23 loup-garou
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伏せていたソレが身を起こすと、人間の大人の三倍以上高い長身なのがわかった。
遠くの音を聞き逃さない耳はピンと立ち、獲物を捕らえた目がゆっくりと細まる。裂けるように笑む口には鋭い牙が並び、突き出した鼻がこちらをかぎ取るようにヒクヒクと動いていた。
狼男。
狼の変異種と人族が融合した異常な化け物だ。
「速度特化型!」
俺は叫んだ。【神眼】が敵の危険性を訴えてくる。俺が一番苦手なタイプの敵だ。
俺の声が最後の音を出した時には狼男はすでに母様の真横に移動してきていた。
あの巨体で、とてつもない速さ。
父様の剣が振り下ろされた爪を弾き飛ばし、切り込む。だがその時にはすでに剣の範囲にはいない。
「【真――ちっ!」
唱えかけた即死魔法を阻むように、瞬きよりも早く俺に急接近した狼男の腕が振るわれる。咄嗟に魔力障壁を張り、雷撃をくらわそうとしたがそれも避けられた。
【万有縛檻】
どうやって狼男の出現場所を特定したのか、サリの魔法が発動する。だが黒い檻に囚われる前にその巨体が消えた。
「くそっ! なんだこの速さ!」
「後ろだ!」
「ちィッ!」
ロベルトが間一髪で爪を避け、そこに父様の雷撃が走ったがこれも避けられた。
「術が発動しても逃げられるか」
「…………」
忌々しそうに吐き捨てる父様の後ろ、母様が何かを考え込む顔をしていた。そして唱える。
【大地よ踊れ】
突然足元が大きく突き出されるような感覚がした。氷河が大きな音をたてて揺れ、崩れる。氷河の下、海のさらに下にある地面が大きく震えた結果だ。
さすがの狼男もこれは防げない。大きくバランスを崩したところに、一瞬で間合いを詰めたロベルトとサリの剣が殺到した。
「ガァアアアアアッ!」
咆哮があがり、血しぶきが散った。そこへ父様の血統魔法が降り注ぐ。
「逃げるか……!」
腕一本を犠牲に避けた狼男が母様を睨む。だがその体が傾ぎ、すぐに下に沈んだ。
「父様! もう一度!」
俺の声が聞こえるか否かといった速さで再度巨大な雷が天と地を繋いだ。
「レディオン、今のは!?」
「逃げるだろう先の氷を溶かした」
「……なるほどな」
狙われがちな母様の前で身構えるロベルトが、俺の返答に納得した声をあげた。
「まだ死んでない! 来るぞ!」
俺の警告とほぼ同時、巨大な水たまりになっていた場所から、焼けこげながらもびしょ濡れの狼男が飛び出してくる。
「させるか!」
母様への一撃を父様が剣で受けきり、その背後に現れたサリが足の腱を切りつける。間一髪で横に飛んで避けた足元が再度沈む。だが沈み切る前に四つ足状態になった狼男が全身を使って俺の方に飛び込んで来た。
「待ってたぞ!」
俺は剣で受けると同時に編んでいた魔法を狼男に叩き込む。
「ガッ!? ―――――ッ!!」
剣が触れた爪を中心に、狼男の腕が泥のように溶け、骨がむき出しになった。
「――っ!」
その足に後ろから無言でサリが深く切り込む。振り返ろうとする狼男の斜めからロベルトの剣が突き立てられた。ロベルトの口が呪文を唱える。
【暴騒!】
狼男の体内で魔力が爆発した。狼男の右足が爆発によって吹き飛び、崩れたその首元にサリが大きく切りつける
「ギャゥアアアアアッ!」
狼男が滅茶苦茶に暴れはじめた。自身に近づけないように腕を振り回す。
そこへ俺の魔法が襲い掛かった。
【真死】
魔力で繋がった狼男の心臓が動きを止める。だが、俺には倒したという感覚は無かった。だから剣を大きく振りかぶり、跳躍してその首を完全に断つ。
