手の年齢を当てることは難しい。だが、にじみ出る風格と深みのある声音に、壮年以上だろうと想像する者がほとんどだろう。……実際には、壮年どころか千歳を超えているのだが。


「少なくとも、肉食系の飼料にはなるということだ。無駄なく使うぞ。首を刈るか即死が望ましい。出来る限り毛皮への損耗は押さえてくれ」

「……」


 俺の答えに、俺の向こう側にいる男がうんざりしたような視線を寄越してきた。燃えるような赤毛の、彫の深い偉丈夫だ。鎧男と比べても遜色ないほどに鍛えられた体をしている。その身を包むのは神々しい光沢のある赤い革鎧と、血よりも濃い真紅の胸鎧だ。

 男は何も言わない。ただ嘆息をつくだけだ。

 もう一人も返事が無いが、こちらは気配も無いし姿も見えない。多分、居ることは居るはずなので、放置しておいてもいいだろう。もしかすると俺の後ろに立っているかもしれないが。


「さっさと終わらせるぞ」


 と、先程喋らなかった赤毛男が最初に動いた。真紅の巨大な両手剣がその手に具現したと同時に、黒みがかった赤が大地に降り注ぐ。己の色で世界を染めるかのような勢いに、一角黒狼(メラン・リュコス)達が狼狽するように陣形を乱した。逃げようにも活路を見いだせず、後ろ足に力を込めても走り出せず。そこを男が容赦なく襲って首を刈っていく。密集戦には向かない大剣であるにもかかわらず、その速度と正確さは目を見張るものがあった。


「あら! 負けていられませんね!」


 消極的な表情で黙々と首を狩る男の活躍に、青い女はスキップを踏むような足取りで無造作に狼の群れに近寄り、瞬時に具現させた紺色の偃月刀で鮮やかに首を刈り始めた。大剣以上に小回りが利かなそうな武器だが、頓着なく群れに突っ込んで行く。神官服の意味が不明だが、そこは突っ込むまい。

 しかし、こうなると俺と鎧男の出番は無い。三十余程度では手を出す前に終わってしまうのだ。事実、男が動いてから二十秒ほどで戦闘は終了した。


「なんだかんだ言って、いつもフラムが先陣切って倒してちゃうのよね~。一番戦いたいの、フラムなんじゃないの?」

「おまえ達のお遊びに長々つきあわされるのが嫌なだけだ! ラ・メール、貴様こそ嬉々として戦闘をしていただろうが!」

「ぐずぐずしてたら何もしないうちに終わっちゃうから、やるしかないじゃないの。現界して戦うなんて、滅多にない経験だから楽しいわよね~」

「数を斃したいなら、最初から俺を巻き込むな!」


 青い女――ラ・メールの声に、赤い男――フラムが心底嫌そうな顔になる。

 実際、うちのパーティで唯一、フラムだけが本人の意思と関係なく此処に居る。ある意味、一蓮托生という名の巻き込まれだ。


「儂の出番が全く無いんじゃが……」

「なら、最初から動け! 見つけ次第全部殺せばいいだろうが! だいたい、テール! 貴様は何故人族の冒険者で英雄になっているんだ! 本業はどうした!」

「儂、『本業:守護者』じゃからの?」


 いっそ神々しい程厳かに言い放った鎧男――テールの声に、フラムの眉が激しく上がった。怒りに呼応して体温まであがっているのか、フラムの周囲から凄まじい勢いで水蒸気が発生している。

 ……やだ、このひと本気で怒ってるわ……炎の具現者のくせに沸点低いとか、どうなんだろうか。


「まぁまぁ、そのへんで。テールさんは昔から長々と冒険者やってたみたいですし、それだけ年季が入ってれば英雄にもなりますよ。ええと、一万年ぐらいやってるんでしたっけ?」

「なんだかその言い方だと、儂、ダラダラ冒険者やってたみたいに聞こえるんじゃが……? あと、ポムよ、なんで生きてた期間が十倍になっとるのかの?」


 ああ、いたよ。ちゃんといたよ。五人目の気配無い同行人が。

 鈴の音がまるでしないんだが、俺の与えた鈴はいったいどこにいったんだ。手首には与えた鈴と同じ外見のアクセサリーはあるようだが、音がしないからきっと偽物だろう。そうに違いない。

