救えるのは一人
要は最後のタロットカードを引いた。
「そう……」
タロットカードの絵柄を見つめながら静かに呟いた。
日課であるタロット占いの結果が出たのであった。
「何度やっても結果は同じ……か。」
要はタロットカードを片付け始めた。
「次に死ぬのは、六学 曲……」
美の蛮行の次の日、美の通夜が行われた。
美の蛮行は表向きには伏せられていた。
しかし、TVに顔まで出したのだ。
通夜の席でもヒソヒソと悪意のある話がされていた。
曲と英子も通夜に出席していた。
曲と美の戦いの時にはカメラが壊れていたのと人がもういなかったおかげで、曲の事を知られてはいなかった。
英子が曲に寄りかかるようにして言った。
「何でこんな事に…一昨日まではみぃちゃん、普段どおりだったに過ごしていたのに……」
「……」
「周りは勝手なことばかり言っているし……みぃちゃんが可哀そう……」
「美ぃはまだ幸せだったと思う。」
「はぁ?極悪人扱いされて死んでどこが!」
「現実で死ねて、お葬式まで開いてもらえたんだから。決闘の世界で死んでいれば生きてきた証さえも全て消される。極悪人でも記憶に残れるなら……」
「ふざけないで!」
英子は曲を突き飛ばして叫んだ。
「まがりちゃん、変わったね……戦っていると、みんなそうなるの?そんな……大体、みぃちゃんが現実で死んだってどうして知っているの?あの時あの場所で、何があったのよ!」
「英子……人が見ている……」
「もういいよ!あんたなんか知らない!」
英子は曲の前から走り去っていった。
曲は追いかけることが出来ず、その後ろ姿を見守るだけであった。
遅れてきた蒼が英子とすれ違った。
英子は夢中で走っていたので蒼とすれ違った事に気付かなかった。
蒼も突然だったのですぐに追いかけれらなかったが、我にかえり走り出した。
すぐに追いつくはずだったが足を止め、電柱の影に隠れた。
(要……?)
英子を要が引き止めたのであった。
(ならば、大丈夫そうだな。)
蒼は英子を要に任せて、通夜の会場に向かった。
しかし、その判断は間違っていた。
次の日、英子は学校に来なかった。
仲の良い友達二人のいない曲は休み時間もずっと伏せていた。
利士の後姿を見る日課もままならなかった。
(英子……)
放課後に英子からメールが来た。
「昨日のことを謝りたいの……まがりちゃんがつらいのに八つ当たりなんかしてごめんなさい……港の倉庫の……小学校の時に3人で秘密基地にした、あそこで待ってます。」
「英子!」
メールを読んですぐに曲は駆け出した。
(謝るのはあたしの方だよ!あなたに伝えなきゃいけない事があるの!美ぃを殺したのは……)
港にはひと気がなかった。
「英子ぉ!来たよぉ!」
返事はない。
「英子ぉ!どこにいるのぉ!」
返事はない。
そこで曲は学校指定の皮靴が落ちている事に気付いた。
サイズは小さく……
「これって、英子の……」
コンテナの裏でドサッと何かが倒れる音がした。
曲は音の方に向かって走り出す。
そこには体中から血を噴き出した英子が倒れていた。
まるでトラックにひかれたかのようであった。
「英子!どうしたの、しっかりして英子!」
しかし、英子は返事をしなかった。
「119番!救急車!」
「無駄だよ。もう死んでいる。」
そこに要が現れた。
曲は要の姿に驚いた。
要の姿が決闘の世界の時の巫女服になっていたからだ。
要は冷たい声で言った。
「驚いた?私もこっちの世界で変身できるようになっていた事に。」
手にはサーフボードがあった。
曲は震えながら言った。
「まさか……あんた……」
「ところでこっちの世界で変身する条件を知っている?大切な人を現実で殺すこと。あんたの場合は殺そうと思ったから変身できたってとこかな。津名 美を。」
「あんたが……英子を……」