「レディオン?」
その一連の動きにロベルトが不思議そうな声をあげた。俺は血を払いながら言う。
「狼男には超回復の能力がある。完全に心臓を止めても、また息を吹き返す」
「化け物だな……」
「異常な化け物はたいていこんな化け物だ」
動きさえ止まってしまえばなんとかなるが、俺ではあの速度に追いつき切りつけることは出来ない。だから相手の攻撃を受けることを前提に腐食の魔法を剣に纏わせていたし、足止めに力を注いでいた。素の攻撃で動きについていけるのはサリとロベルトぐらいなものだろう。
「あれは軍には無理な相手だな」
俺と同じ脅威を抱いたのか、サリがそんなことを言う。俺は頷いた。
「とてもじゃないが、任せるのは無理だ。俺も一人だと危ういな」
「レディオンが?」
「速度特化型とやり合うなら、周り一面破壊するぐらいの魔法でないと倒せない。それでも逃げられる可能性が高いけどな」
「意外だな。速度強化魔法を使って魔力で殴るぐらいはするかと思ったんだが」
「あのな、サリ。俺にだって天敵や勝てないことはないけど負傷する敵ってのはいるんだぞ?」
「大人版になっても勝ちにくいか?」
「む……いや、それでも負傷度は高いだろう。ひたすらカウンター技を叩き込んで、相手が息切れしたところを倒すのがせいぜいだ」
「意外な弱点だな」
「いずれ克服しないといけないんだけどな……」
前世も速度特化型物理攻撃の勇者に翻弄させられたのだ。今世はそうならないよう鍛えたい。
「初めて会ったけど、人狼ってえらい強いんだな。人狼の伝承はあちこちにあったけど、全部あんな化け物なのか?」
ロベルトがため息をつきながら言う。俺は首を傾げた。
「狼男は特殊な融合型変異種だから、只人が言う人狼とは違うんじゃないかな」
「そうなのか?」
「ロベルト。ラザネイト大陸の人里で噂される人狼というのは、狼人族のことだ。獣人族の一つだな」
サリの情報にロベルトは納得顔になる。と同時にちょっと顔がしかんだ。
「もしかして、人狼って言葉、蔑視してるやつ?」
「人族は自分達以外の人種を蔑視しやすいからな」
サリが肩をすくめてみせた。七百年前も同じような蔑視はあったのだろう。
俺はため息をこぼす。
「獣人族は可愛いのが多いんだけどな」
ラクーン族とかな!
「そうだな。獣人族って、二本足になった獣っぽくてケモケモしいから可愛いよな」
「ケモケモしいって、分かるけど、すごい言葉だな」
「あのふわっふわな毛を撫でたいけど、きっと失礼にあたるんだろうなぁ……」
「ああ……その気持ちはわかる」
揺れるふわっふわな尻尾とか見たらモフりたくなるよな。
ちなみに、ラクーン族と抱きしめ合った時は至福でした。
「死体でよければ、狼男の毛皮がそこにあるぞ」
「いや、死体をモフるのはちょっと……」
サリがデカイ狼男の死体を指して言う。あまりにも大きいものだから案山子が大変そうにしていた。
「さて。階層主らしき敵は倒したが、階段が無いな?」
サリが周囲を見渡して言う。
俺達は一斉にロベルトを見た。
ロベルトの顔がひきつっている。
「……俺に意見求めるのどうかと思うんだけど?」
「ロベルトの予想だとどこらへんにあると思う?」
「最初にいた場所付近じゃね? ――って、それ確認しに走るのかよ!?」
ロベルトの言に残る全員で狼男が伏せていた場所に駆けつける。
あったし。
「流石ロベルト」
「ついに個人名になりやがった……」
いやだって、勇者だから、っていうより、ロベルトだから、だろ、コレ。
狼男が伏せていた場所は他の場所より少し低く、そのせいでパッと見た時に階段の入口が見えなかったのだ。
