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メビウス・クラウン ~あなたに至る為の物語~  作者: 野久保 好乃
――mission 3 金策 ―貿易開始―
22/196

20 第一回大規模輸出計画<農園稼働>



 生後八ヶ月を迎えた。


 根性を出しても全力で祈っても、俺の歯は前歯しか生えてくれなかった。他の成長と違い、歯に関してだけは普通の赤ん坊と同じ速度でしか成長しないようだ。

 しかし、魔力で疑似歯を作れる俺にはある意味関係ないと言える。

 そう、鏡の中の俺がとても可哀そうな顔をしているだけだ。前歯だけのビーバーになっているだけなのだ。

 ……カルシウム量……もっともっと増やそうかな……


 しかし、俺のことよりも大事なことがある。当然、俺の愛するルカのことだ。

 ルカの夜泣きが収まったのだ。

 かわりに人見知りしはじめた。

 この前なんかポムを見て物凄い泣いていた。この存在感の薄い男の何が怖かったのかは不明だが。というか、前から何度か会っているのに、もう忘れられてしまったのだろうか……ポムが地味に不憫だ……

 流石に可哀そうだったので、きっと世界最高の密偵になれるスキルを標準装備しているんだよと慰めておいた。なにせ精霊王ですら察知できないレベルだからな。

 ……こいつがもし暗殺者になったら、たぶん俺でも防げない気がする……

 ポムとはいい関係を築いておこう。そうしよう。


 ルカの夜泣きが収まったことで、俺とルカのベッドインも昨晩で終了した。

 最近ずっと暖かいルカと一緒に寝ていたので、今日からまたひとり寝だと思うとちょっと寂しい。久しぶりに父様のベッドにもぐりこもうかな……

 だが、寂しがり屋の俺に対し、ルカはとても素晴らしい置き土産を残してくれた。

 俺にとって感動の成長を見せてくれたのだ。


 今朝、ルカが喋ったのである。


 勿論、俺のようにぺらぺら喋っているわけではない。だが、ただ声を出しているだけでなくちゃんと意味をもつ言葉をしゃべったのだ。「れでぃお」と。

 そう! 俺の名前である。

 他の誰の名でもなく、まず俺の名前である!!

 感動した。泣きそうだった。俺はこいつを幸せにしようと心に誓った。おお、ルカよ、思い出をありがとう、ありがとう。この記憶だけで今日の孤独な夜を乗り切れそうだよ。にやにや。

 ちゃんと「レディオン」と言えてないが、そんなことは些細なことだ。あまりの喜びに舞い上がっていたら、ポムに「坊ちゃんのそういうところは、旦那様にそっくりですね……」と微笑まれてしまった。俺は即座に落ち着いた。


 しかし「まま」でも「くろえ」でもなく、まず「れでぃお」なのか。

 ふふふ。ルカも俺を愛してくれているようだな。相思相愛というやつだ。でも次はクロエの名前を呼んでやった方がいいと思うぞ。「まーま」でもいいから。なにしろもの凄い苦笑されたからな。うん。……わりとすまん……



 そういえば、そろそろ開墾しておいた畑が本格稼働する頃だ。

 俺自身は見に行けないが、一段落した頃には報告に来てくれる存在がいる。俺との契約をつかって現界している大地の精霊王テールだ。

 なんとなく、来るとしたら今日あたりだろう、という気がした。俺のこういう予想は当たるのだ。

 楽しみだなぁ。





 グランシャリオ家が所有する土地は、セラド大陸北西部にある。中央部との境界となっている大森林より北の土地は、ほぼ父様の持ち物といっていいだろう。勿論、開墾あるいは開拓されていない部分に関しては父様に所有権は無い。だが、付近一帯の土地を持つ大領主ということもあって、北西部で大規模な開墾や開拓を行う者は必ず父様の元に許可を求めるのが普通だった。