 そして服装はいつもの執事服だ。……せめて、冒険者やる時ぐらいは違う服を着ようよ。出来るだけ目立つようにピエロの恰好とか。

 ――やだ……想像したらなにか不吉……薦めないでおいたほうがよさそうだ。


「――で、坊ちゃん、これ、角以外は『収納』でいいです? それとも、ここで解体しちゃいます?」


 坊ちゃん、と呼ばれた俺は、執事姿のポムを一瞥してから「そうだな」と零す。


「解体も経験にはなるだろう。こちらの大陸にいる変異種ヴァリアントは、俺達の大陸のものより素材としては劣るが、初心者が扱うにはうってつけだからな」

「では、ベッカー家の技能習得用に送って解体してもらいましょう」


 ポムは自分の懐から可愛いポーチを取り出す。ピンク色のフリフリしたすこぶる乙女なポーチだ。女性が持っていれば微笑ましく思うが、ひょろ長い男が持っていると違和感しか感じない。

 ……しかし、こいつは何故、そんな無駄に可愛らしい作品を作ったんだろうか……持ち歩くのは自分か俺ぐらいしかいないのに。趣味なの? 乙男なの? ポムは相変わらず不思議系だ。


「角はテールでいいのよね? SSSが納品するのと、Fが納品するのとじゃ、評価価格が違うのよね?」

「価格差程度の小銭よりも、皆のランクを上げる為におぬし等が納品したほうが良いと思うがの。せっかく納品数上限無しの依頼なんじゃから、ここで稼いでランクアップしたほうが良かろうて」


 二人が顔を見合わせ、次に俺を見る。

 なぜなら、このパーティーのリーダーは俺だからだ。例え、十歳ぐらいの子供の姿をしていようとも。

 ――まぁ、実体は十歳どころか赤ん坊だったりするのだが。


「テールから納品で構わない。どうせ数をこなすんだ。結果的に、嫌でもランクアップはするだろう。なら、微々たる量だろうが貨幣を稼ぐほうが重要だ」


 俺の声に、ほらね、とラ・メールが胸を張る。苦笑したテールが角を大きな麻袋に入れ終る頃には、ポムによる他部位のベッカー家送りは終了していた。

 ちなみにテールのは普通の麻袋で、ポムのは共有済みの『無限袋』である。


「さて。そろそろ時間的にも頃合いだろう。今日の『冒険』は終了だ。街に戻る――前に、この雨は邪魔だな。北にでも流しておくか」


 さんざんこちらを濡らしてくれた雨をうんざりと見上げ、俺は魔力を編んで風で雨雲の進路を北に向けて促進させた。さっさと行って欲しいので、雲が消滅するまで北に走るよう設定しておく。無理やり山越えしたら北の砂漠あたりで消滅するだろう。それまで、せいぜい雨を降らすといい。北側は渇水で悩んでいると聞いたしな。


「じゃあ、余分な水はとっちゃいましょっか。は~い、スッキリ!」


 ラ・メールの声と同時に、ぐっしょりと濡れていた俺達の体が服ごと乾いた。文字通り『余分な水をとった』のだ。


「うふふ。今日一日でだいぶ遊んだわね~。明日も楽しみ!」

「……明日はつきあわんぞ、俺は」

「あら! 私達が羽目を外さないように見張るんじゃなかったの!? 放っておいてくれるなら、それでもいいけど? かわりに、川作ったり池作ったり沼作っても別にいいのよね?」

「いいわけあるか! 自重しろ!! 貴様は精霊王だろうが!」


 フラムの声に、ラ・メールはけらけら笑って手を振った。


「精霊王だから傍若無人で自由なんじゃないの~」


 フラムが顔を覆ってしまったのは、言うまでもない。





 世界には大陸がいくつかある。

 その中の一つ、ここラザネイト大陸は人族がいる陸地の中で最も大きい大陸だった。

 世界最大の大陸は俺の住むセラド大陸だが、あそこには人族はいない。人型の生命体は全て魔族と呼ばれる種族であり、それ以外には存在しないのだ。たまに、数名単位で紛れ込んでたり、街の片隅にこっそり隠れ住んでいることはあるらしいのだが。

 無論、そんな大陸に住む俺も、れっきとした魔族だ。


 今訪れているこの大陸には、セラドとは逆に魔族がほとんどいない。主に生活をしているのは人族で、街を作っているのも彼等だ。

 俺がこの大陸にいる理由は色々あるのだが、先程までやっていた戦闘も目的の一つではある。

 

