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21部

ダイの取調べで、お白洲に一緒にハチとダイが居たわけではない。

だがその供述を同心の山本が読み上げた時、ゴザの上でダイは、自分の膝小僧を血が出るほど掴んでいた。

「形式で白洲に呼んだがな、お前に聞くことなんざひとつも無いよ。あの男が今、罪を軽くしようと、自分の都合のいいように話してるのは解ってる。そしてお前がどんな男かも俺はよく知ってるさ。おそらく寝耳に水。ハチを脅すつもりなんてこれっぽっちもなかったんだろうし、アイツが勘違いしたんだろうよ。お前にお咎めなんざ何も行かないから心配すんな。ああ父上がな、お前を別当(盲人の団体、当道座の位)に飛び級推薦すると言っていたぞ。だから気にするな。悪いのはみぃんな姦通していたハチって大工と妻のツキだ。」

 ダイは茫然と頭を下げたままで返事もできない。

 山本は、奉行に目で合図を送り、奉行も無言でうなずいた。

「では、これにてあん摩師、座頭、ダイの取調べを……」

「なんとか……」

 山本の閉廷の挨拶をさえぎって、ずっと無言だったダイが口を開いた。

「なんとか、ツキの罪を軽くしてやっていただけませんでしょうか! お願いします。」

「ば、お前なに言ってんだ! 姦通! ずっと浮気してた女だぞ!」

「私が、私がみんな悪いのでございます。私が不甲斐ないばかりに……どうか、お願いでございます。別当の地位など何も惜しくはありません。どうか! どうかツキに罰を与えるのだけは、どうか!」

 ダイは白洲の砂利に頭をこすり付けた。

「ばか……」

 山本が困ってチラと奉行を見ると、奉行も困っておでこを掻いていた。他の同心も次のお白洲があるのにと、ちょっとイラついた顔でダイを見ていた。しかし、元々この白洲はハチの罪状を確定するものであって、被害者ともとれるツキの罪状を鑑みるところではなかった。というより、奉行所はツキのことなど、どうでもよかった。

「では、10年の謹慎処分とする。以上。これにて、取調べ終了。次の白洲があるので、取調べ人はさっさと出て行くように」

「あ、ああ、ありがとうございます!」

ダイは深々とお辞儀をした。


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