……まぁ、母様の魔法であちこちがだいぶデコボコになってるから、余計に見えなかったっていうのが正しいけど。
「予想の範囲内だろ、こんなの。前の火山だって、階層主がいただろう場所にあったんだから」
「そうかもしれないが、そんなに謙遜することもないだろ? ――とりあえず、階段も見つかったことだし、先に進むか?」
「その前に休憩だな」
いつの間にか落ちきっている砂時計を指してサリが言う。確かにそろそろお腹がすいてくる時間だ。
「基地はこちら側にも作るのか?」
「いや、強い階層主がいる場所なら、作るのはやめておいたほうがいいかな、と。前に作ったやつは要塞化すれば集団戦ができていいかもしれないけど」
「さっきのやつは確かに危険だな。ということは、雪山側に作るわけか」
「そうなる。――まぁ、次の階層主は狼男じゃない可能性高いけど」
「変異と融合の確率か」
「そう。人族を呼び寄せしてから融合させるのにどれだけ時間がかかるか、だな。そもそも、こっちの大陸に人族ってほぼいないし」
全員の視線がロベルトに向く。現在唯一の人族であるロベルトの顔が引きつった。
「その呼び寄せってやつ、拒否できねぇの?」
「さぁ? 呼び寄せられたことがないから分からん」
「そうだよなぁ……」
「まぁ、狼男になる前の狼の変異種なら、ロベルトなら余裕で勝てるだろ。引き寄せられてもなんとかなりそう」
「呼び寄せられることが確定みたいに言うな」
あっこめかみグリグリはおやめくださいっ。
「このダンジョンが、いつの時代のどこの大陸から人族を拉致したのか、分からないからお前が心配なんだって」
「それで言ったら、今度来る正妃さんとかもヤバイじゃねーか」
「そうなんだよなぁ……一応、俺が何か魔道具作っておくよ」
「俺にも」
「ちゃんと作るって。でもロベルトの場合、魔族になるから不要になる日も近いぞ」
「まぁ、そうなんだが……」
こめかみグリグリの刑から抜け出し、俺はポーチから大きなパンの塊を出す。
「とりあえず、各自腹ごなしをしてちょっと休もう。階層主が倒されてすぐに次の階層主が呼び寄せられるわけじゃなさそうだし、六層の探索も軍に丸投げすればいいだろう」
「残る判明している階層は次の七層の雪山だけか。八層以降もあるようなら、それも確認したいな」
「したいなぁ……。けど、今日中には無理だろ?」
「無理だろうな。七層に魔法ぶっ放して様子見して、行けそうだったら階層主探しをする感じかな」
俺とサリとロベルトが食べ物片手に語り合う。うちの両親とオズワルドは静かにもぐもぐしていた。上品。
「六層であの化け物だ。七層の階層主はどんなのが出るかな」
サリがちょっと楽しそうに言う。魔族にすっかり染まっちゃったんだな……
「速度特化型じゃなかったらいいなぁ」
「レディオンの苦手な相手って想像し辛かったけど、なんとなく納得している俺がいる」
「サリやロベルトみたいな素早い動きは出来ないからな、俺。必ず先手がとれる体術ってのもあるんだけど、俺はどうもあれが苦手でな……」
「なにそのチートな体術」
「父様が得意だぞ。今度見せてもらうといい。時空系魔法との混合技だから、俺も頑張れば出来そうな気がするんだが……未だに成功しない」
まぁ、成功させようと頑張ってるのが赤ん坊の体だから無理なのかもしれないが。ちなみに十歳の体だと、かろうじて成功するかも、という怪しげな確率になる。
「お前の場合、【加速】を有り余る魔力で強化して自分に付与すればいいんじゃないか?」
「普通に方向転換できない吹っ飛びになるぞ、それ」