 俺達の言うところの、変異種ヴァリアント

 人族が言うところの、魔物モンスター


 言葉こそ違うが、内容は同じ。自分の同族以外には敵対し、暴力を振るう高濃度魔素により変異した生き物達だ。

 何故か人族は、その魔物モンスターを魔族が操っているとか支配しているとか思い込んでいるようだが、俺達魔族にとっても魔物は敵であり食糧であり素材でしかない。

 操る? 獣使い(ビーストテイマー)とかならまだしも、そうでないなら発見・即・斬だ。


 この魔物が何に関わってくるかと言うと、『冒険者』という身分にかかわってくる。

 冒険者は、セラド大陸には無い人族独特の身分の一つだ。実際の職業や位を問わず、冒険者組合という組織に登録した有志で成り立っている。

 『冒険者』となる者の職や位がどれぐらい千差万別かというと、村人や貴族、国王や王子、勇者や巫女に、精霊王や次期魔王まで、といった有様だった。

 ……まぁ、最後のひとつは最近増えた職業で、誰あろう俺なんだがな。


 とはいえ、そういった『本当の職業』で冒険者組合に登録申請することは無い。冒険者組合に登録される職業は、最初は自己申告で行われるのだ。

 例えば俺は剣士で登録しているし、フラムは戦士、ラ・メールは神官、ポムに至っては執事だ。嘘をついて無いのはポムだけなのに、ポムの場違い感が半端無い。

 ちなみにテールの職業は『英雄』となっていた。目下、俺達のからかいのネタである。

 だが、これは別にテールが自分で申告したものでは無い。テールが最初に登録した職業は『戦士』なのだ。


 何故、そんなことが起こるのか。

 それは、冒険者組合ならではの公称採用制度がある。


 申告した『職業』は、周囲の認識や二つ名などで後から変化するのだ。かつて俺を殺した勇者は、戦士で登録していたが途中から勇者に変った。ある一定以上の知名度になった時に起こる変化で、これは自称している職業よりも優先される。本人がどれだけ戦士という職業に拘っていても駄目なのだ。

 なにしろ、職業名変化が起きるレベルになると、その名称を頼りに依頼に来る者も少なくない。そのため、自称職業よりも広く世に知られている二つ名等が採用されるのである。

 だから、テールは『英雄』なのだ。数百年にわたり、ふらりと現れては魔物の群れを薙ぎ払って人々を助ける奇跡の体現者として。

 ちなみに英雄と勇者の違いはよく分からない。魔王討伐の旅に出てるか否かとかだろうか……? 今度組合に聞いてみようかな。


「それにしてもこのカード……よく出来てますね~」


 馬車で街に帰りながら、ポムが自分の冒険者カードを眺めて呟く。

 冒険者カードは、冒険者組合に登録した時にもらえるカードだ。不思議な素材で出来ていて、さっくり鑑定した結果、希少金属であるヒヒイロカネの粉を混ぜた合成金属であることが判明した。

 初回発行は登録料とセットで銀貨一枚。

 ただし、紛失して再発行となると金貨五枚必要になる。ヒヒイロカネの希少性を考えれば、まぁ、そんなものだろう。


 このカードには、組合で登録された情報の一部が刻まれている。それだけでは無く、登録してから後の行動によって、得た経験が数値に換算されて記載されるのだ。

 例えば俺の向かい側で憤然と座っているフラムはというと、初日を終えた現在はこんな風に表示されている。


 ・フラム  性別:男 種族:―― 年齢:――

       職業:戦士(F)

       所属:アステリズム(F)

       魔物討伐数:561

       武技経験値:1891

       魔法経験値:0


 ……今日一日で五百六十一体も倒してたのか……確かに先頭切って戦ってたもんな……ラ・メールにからかわれるわけだ。

 ちなみに種族や年齢は任意登録となっている。登録しなくても未登録として処理してくれるのだ。

 ……種族:精霊、だなんて書けないもんな。年齢なんてもっての外だ。

 なので、この大陸にいる間は、俺たちは全員『人間』ということになっている。ふふふ。この俺が人間を名乗ることになるとはな! ルカが育ったらルカもパーティーに引き込もう。伝説のチームを作るのだ。主に俺の趣味的な意味で。


 職業と所属の横についている『F』は、冒険者ランクのことで、今日登録したばかりの俺達だと最低ランクかつ初期ランクの『F』になる。

 所属はパーティー名で、傭兵の部隊名に近いものがあり、これも今日作ったばかりのため『F』となっていた。ひとり、個人ランクが振り切れてるテールという『英雄』がいるが、他の全員が『F』なので初期から上位ランク、ということにはならない。そこまで甘くは無いということなのだろう。


 ちなみに依頼はパーティーの場合パーティーランクを基準にして受けれるレベルを制限されるので、俺達と一緒のパーティーで動く場合、テールも俺達が受けれるレベルの依頼しか出来ない縛りになる。そのため、最初はテール以外の皆でパーティーを組もうとしていたのだが、テールが寂しがったので皆で一纏まりになることにしたのだ。

 ふふふ。テールは寂しがり屋さんだな! 仕方がない。今度俺が盛大に構い倒してやろうじゃないか。赤ん坊の姿でな!