 無論、息子である俺も、まず父様に許可を求めることになる。

 俺が生まれた時に父様から譲られた土地は、家から馬を二時間ぐらい走らせた所にある。すぐ北に森林もあり、自然豊かな場所だ。森の中には変異種が沸きやすいが、同時に食物系資源の宝庫でもある。父様としては、俺が大きくなったら狩り等で遊ぶ為にその土地を選んだのだろう。

 俺は速攻で畑を作りましたがね。


 森林はそのままにおいているが、貰った土地は全て畑にした。小麦畑だ。

 個人的には芋を植えたかったが、土地がそこそこ良かったので小麦に変えた。小麦は主食にもなるし販売ルートも多いしで大量生産に向いている。なにせ需要が高いからな。

 だが、それだけで終わる気はない。蕎麦、馬鈴薯ポテト甘藷クマラ等の畑も順次作って行く予定だ。いざという時の飢饉対策にもなる優れものだからな。


 我が家の近くにある土地は平野が多い。もう少し北に行くと山が増えるが、そこを開墾するよりも、手を入れてない荒野を開拓する方が先だろう。

 ちなみに開拓地交渉はあっさりと終わった。まぁ、親子だからな。

 一歳にもならない息子が大規模開拓に乗り出している、という部分には思うところがあるようだが、相変わらずの親馬鹿ぶりで快諾してくれた。「成長著しい」どころじゃない俺を不気味がる様子が無いあたり、我が父は俺が思った以上に鋼の精神をしているらしい。

 ちなみに母様はオリハルコンの精神だ。

 ……前世の母はあんなに優柔不断だったのにな……


 父様に許可をもらったので、用水路作成中のゴーレムに加えて新たに岩ゴーレムを作成しようと庭に向かった所でポムの声が聞こえた。あの間延びした「ぼっちゃ~ん」の声はポム以外にありえない。

 ……考えたら、俺を「坊ちゃん」呼びするの、あいつだけだな……まぁ、別にいいんだが。


「坊ちゃん! お客様ですよー!」


 おっと。どうやらテールが来たらしい。珍しく玄関から来たようだ。精霊王なのだからいつものようにこっそり現界すればいいものを。

 ……というか、隠れてないと騒ぎにならないか? 精霊王来訪とか。

 一抹の不安を覚えながら、俺は玄関へと直行した。




 騒ぎになっていた。

 ただし、俺の想像していなかった方向で。


「なんだこれは……」


 玄関ホールの状況に、俺は目を丸くする。

 山のような麻袋があった。心なしか玄関が粉っぽい。

 その山の傍らには、小麦色の肌をした長身の老紳士。金とも銀ともつかない色の髪を綺麗に整え、背筋を伸ばして立っている姿は服と相まって貫禄ある老執事のように見える。我が家の執事達が子供に見えるほどだ。

 体格はかなり良い。細マッチョというやつだろう。どっしりとした姿には風格がある。

 ……正直、父様より貫禄あるんじゃないだろうか、この老執事。


「おお、おいでになりましたな」


 その老執事が俺を見つけて相好を崩した。皺の刻まれた顔は若いころはさぞかし美形だったろうと思われるもので、口元の髭も非常に上品だ。

 ……だがしかし、その顔に見覚えは……

 ……いや、まて……あるぞ、この顔は。というか、この声も。

 ……あれ、だが待て、明らかにサイズが違う。あと、マッチョ率も違う。縦も横もサイズが違う。俺の知っている奴は、はち切れんばかりの筋肉をした巨大な男であって――


「……。……テール?」

「いかにも。御久しゅうございますなぁ」


 うそん!?

 あのダイナマイト・ムキムキマッスルが何で細マッチョになってるの!?

 肉厚があまりにも違うだろ!? どこにあの肉襦袢を置いてきた! 俺に寄越せよ!!


「……坊ちゃん……とりあえず先にこの荷物を仕分けしませんかね」


 うお!? ポム、いつの間に俺の横に来た!?

