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覚醒編5・ベビーサタ〇?があらわれた おれたちはおどろきとまどっている▼

「マジかよ……何でこれ光ってるんだ?」


 半ば茫然といった顔でご神体をつまみながら、隼人は呟いた。

勿論、光っている理由は分からない。

 朝はもとより、昼間食堂でだって光ってはいなかったはずだ。いくら明るい場所でだって、石自体が光っていれば嫌でも気付く。


「お、おい、隼人。光ってる以外は何ともないのか? 例えば熱いとか……」


「いや、別段熱くはねぇな……。光っている以外は特に何にも……ん?」


「ど、どうしたの、隼人君?」


「い、いや、ご神体が淀んで……光っちゃあいるけど……っ!?」


「隼人!?」


 隼人が手にしていたご神体が一際眩く輝いたかと思うと、パキリ、と硬質な物体が割れる音がした。



『……………………ン~~~~~ッ、呼ばれて飛び出てっ、じゃじゃじゃーんっ!』



「「「「……………………は?」」」」


 パッカーン、なんて擬音がぴったりな程綺麗にご神体が割れる。

すると、中から古臭い台詞と共に変なものが現れた。


 某国民的RPG(ドラゴンの方)に登場するベビーサタ○というモンスターをご存じだろうか。

基本配色が紫色で尻尾が悪魔チックなアイツだ。MPが足りないくせに大技を乱発しようとする困った奴でもある。

 顔の造作や細かい部分に違いこそあれ、7割方類似商品だと思ってくれて相違ない。

言い方を変えるとパクり品みたいな奴だった。

奴の登場と同時に吹き飛んだ紙(こっくりさん用)が床にパサリと落ち、じゃじゃじゃーんの体勢からストンッと机に着地する。



『……とまぁ、テンションも高めに現れてはみたけど、人界は息苦しいねぇ、どうも』



 思っていたリアクションが返ってこなかったから落ち着いたのか、ベビ○サタン(模造品)は流暢に言葉を扱った。


「なんじゃ、こりゃ……」


 隼人が呟くが、誰もその呟きに言葉を返すことができない。

 そりゃ、そうだ。急に紫色の憎いアンチクショウが現れたと思ったら、流暢に人間の解する語を話し始めるなんて、まさに驚き戸惑っている状態だ。


 ……ともあれ、問題はパクりに対する部分ではない。ご神体の中から現れたという超常的現象についてだ。

俺たちは4人でこっくりさんもどきをやろうと第二図書室に来ていた。

あれだけ騒いでいれば、誰かが居ても俺たちに気が付くだろう。また、俺たちだって人(人外も含む)が居れば気が付いたはずだ。

 実に解せないが、状況的に見ても奴はご神体の中から現れたのだろう。

……いや、現れたのだろう、と仮定したとはいえ、現実にこんなものが存在していいのか?


カチリカチリカチリカチリカチリ……ガチリ


「……っ、ッ!?」


「……ひ、浩之!?」

「……浩之君!?」


 目の前で起こった超常現象に脳内CPUをフルに稼働させていると、こめかみに激痛が走る。

思わず、その場にうずくまってしまった。

 心配そうに駆け寄ろうとする春菜と柚繰を手で制する。

一度大きな痛みが来た後は特に痛みもない。

 どちらかと言うと、頭もすっきりクリアになったようだ。滅多に使わない脳みそを使ってしまったから反動でも表れたのだろうか?


 痛みも引いたため、その場で立ち上がる。立ち上がった目線の先には、得体の知れない○ビーサタン(パクリ)。


「……ご神体から出てきたのか?」


 こめかみを揉み解しつつ、そう訊いてみた。



『ふぅん、勝手に整合性を取る訳か……こりゃ、楽でいいや』



 にやにやとむかつく笑いを浮かべながら奴はそう言った。


「質問に答えろ。お前は、ご神体から出てきたのか?」



『あぁ、そうさ。僕こそが今、巷で噂の『ロールさん』の本体さ』



 事もなげに奴、自称『ロールさん』はそう答えた。

この自称『ロールさん』がどんな超常的現象でもこの際どうでもいい。

 実際、目の前にこいつが存在してしまっている以上、超常的現象は存在するのかどうかなんて議論はする必要がないだろう。


「……そうか、お前が『ロールさん』か。それで? 何をしに現れたんだ?」



『何って……君らが僕に何か用事があったから僕のご神体を用意したんじゃないの?』



 と、にやにやした笑いを変わらずに浮かべた『ロールさん』が言う。


「……そうか、そう、だったか」


 あまりにも異常な出来事に驚いてしまったが、元はと言えば、『ロールさん』をやってみようという催しだったか。


「……ふむ、お前が噂の『ロールさん』なのか?」


 混乱から脱出できたのか、隼人も『ロールさん』に問いかける。



『そうだよ、ってさっきからそう言ってるじゃないか。……と、君は僕のご神体を磨いてくれた子だね。その節はどうもありがとう』



「お、おぅ……」



『さぁ、そういう訳だから、君たちが僕を呼んだんだろう? この『ロールさん』が応えてあげようじゃないか』



 にやにやとした笑いを崩さぬまま、『ロールさん』は声高らかにそう言ったのだった。


ようやく、非日常パートへ。

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