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⑵ 異世界?

 BMさんがスレーブユニットを背負い、私がケーブルを担いだ。


 私とBMさんは、照明付きのヘルメットを被り、密閉型のゴーグルと特殊マスク、それと手袋を装着した。

 次に、トランシーバーと放射線量計をビニールパックに入れ、私はトランシーバー、BMさんは放射線量計を装備した。

 それと、ケーブルを通した穴を塞ぐ粘土状のパテ、サンプルを持ち帰る為の容器を持った。


 何かあれば、直ぐに引き返す事。

 常時トランシーバーでの状況報告。

 この2つを言い渡され、みんなから心配されながら、私とBMさんは地上に向けて出発した。


 ルート1の階段を上り始めた。

 各階の隔壁を確認する為、最上階まで登った事がある。

 特に問題はない。


 BMさんが先に登っていく。

 私は、各階の壁に用意された穴を確認し、その穴を塞いでいる部品を外してケーブルを通しながら登っていく。

 いまのところ、放射線量計に大きな変化は無い。

 随時トランシーバーで状況を報告した。


 そして、最上階の隔壁に着いた。

 最後の隔壁は天井である。

 この隔壁を開ければ地上である。


 隔壁を開ける為の大きな円型のハンドルを回す。

 ハンドルが重い。

 しかし、何かが破損しているような感じではない。


 BMさんと一緒になって、ハンドルに力を加えた。

 最後の隔壁が開いていく。

 外の光が入って来た。


 天井の開いた隙間から、白い砂が降って来た。

 慌てて放射線量計を確認する。

 特に大きな値は示さない。


 最後の隔壁、かなり分厚い。

 ハンドルを回して一気に開けた。


「どうしました! どうしました!」

 トランシーバーからの声が響く。

 私とBMさんは、開けた隔壁の天井に続く階段を上っていく。


 そして私とBMさんは、地上に出た。

 まさにそこは、別世界だった。

 ここは……異世界か?


 地平線の彼方まで、見渡すかぎり真っ白の世界。

 上を見上げると、真っ青な空。

 近くに白く焼けた建物が見える。

 ああ、これは、私たちが住んでいた宿泊施設の跡だ。


 庭園、その周りを囲む鉄製のフェンス、そして外側にあった森林地帯は焼かれ、それらは真っ白い灰となったのだろう。

 その灰は雨によって固まり、砂のようになってこのあたり一面を覆っている。

 この時の核爆発のすさまじさが伺える。


 放射線量計の値を見ると、まだ少し高い。

 短時間であれば問題ないが、地上で住むとなると、若干危険なレベルだ。


 スレーブユニットを地面に設置し、ケーブルを繋いだ。

 これでシェルターにいるみんなも、ビデオカメラを通して地上のようすを見る事が出来るはずである。


 トランシーバーで伝えた。

「地上のようす、見えますか」

 C子さんが返した。

「AMさんとBMさんしか見えません。あとは真っ白です」

「了解」


 私は、地表の白い砂をサンプルとして容器に詰めた。

 シェルターにいるB子さんが、無線で伝えた。

「早く戻ってきて下さい」

 私は「了解」と伝えた。


 私とBMさんは、シェルターへの階段に向かった。

 その途中、私は立ち止まり、再び空を見上げた。

 久しぶりに見た青空。


 その時、私が感じた違和感のようなもの……。

 しかし、その時の私はそれを気にする事なく、階段を降りた。


 最上部の隔壁は、ダメージが大きい事から、このまま開けたままにして、2番目の隔壁から閉める事にした。

 穴にケーブルを通して隔壁を閉じ、隙間をパテで埋めていく。

 各階でその作業を行い、降りて行く。


 シェルターに着いた。

 線量計とトランシーバー、それとサンプルを入れた容器をワゴンに乗せ、階段出口に用意されている洗浄室に私とBMさんは入った。


 ヘルメット、ゴーグル、マスク、手袋、それと着ていた服を全てビニール袋に入れ、シャワーを浴びる。

 丹念に体中を洗剤で洗い、地上で付着した放射性物質を含むチリを洗い流す。


 洗浄後、検査ボックスに入る。

 そこでは立った状態で全身のスキャンが行われる。

 放射性物質を含むチリが残っていないかの確認である。


 『NG』の赤ランプが点灯した場合、シャワー洗浄やり直しとなる。

 そして『OK』の緑ランプが点灯すれば、その先の着衣室へ進む事が出来る。


 服を着て着衣室から出ると、詩織がいた。

 そして詩織は私に飛びついてきた。


 私は詩織を抱きながら言った。

「ただいま」


次回:(第10章 終話)地上の様子


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