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覚醒編4・光の正体

何とか昼飯を平らげた俺たち一行は、そのまま部室までやってきた。

柚繰も特に何も言わずに付いてきたので、参加する流れなのであろう。


 部室といっても、第二図書室ではあるが……下手に騒いでも問題ない分好都合なロケーションではある。

放課後でもないので先輩たちの姿はない。


 巷で有名らしいなのだから、先輩たちがいても問題なかったとは思うが、ギャラリーがいる中でこっくりさんもどきをやるのも……ねぇ?


「そういや、隼人。お前これどうやって手に入れたんだ? サブカルなんて興味なさそうなのに」


「ん? あぁ、昨日繁華街の方でおっさんとチンピラ予備軍みたいなのに出くわしてな。そのおっさんがオヤジ狩りされかけてるみたいだったから助けたら、お礼にって」


「……今時オヤジ狩り? ていうか、お礼って?」


 色々と突っ込みどころは満載だが、未だにそんな古臭いことやってる奴がいるのか、この地域は90年代で時代が止まっているんだろうか?


「何でもそのおっさんがこの『ロールさん』の売人だったらしくてな、そんなことも含めてチンピラ共に小遣い稼ぎに巻き上げられそうになってたらしいんだわ。流行も流行だし、商品自体結構高く売り飛ばせるらしいからな」


 実は俺も『ロールさん』については昨日初めて知ったんだけどな、ガハハハハッ、なんてのたまう隼人。

……この野郎、あれだけ人のこと流行おくれの原始人なんて馬鹿にしてた癖に。あとでド突いてやらねば。


「そんで、チンピラが俺の顔を見てトンズラこいたからよ。おっさんが、助かったよありがとう、これをお礼にあげるよ。『ロールさん』ていうんだ、凄く流行っているから是非お友達とやってみてくれ、なんてな」


「いやにRPGキャラみたいな台詞を吐くおっさんだなそりゃ……」


 モブキャラなんてそんなもんなんだろうか? 何かちょっとその人アレじゃない?


「あの隼人が人助けなんて……! 母さん、感動して涙が出るわ、ハラハラと」


 ハラハラ、なんて口に出しながら春菜がバシバシと隼人叩いている。何だかんだでこいつらいいコンビだな。


「感動して涙を流したところでアレなんだけど、私も実は、『ロールさん』のことは今朝知ったんだよね」


 ケロッとした声で驚愕の事実をサラりと言ってのけた春菜。


「は? だって、お前、今巷で流行ってるって……」


「あはははは、うん、ちょうど今朝登校中に見たwebサイトに載ってたからそのまま説明したんだよねぇ……」


「なんでぇ、お前も最近知ったクチかい」


「そういう隼人だって昨日の今日の話じゃん」


 ガハハハッ、あはははは、なんて二人で笑いあう隼人と春菜。笑いあっているのは構わないが、何か腑に落ちない。


 カチリカチリカチリカチリカチリ。


 まぁ、いいか。腑に落ちないのはいいとして、それよりも……


「するってぇと、何かい? お前ら二人とも最近『ロールさん』のこと知ったくせに俺のことを不機嫌面の原始人なんて言ってたのかい?」


「――さぁさっ、柚繰も暇そうだから、サクッとやってみようぜ!!」


「そこまで罵倒はしてないけど、さぁ、過去は振り返らずに、今目の前にあるものを楽しみましょう!!」


 プイッと俺から目を背けていそいそと用意を始める隼人と春菜。ったく、いい根性してやがる。


 ガタゴトッ、と部室の机を移動させ、スペースを作り『ロールさん』の紙が広げられるように用意。


 男子2人が机を移動させている間に、春菜は紙を広げて用意をし、柚繰は部室のカーテンを閉めていった。

 今日が曇天なことも相まって、部屋の中は薄暗いというか、電気を点けなければ部屋の様子が分からないぐらいだ。


「雰囲気は出ているが、随分暗いな……隼人、電気を付け…………何だ、お前それ? 胸が光ってる?」


「んん? んなっ!? おぉ、ひ、光ってるわ……なんじゃ、こら」


「隼人、それ、『ロールさん』のご神体じゃない!?」


「……浩之君。あの石光るようにできているの?」


 それぞれがてんでバラバラなことを言い出して収拾がつかない。ていうか、柚繰の質問ちょっとズレてない?

 カーテンを閉めたおかげで部室内は薄暗く、だからこそ隼人の制服の胸ポケットの辺りが薄らと光っているのが分かったようだ。


「と、とにかく、発光の原因を突き止めよう。隼人、その胸ポケットで光っているものを引っ張り出してくれ」


「お、おぅ、任せとけ……」


 ガタイの割に肝が小さいのか、隼人は恐る恐るといった体で学ランの胸ポケットから発光している物体を取り出した。


「あ、やっぱり『ロールさん』のご神体だよ!」


 春菜が指を指してそう言った。隼人が恐る恐る胸ポケットから取り出したもの。


それは、朝はちり紙に包まれ、食堂ではドヤ顔の隼人に磨かれていた、あのご神体だった。



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