 相変わらず気配を消して俺に近づくのはよすんだ! 消したつもり無いかもしれないが!

 というか、荷物って……ああ、あの大袋の山か。まさか……いや、でも畑作りだしてからまだ数か月だぞ……。そしてポムよ。いじけて床に座り込むのはよせ。

 訝しげに袋の山を見ている俺の横で、ポムが目に見えて落ち込んでいた。


「ずっと一緒にここまで来たじゃないですか……呼びに行ったの私ですのに……」


 ……そうだったろうか……いや、そういや、そうだったな。うん。

 すまんな。本気で存在感知してなかったよ。うん。

 ……今度、首に鈴つけてみない?


「とりあえず、荷を運んでおきましょう。玄関に入りきらない量、ありますのでな」


 細マッチョ老執事バージョンのテールがにこやかに言う。

 俺はポムと顔を見合わせ、ポムに目で指示する。


「それでしたら、収納する為の袋を持って来ますので、そちらへの搬入をお願いします」


 屋敷一軒分の収納スペースをもつ『連結無限袋』は、テールが持って来た大量の袋をあっさりと収めきったのだった。





 グランシャリオ家、二階、俺の部屋。

 大きなクッションがいくつも置かれたそこには、三名の男がいた。クッションを尻に敷いて座っているのが二名と、後ろに立っているのが一名だ。


「で、アレ、なんだったんだ?」


 人間バージョンのテールと向かい合った状態で、俺は先程の山の如き袋を暗に示して問うた。

 テールはポムが用意してくれた魔石を手にとりながらニヤリと笑う。

 ……ヒトの悪い笑みだな……


「小麦ですぞ。どんなものがどれだけ採れるか試したくなりましてのぅ。一度成長させて収穫してみた結果、というところですわ」


 いや、ですわ、って……


「きちんと土地改良も施し、今は二作目が植わっておりますのでの。計画に支障はありますまい」

「おや。ではあの小麦は、思いがけない収益になるのでは?」

「ま。儂から新たなる魔王殿へのささやかな贈り物といったところですな。ちなみにこの魔石、いただいても?」


 どうぞ、と言うポムの声にほくほく顔で魔石を口に運ぶテール。なんと丸飲みにして吸収してしまった。精霊族が魔石等の魔力を食するのは知っていたが、石まで食べるのは初めて見たな。

 まぁ、テールは大地の精霊だし、そういうものなのかもしれないが。


「しかし、手を貸していただけるのは知っていましたが、ここまでしていただけるとは……」


 御茶請けのかわりに魔石を追加しながら、ポムが感嘆の声を零す。

 まぁ、普通、精霊王が自ら農場を手伝ってくれたりしないもんな。


「なに。こちらの世界に来るのに、レディオン殿には世話になっておりますのでな。儂自身の興味本位でやったことでもありますし、逆にいらんことをするなと言われる可能性も考慮しておりましたが……まぁ、怒られずにすみそうですのぅ」


 テールは好々爺の顔で笑う。いつものパツパツマッスルボディのマッチョ爺ではなく、品の良い老執事の姿なので、妙にうちの屋敷に溶け込んでしまっていた。おかしい。ついでに言うと、なんかポムと仲がいい。なんでだ。


「しかし、流石はレディオン殿ですのぅ。まさか空間連結術まで使われるとは」

「あー、あれビックリですよね。一応、ラザネイト大陸にもう一つの袋を送っているところなんですよ。そろそろ着いた頃でしょうかねぇ……」

「ほほぅ。では、輸出入はソレを使う予定ですかの」

「今の所はその予定ですねぇ。ちなみに転移装置まで坊ちゃんがお作りになってますよ」

「なんと! あの技術を復活させるとは……」

「グランシャリオ家の蔵書の中に時空間系の書籍が多いのは知っていましたが、赤子が使うとは思いもしませんでしたよ」

「成長の速さも目を瞠るものがありますしのぅ。流石は魔力の宰と言ったところですかな」

「ああ、やっぱりそっち方面ですか。まぁ、これだけ生まれながらに異端であれば、どちらかの可能性が高いですよねぇ」


 ……なんか、本当、やたらと話が合ってるな。

 というか、そっち方面とか、どっち方面の話なんだ。もう少し、俺に分かるように話してくれてもいいのよ?