魔法特化型超火力の人に小器用な真似が出来ると思わないでもらいたい。いや、やろうと思えばできるけど、俺が加速についていけない。
「もう空飛んで自由に攻撃したらどうだ?」
「飛行タイプには通じないけどな、その戦法」
「速度特化型で飛行タイプって何がいるんだ?」
「特殊な飛竜系とか、妖精系かな。光の速さで攻撃してくるぞ」
「やべぇな……」
「魔法で防御力あげてカウンター技叩き込めば倒せるけど、怪我覚悟の上での戦法だからな。同じ速度を出そうとしても無駄だし」
「そんな速さの奴らにカウンター技決めれるのか?」
「攻撃がくるとわかっている軌道に剣を合わせれば出来るだろ?」
「それができる時点ですげぇよ」
ロベルトも出来そうなんだけどなぁ……
「そういえば、元魔王さんの苦手な敵って?」
「その呼び名、継続なんだな……。オレの苦手な敵か……年寄りかな」
「またコメントし辛い敵だな……」
「いい記憶が無くてな……老獪なジジイ共に随分苦労させられたから、未だに苦手意識が、な」
「物理で倒しちゃ駄目な敵は辛いな」
「そもそも戦闘になっちゃ駄目な気がするんだけどよ?」
そういう括りでいくと、赤ん坊とかも苦手な敵になるな。
「ロベルトが苦手な敵ってなんだ?」
「俺か? むしろ、俺が得意な敵ってどれになるのかが分からん」
「速度特化型にも対応できるだろ、お前」
「まぁ、出来たけど……苦手な敵か……あれかな、物量戦でくる敵とか、広範囲に逃げられない魔法ぶっ放す奴とか」
「俺じゃないか」
「お前かよ」
いやだって、ゴーレムの物量戦も出来るし広範囲魔法は得意だぞ?
「ロベルトは鍛えれば速度特化型の物理攻撃主体になりそうだから、レディオンの苦手な敵になりそうだな」
「今度、対戦しような!」
「嫌に決まってるだろ!? お前絶対広域魔法連発してくるだろ!?」
やだ。戦法がバレている。
「だが、二人で特訓するのはいい案だと思うぞ? 互いに苦手な戦法を得意としているんだ。学ぶことは多くあると思うが?」
「それは確かに……」
「一緒に特訓しような!」
「わかったって……すげぇ目ぇキラキラさせながら言うな」
「いやだって、俺と手合わせしてくれる人ってほとんどいないから、いつも自己鍛錬しか出来なくて寂しかったんだよ」
ぼっちは辛いんだぞ?
「お前の場合、相手が攻撃躊躇って訓練にならないことが多そうだもんな……」
「一撃や二撃で沈むほど弱くはないつもりなんだが……」
「いや、外見的に」
俺が十歳の姿とか赤ん坊の姿なのが駄目なのか?
「大人版でも戦ってくれる人いないんだけどな?」
「最初から勝てる気せんわあんな化け物」
「化け物とは何だ!? お前だって幸運値四桁の化け物じゃないか!」
「それぐらいお前が強いってことだよ! あと四桁って桁数でけぇな!? そのわりに強運とかないんだけどよ!?」
「ロベルト、覚えておけ。勇者は基本、薄幸だ」
「サリさんが真顔すぎて辛い……」
サリは実体験してるからな……
――などとお喋りに夢中になっていたらオズワルドから厳かな声をかけられた。
「そこのお三方。ご飯はおすみですか?」
やべ。食べて無かった。
慌ててもぐもぐする俺達を見やって、父様と母様が微笑ましそうな顔をしている。
一方、オズワルドが手渡してくるサンドイッチをもぐもぐするサリは、不承不承という顔をしていた。
「サリ様も、ただでさえ食事を抜きがちなのですから、きちんと食べてくださらないと」
「お前は気にしすぎなんだ。昔に比べればよく食べている方だろう?」
「比べる対象がそもそも間違ってます」
もしかして、食べるのも面倒がるタイプなの?
