第一話 はじまりの朝 (上)
騎士寮の朝は早い。
俺は眠い目をこすりながら、ベッドから身を起こした。
「ふあ……」
壁に掛けられた古時計に目をやる。
6時。午前6時。昼起きの俺にとって、完全に活動時間外だ。
そりゃ誰だって欠伸くらい出るだろう。
コン、コン
乾いた木の音が、部屋に小さく響く。
「開いてるよ」
ドアの向こうの相手に返事する。
「おはよ、リエーフ」
緑色のポニーテールを揺らし、軽く微笑する女。
「どうも。ヲルナ隊長」
ヲルナ、俺が騎士団に入るきっかけを作った女だ。とりあえず俺の目標。外見は華奢だが、パワーもスピードも常人とは段違い。おまけに超一流の剣捌き。
さらに、相手を寄せ付けない『次元多面体』の使い手。騎士団に5人しかいない、王宮騎士の称号を持つ1人。そして性格も良く、顔も上の上。国民から最も人気のある騎士。……なんだ、この完璧過ぎる要素は。
「ど、どうしたの? 枕叩いたりして」
「いや、なんでもない。今日も騎士寮の見学でいいのか」
ヲルナが思い出したように顔を上げると、首を横に振った。
「実はね、騎士団に入るには試験を合格する必要があるの」
「試験?」
「そう。あたしの時は魔物の討伐が試験だったけど、リエーフには別の試験が用意してあるみたい。今日の午後が試験日になっちゃったけど大丈夫だよね」
「へえ、まぁ俺はどんな試験でも、何時でも構わないけどな」
「あはは……そう言うと思った」
「すぐに着替える。部屋から出てくれ」
試験などヲルナに近づくための通過点にすらならない。それより朝食の方が優先だ。