 ……それにしても、うちの蔵書、時空関係多いのか。俺のは前世の知識なんだが、いい言い訳ができたな。


「ところで、畑の感じはいかがでしたか?」


 ポムの問いに、テールは顎を摩りながら「なかなか良い感じでしたな」と答える。

 実際に魔法を使って麦を育成してみたところ、特別な何かがあるわけではないが、疫病や害虫の発生などのトラブルも無く、風土病の恐れも無いらしい。

 風土病はわりと洒落にならないから、大地の精霊王お墨付きだと大変安心できるな。


「ひとまず、儂の仕事は終ったでしょうな」


 一仕事やり終えた男の顔で言うテールに、俺は頷いた。


「うん。ありがとう、テール。……お礼は、魔力でいいのか?」


 俺の声にテールは頷くが、俺としてはなんだか納得がいかない。フラムやラ・メールも魔力で協力してくれたが、テールの労力とあのふたりの労力では圧倒的にテールの方が多い。なのに同じでいいのか。――どう考えても良くないだろう。


「テール。世話になっているのに、本当にこれだけでいいのか?」

「これだけ、と申されましてものぅ……あまり理解していないようですが、レディオン殿、これほどの魔力を分け与えてもらえるというのは、こちら側にとっては相当な報酬なのですよ」


 ……そんなものだろうか。俺としては多少減ったところでどうということのない魔力なのだが。なにしろ随時自己回復するし。

 そんなことを思っていたら、テールが真面目な顔で言った。


「レディオン殿。少しは、ご自身の資質を正しく理解なされよ。貰っている身で言うのはなんですが、そうホイホイと魔力を分け与えてはなりませんぞ」

「だが、これぐらいなら、たいして減ったうちに入らないぞ」

「高品質の強い魔力というのは、我々アストラル・サイドの生き物にとっては世界最高峰の宝。我々のような存在だけでなく、魔力を有する者なら喉から手が出るほど欲しいものです。気軽に分け与えるというよりは、いざという時の取引材料として価値をあげておきなされ」


 そんなものなのだろうか。

 チラ、とポムを見ると、存在感に反比例して知識量の膨大な執事はコックリと頷いた。


「普通に考えて、魔王レベルの魔力を貰えるのって、相当希少な事ですよ」

「精霊族の秘宝と同等レベルの貴重さですな」


 そういうものなのか。

 まぁ、俺も現魔王の魔力を貰えるって聞いたら、ちょっとフワフワするから、他から見るとそんな感じなのかもしれないな。


「次からは、そうですな……魔石とかで遣り取りするのもいいかもしれませんな。ご自身で作るのでもいいでしょうし、購入したものを与えるとかでもいいでしょう。我々精霊族も綺麗なものや力あるものは好みますし、魔石なら力を取り込むこともできますしな」


