表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

2日前の出来事


 「俺が……負けた?」

 

 足が震え、汗が頬を撫でる。鉛のように重くなった身体は、その場に崩れ落ちた。

 

 「やっぱり、あたしの勝ちみたいね」

 

 目の前の少女――おそらく自分と同年代だろう。

 彼女は余裕の笑みを浮かべ、軽い口調で勝敗を告げる。

 俺たちを遠目で見ていた民衆達は、すでに立ち去っていた。


――信じられない

 王宮騎士だと聞いて油断は無かった。むしろ冷静だったはずだ。

 それなのに手も足もでない。この差はなんだ……?

 

 「ねえ」

 

 少女の声で思考が途切れる。俺は俯いたままで返事をした。

 

 「どうした」

 

 「戦う前にあたしが言った約束、覚えてる?」

 

 「騎士団に入れってハナシだろ」

 

 「うん。あたしの部下として騎士団で働いてほしいの」

 

 「お前に傷ひとつ付けられない。・・・・・・そんな奴が必要か?」

 

 自嘲気味に呟く。それほど少女との『差』を痛感していた。

 

 「弱くないよ。あなたは強い」

 

 少女の目は俺をしっかり見据え、そして優しく微笑む。

 

 「その台詞、アンタに言われても虚しいだけだ」

 

 「うーん、それもそうだね」

 

 だけど、と少女は言葉をつなげる。

 

 「君の身体能力は、騎士団の中でもトップクラスだよ。魔力もそれなりにある。唯一イマイチなのは、武器の扱いくらいかな」

 

 驚いた。思わず目を見開く。剣術は独学で覚えたものだ。

 しかし、自信が無かったわけではない。それを『イマイチ』と評価した彼女の剣技は、確かに俺のそれとは、比べ物にならなかった。


「アンタ、名前は?」

「あたし? あたしの名前は――」


 騎士団に興味があった訳じゃない。

 ただ、彼女の持つ『次元多面体(アナザーフォーチュン)』が、俺の脳裏から離れなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