 なお、ランクを上げるためには依頼をこなして点数を稼ぐ必要があり、これは個人のランクに振り込まれる。討伐系や納品系依頼の場合、納品物を係員に渡す者が一番多く点数を手に入れ、残りのパーティーメンバーはそれより低い点数を一律で貰う形になっていた。テールが納品について俺達から渡させたがっていたのはそのためだ。


 ちなみにパーティーのランクは所属メンバーの個人ランクの平均で決まるため、全員がほどよくランクアップしたほうがパーティーランクは上がりやすい。

 パーティーランクが上がればその分危険度の高い依頼を受けられる。討伐系が目当てな俺達にとっては、パーティーランクは早めに上がった方がいいのだが、納品個数上限の無い下位討伐系でも数をこなせばランクアップするのだから、慌てる必要は無いと思っている。

 なにせ、先程のフラムの討伐数が五百六十一である。これは、個人で倒した数である。

 張り切っていたラ・メールも五百代の討伐数。二人で千以上の魔物を倒しているということだ。

 つまり、最低でも千以上の討伐証明部位が手に入っている。

 急ぐ必要は無い。

 数の暴力で爆上げすればいいだけなのだ。


「さて、そろそろ街ですね。坊ちゃん、フード被ってもらえます?」


 冒険者カードを弄んでいた俺に、馬車を操るポムが声をかけてくる。

 俺は内心のため息を押し殺して外套のフードを被った。どういう理由かは知らないが、俺が顔を晒して歩くと周り中で停止魔法が発動するらしいのだ。

 ……俺は別に魔法を使ってはいないのだが。


「いっそ俺も全身鎧にするべきだったかな……」

「ああ、姿を隠したい時にはいいかもしれませんねぇ。まぁ、大人バージョンで動く時には全身鎧で行くといいですよ。あっちはより凶悪ですから」


 どういう意味だ。


「まぁ、あの(・・)レディオンはねぇ……正直、私も公開するのは躊躇うレベルだわ」

「精霊王さん達だけでも相当なものがありますからね~。目立つのが目的ならいいんですが、そうじゃないなら隠しておくほうがいいでしょう。今の坊ちゃんでも冗談事ではない状態ですし。坊ちゃん用に仮面を用意するのもいいかもしれませんね。夜会マスクとかでいいです?」


 ヤだよ! なんでそんな奇天烈な姿を薦めるんだよ!! おまえは俺をどうしたいの!?

 それにしても大人の俺は凶悪な姿をしているのか……だから皆、俺が大きくなったら拝んだりしてるんだろうか……やだ、俺、どれだけ酷い外見になってるの……? 恐怖の大魔王的な外見なの? いや、魔王にはなるんだけど……

 人知れずしょんぼりしている俺に、フラムが微妙な表情で言う。


「……人族はおまえのような存在に対して、特殊な感情を抱きやすいというだけだ。面倒事を避ける為の措置であるだけだから、悩むのはよすがいい」


 フラム! いい奴だな!! 嫌々俺達に連行されてるのに、この態度!

 ポム! お前も見習うといい!!


「駄目ですよ、フラムさん。うちの坊ちゃんを口説くのは禁止事項なんですから」

「まぁ! フラム!! あなた、あれだけ渋っておきながら……」

「誰も口説いておらん!! テール! 貴様も無言で剣を抜くな!!」


 ……速攻で遊ばれてるな……。ポムの悪い笑みが輝く輝く。存在感ないくせに、なんでこういう時は誰よりも目立つのだろうか……


「ポムの戯言はともかく、もう街門が見えてきた。おまえ達、本性はバレないように注意しろよ。一応、俺達は普通の、ごく一般的な冒険者なんだから」


 誰もが生暖かい微笑みを浮かべるのを故意に無視して、俺は視線を街に固定する。

 古びた外壁をもつ港街ロルカン。

 人族の大陸における、俺の第一拠点。


 やがてとある理由により、その街がヘルトシュタットと呼ばれるようになることを、この時の俺達は知る由も無かった。



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