 魔石であれば、品質を自分でもチェックできる。

 自覚の無い俺の魔力を配るよりは良いということだろう。


「それに、儂はこちらの世界に来るのにレディオン殿にちィっと借りを作っておりますので、まぁ、儂に関しては貸し借りをあまり気にする必要もありますまい」

「あ、それについて、少し話があるんだ」


 俺の声に、おや、とテールは片眉をあげる。

 そんなテールに、俺は変異種ヴァリアント狩りについての依頼をしてみた。

 曰く、いい素材や肉が手に入ったら加工したり人族に売りたいから譲ってくれないか、というものだ。

 勿論、ただで寄越せとは言わない。先の話を鑑みて、魔石と交換という形で。


「かまいませんぞ。儂は単なる害獣駆除でやっとるだけですし、遺骸の処理は正直儂にとっても少々頭を悩ましていることでしたしな」


 聞けば、テールが一狩りしたがっていたのは、大地に生きる無辜の民の生活を守るためらしい。

 変異種ヴァリアントは世界の営みから外れた場所に存在する者。それらに脅かされて土地に住む者が滅んだ結果、土地そのものも汚染されたり荒れたりする。それは、大地の王であるテールにとっては見過ごせないことなのだ。


「さすがに、食えない、使えない、というやつの死体はいらないからな?」

「分かっておりますぞ。これでも儂の冒険者歴は長いですからのぅ。……まぁ、一年活動して二十年休むレベルの活動ではありますが」


 まぁ、契約を伝って現界できなければこっちに来れないんだし、そうなるよな。

 というか、冒険者歴……テールってば、冒険者組合に所属していたのか。

 ……何百年経っても死亡表示されない冒険者カードって、どういう扱いされてるんだろうな……


「とりあえず、農園の稼働は順調ですので、儂は変異種狩りに移行させてもらいましょう。後はレディオン殿のゴーレム達が上手く運営してくれるでしょう。収穫や水遣りを見てみましたが、なかなか手際も良かったですぞ。もっとも、不測の事態というのもいつ起こるか分かりませんから、監督はつけたほうが良いでしょう」


 そうだな。与えられた命令は忠実にこなすが、ゴーレムには思考能力が無いのが普通だしな。組み込まれた命令に無いような、想定外の事態が起きった時は対応できずにそのままになるだろう。

 農業監督か……だとすれば、話を持っていくのは、やはりあの家だろうな。


「分かった。考えておく」

「むふふ。人の子のような生活も、なかなか楽しかったですぞ。……それと、しばらく会わなかった分、レディオン殿の成長っぷりも見れましたしな」

「なにか変ったか?」

「まぁ、いろいろ変わっておりますが……言葉とかもそうですな。前よりしっかりしておられますので、いずれ儂を召喚する魔法なぞも使えそうですな」


 言われて、俺はちょっと笑った。

 俺の声はまだ甲高い赤ん坊の声なのだが、確かに発音は前より良くなった気がする。まだまだまるまっちぃ声なのには変わりないが、聞き取りやすくはなっているのだろう。


「フラムは俺と契約するのを嫌がってるみたいだが、テールはそうでもないんだな」

「フラムは心配性なのですよ。一族のことを一番に考えておりますので。レディオン殿を嫌っているわけではありますまい」


 なにしろ名前を教えているようですし、と悪戯っぽい顔で言われたが、そういうものなのだろうか。

 まぁ、嫌われてたら名前すら教えてもらえないか。もっとも、その名前もなかなか教えてはもらえなかったがな。


「では、そろそろ私は行きましょう」

「あ、それでしたら、これをお持ちください」


 腰を上げたテールに、ポムが声をかける。

 手にもっているのは巾着型の『無限袋』だ。ちなみに連結済みだが、貿易用のものとはリンクさせてない別物だ。


「変異種素材用の『連結無限袋』です。獲物が獲れましたらこちらへ。中では時空魔法が作用しますので、腐敗等に関しては考えなくても大丈夫です。ただ、生き物は仮死状態になりますので、不測の事態が起きても大丈夫なもの以外は入れないでください」