「彼女は血の生贄になってくれたの。我が更なる高みに上るために。」
曲はバンドエイドを食い千切った。
ガンマンの格好に変わる。
要は不敵に言った。
「あんたと我なら決闘の世界を呼ぶ必要はなさそうだね。」
要はサーフボードに乗って姿を消した。
曲はめちゃくちゃに銃を乱射する。
しかし、銃弾は壁に反射するだけであった。
要の声があちこちから聞こえてくる。
「自慢の精密射撃も目で追えなければ意味なさそうだね。それじゃあ、決めさせてもらうよ!」
要のサーフボードがまっすぐと曲に当たり、曲の体が吹き飛ぶ……
はずであった。
曲が要のサーフボードを受け止めていた。
「ふっぐぅぅぅ!」
「なっ?どこにそんな力が!君の武器は銃だけじゃなかったのかい!」
曲のネックレスのペンダントの色がいつもの青ではなく茶色く輝いていた。
「なるほど、人から奪った武器かい。あの801から美へ……美から君へと武器が引き継がれていたのか。」
「ぬぅぅぅ、りゃぁぁぁー!」
曲が要をサーフボードごと投げ飛ばした。
上手く着地した要はサーフボードに再び乗った。
「ここは引くべきかしら?」
「逃がさない!」
世界が歪む。
二人は決闘の世界に移動した。
要は言った。
「なるほど決闘の世界にこんな利用方法があったとは……」
「何でなの、要!」
曲はネックレスのペンダントの色を茶から青に変え、武器を銃に持ち替えて叫んだ。
「何で英子を殺したの!」
「他の人でも良かったんじゃないのかって?」
「……そうよ!」
「駄目なんだよ、曲。彼女じゃないと。」
要はサーフボードを曲に投げつけた。
勢い良くボードが突っ込んできたが、曲は間一髪でそれをかわした。
曲は銃を構えなおし、言った。
「こんな悪あがきを!」
曲が睨みつけていると、要の周りで異変が起き始めた。
要の周囲を白い空気が回り始めた。
気温が下がり始め要の体が凍り付いていく。
曲はこの光景に見覚えがあった。
「これで1ポイントゲットですわ!」
佐紀が氷の銛で要の胸を貫いた。
佐紀は曲に微笑んでから走り去っていった。
同時に世界が歪みだした。
元の世界に戻ると曲はその場に倒れこんだ要を抱きかかえて言った。
「どうしてこんな事に……」
「我は……いや、私の占いでは2つの未来が見えた……私が英子を殺し、霧雀 佐紀に私が殺される未来と……英子が曲を殺し、霧雀 佐紀に英子が殺される未来が……何回やってもその2つの未来しか見えなかった。」
「あたしを救ったとでも言うの?占いなんか……」
「私の占いは当たると信じている……でも、この選択が正しかったのかどうか……」
「バカよ、あんた!絶対に間違っている!あんたが死ぬことはなかったのよ!あたしなんか英子に殺されて良かったんだから!」
「ふふふ……そうか、私の選択は……」
「ちょっと、しっかりしてよ!あんたにはまだ言いたいことが……」
要はもう喋れなくなっていた。
ただ、心に強く念じた。
(来世でこそ……利士君と結ばれたいなぁ……)
折部 要の物語――。
博和君との出会いは高校受験の時であった。
道に迷っていた私を高校まで案内してくれた。
これを運命と言わずになんとする。
産まれたときから前世の記憶があった。
人に何と言われようと、私にはあったのだ。
だから運命を感じた博和君とは前世で会ったに決まっている。
QPに神様のミスで博和君との赤い糸が複数あると聞いた。
違うよ、QP。
ミスじゃなくて必然だよ。
博和君を中心に前世の因果が集まってくれたにすぎない。
だから私は他の9人に殺されるのが怖くない。
前世で友達だった人たちだもん。
だから私が倒れても私のやりたかった事は残った人がやってくれるよ。
そういうもんでしょ、前世の因果って。
カルデアネスの板を譲り――折部 要、死亡。
これで……後6人。