「そういえばレディオン、七層の最初に魔法を使いたいと言っていたな」
なんとかサンドイッチを食べ終えたサリが立ち上がりながら言う。量が少ないからオズワルドが不満そうな顔をしているぞ。
「ああ。雪山ってことはクレバスとか、雪が積っていて一見して道のように見えるけど踏み抜いたら落っこちる、みたいな自然の罠があるかもしれないだろ? あと、大きな魔法で雪崩、とか」
「あるだろうな」
「で、先に大魔法放っておいて、危険性を無くしておこうかと思って」
「お前の魔力で広域展開すればやれそうだな」
サリが納得顔になる。
そのまま皆で七層まで降りると、雪山の麓に出た。
とりあえず、基地を作る前に大人版の姿になり、魔力を込めながら魔法を唱える。
くらえ! 俺の全力の――
【終末地の炎宴!】
もともとが広域殲滅技だったのをさらに超広域強化してぶっ放した。
闇と炎の混合魔法だから熱気が凄い。
「……これは、下手したら雪山自体が消えないか?」
「大丈夫じゃないか? 流石にそこまでヤワなフィールドじゃないと思いたい」
そのまま続けて別の魔法も唱える。
【炎獄の虐宴】
雪崩がきたら嫌だな、と思って放った魔法だったが、別のものが魔法にぶちあたった。
「ギャアアアアアアアッ!」
「…………」
「……氷のドラゴンっぽいなにかが……」
何重もの闇と炎の渦に捕らえられて絶叫をあげて――あ、斃れた。
「…………」
「…………」
俺達は神妙な顔で倒れ伏した氷の竜を見る。一応【全眼】を使ってみたが、竜魔では無かった。普通の竜の異常な化け物だ。
「なぁ、レディオン。アレって階層主だよな?」
「……たぶん?」
異常な化け物だったし。
「山の雪も綺麗に溶けたな……」
「ついでに道中いたであろうモンスターも燃えるか溶けるかしたんじゃねぇかな?」
やらかしたぁあああああッ!!
「素材が……!」
「そんなにがっくりくるほどか!? 威力を誇るとかでなく!?」
崩れ落ちた俺に、ロベルトが声をあげた。
俺としては痛恨のミスだ。
「アビス種って固有の素材だから、皆が新しい素材を楽しみにしてるんだよ!」
「民の期待に応えようとするのはいいことだが――まぁ、諦めろ。階層主の素材は手に入ったんだからよしとしよう」
「うぅ……きっとサーベルタイガーの変異種とかいただろうに……」
「サーベルタイガーもどきなら六層で倒してただろ」
そうだけど!
「一層違いで毛皮の質とか変わるかもしれないだろ? 全力出すんじゃなかった……!」
「いいじゃねーか。ほら、あそこに次の階段があるぞ。八層があるみたいだし、新たな敵も出るだろうから、ほら、ほーら、いい加減立ち上がれって」
うぅ……
「ダンジョンの一層をまるごと全滅させるレディオンに驚けばいいのか、素材が飛んだことを嘆くレディオンに驚けばいいのか、迷うな」
サリが真面目に考え込んでる。
ちなみにうちの両親は無言のままドヤ顔してました。
「とりあえず、八層行こうぜ、八層。ほらレディオン、前人未到の地だぞ? きっと強いモンスターもいるぞ? ほーらほら」
大人版から子供版に戻った俺の背をロベルトが押していく。
「待て。基地作って無い」
思い出し、気をとり直して要塞みたいな砦を作っていく。ロベルトが何か言いたげな顔をしていたが、聞かんぞ。傷心の俺にはクリエイトで心を癒す必要があるんです。
「よし。気分よくなった」
全力で基地を作り終えた俺に、皆が半笑いになっていたが、気にすまい。
「では、八層に行こうか」
そうして降りた八層は『街』だった。
「…………は?」