「了解した」


 頷いてテールはそれを受け取る。

 ちなみに連結している片側の袋は、某転移装置近くの部屋に設置してある。まだ二つ目だが、収集所として機能しつつある部屋だ。

 農場の方も、監督が出来たら農場と収集所を繋ぐための袋を渡す予定だ。今の所リングは確保できているから、一次保管庫かつ輸送としてフル活用させてもらおう。


 それにしても、第一弾の小麦輸出が早々に出来てしまったことになるのか……

 最初の計画では薔薇商品で実績を積んでから、販売ルート確保に動く予定だったのだが……少し変更しないといけないな。


 何故か人型のまま玄関から出ていくテールを見送りながら、俺は早々と予定が変わってしまった貿易計画の見直しについてポムと相談することにした。

 稼働まで面倒を見てくれたテールの恩に報いる為にも、しっかり成功させたいしな。

 ただ、去り際にテールが一つ気になることを言っていた。


「農場には直接関係ありませなんだが、この近辺の大地に奇妙な呪いが息づいておりましたので、こちらで消し飛ばしておきましたぞ。なにやら三か月程前にも似たような波動を感じましたが……一つ、身辺には気を付けておいたほうがよろしいかと」


 ……フラムといい、精霊王はなにかしら気になる発言をしていってくれるらしい……

 まぁ、こちらは分かりやすい助言だし、俺には明確な未来の敵がいるから、ある意味有難い置き土産ではあるかな。

 ……しかし、奇妙な呪いか……

 三か月ほど前、という言葉に胸騒ぎを覚える。

 大掛かりな調査隊まで組まれたヴェステン村の事件については、まだ詳しい報告が入ってこない。父様に尋ねてもはっきりとした話しは聞けなかった。犯人も見つかってはいないようだ。

 俺自身が自分で確認したり調査が出来ない分、なんとも言えない奇妙な不安が消えないのはどうしようもない。

 とりあえず、猛毒大蛙ポワゾンモルテル・フロッグAMアノルマル・モンストルに関しては、現魔王が預かってくれているらしい。そちらに関しては安心していいだろう。

 どうにもならないジレンマを感じながら、ポムとの打ち合わせを終えた俺はルカと遊び倒してからひとりきりの布団に入った。

 そう、今日からまたひとりきりのベッドなのだ。ルカの温もりが恋しい。

 明日は父様の布団に潜り込もう。そんなことを考えながら、眠りについた。





 ――そうして、夢を見た。








●レディオン・グランシャリオ

年齢:生後八ヶ月

身体能力:一人歩き可能。階段の一段飛ばし可能。ジャンプ可能。

     駆け足可能。壁登り可能(降りれない)。

     『気配遮断』『隠密』『魔道具作成能力 (マスタークラス)』

     『錬成能力(上級)』

     前歯だけ生えた。

物理攻撃力:高

物理防御力:高

精神力:身内には弱い・外部には強い

魔法:精霊魔法 (マスタークラス)・種族魔法(中級)・黒魔法(上級)

   白魔法(上級)・時空魔法 (マスタークラス)

   血統魔法・【光天】雷の章(??)

   魔力制御 (マスタークラス)・魔力操作 (マスタークラス)

   魔力具現化(中級)

魔法攻撃力:高

魔法防御力:高

魔力:極上・膨大

魔力親和度:高

言語:喋れる

称号:『呪いの子』『次代の魔王』『魔力の宰』『精霊の愛し子』

   『精霊王の同盟者』『変な魔法趣味』『日常が黒歴史』

   『変異種(ヴァリアント)博士』『■■■』『□□□』

   『フラグクラッシャー』『死を司る者』『料理人』

   『ラビットキラー』『貿易主』『クリエイター』

備考:\髪の毛については言及するな/

   『幼馴染と相思相愛』『俺の愛する幼馴染(♂)が可愛すぎる件』

   『大地の精霊王との絆』『水の精霊王との絆』『炎の精霊王との絆』

   『炎の縁』『俺の移動手段がオカシイ件』『変な男との絆』

   『炎鉄のナイフ』『炎の精霊王召喚石』『領地 (農園)』

   マッチョは男の浪漫



(※上記はあくまでキャラクターデータとなります。実際の赤ん坊の成長速度とは違う旨、ご了承くださいますようよろしくお願いいたします)

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