エアコンから出てきたもの
猛暑の日にぴったりの、少しひんやりするショートホラーです。
※怪談・ホラー描写が含まれますので、苦手な方はご注意ください。
ぜひ、部屋を涼しくしてお楽しみください……。
「あぢー!」
猛烈な暑さの屋外から命からがら帰ってきたのは、黒岩 省吾であった。省吾は、高校2年生で、汗で張り付いた前髪をガシガシと掻きむしりながら、足早にリビングへと向かう。
鏡に映るのは、部活動の泥と日焼け痕がよく似合う、精悍だがどこか抜け感のある顔立ちだ。身長は同学年の中でも高めで、無造作に伸ばした黒髪と、鋭い目つきのわりに表情豊かな眉が特徴的だった。
性格は、一言で言えば単純明快で情に厚い。細かい計算や面倒な人間関係の駆け引きは苦手だが、誰かが困っていれば深く考えずに手を差し伸べる真っ直ぐさを持っている。喜怒哀楽がすぐに顔に出るため隠しごとが一切できず、友人たちからは「扱いやすい男」として愛されていた。
さて、その省吾は、自分の部屋にはいるとまず、エアコンを点けた。
そのまま台所へ向かおうとドアノブに手をかけた時、カチリと小さく音がしてエアコンが消えた。
「え、停電か?」
省吾はリモコンを取り、電源ボタンを押してみる。ピッと音が鳴り、再び冷気が吹き出し始めた。胸を撫で下ろした瞬間、スマホが震える。同じ部活の友人からのメッセージだった。
『省吾、お前んちって確か、去年の夏からエアコン壊れてずっと放置してなかったっけ?』
固まる省吾の耳元で、冷気混じりの生暖かい息遣いと、ねっとりとした声が響いた。
「ねえ、勝手に点けないでよ。寒いでしょ……?」
首筋に触れたのは、人間のものではない、氷のように冷たい指先だった。
【了】
ご愛読いただき、ありがとうございます!
部活帰りの猛暑から一転、首筋に触れる冷たい指先……冷房の効きすぎか、それとも怪異の業か。単純明快でどこか抜けている省吾が、この「寒がりな怪異」とどう向き合っていくのか(あるいは恐怖に突き落とされるのか)、楽しんでいただけていれば幸いです。
夏のひんやりとした恐怖とともに、省吾たちの物語を最後まで温かく見守っていただけると嬉しいです。次回もお楽しみに!




