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転生王子が悪役令嬢との婚約を円満解消して聖女と結婚すると言っています

作者: 春澄
掲載日:2026/05/02


午後の穏やかなティータイム。柔らかい光が差し込む王宮のガゼボで、そこに似つかわしくない不穏な会話が繰り広げられていた。


「だから、わたくしとの婚約を解消したい、と?」

「そうなんだ。今ならお互い傷を負う婚約破棄ではなく、円満な婚約解消ができるだろう?君にとっても悪い話じゃないはずだ」


王太子殿下の話を聞いても、わたくしはすぐには理解できなかった。

目の前に座るオーウェン殿下は、穏やかな笑みを絶やさない。その顔はいつも通り自信に溢れ、すべてが上手くいくと疑っていない顔だ。


「ええと、少しお話を整理させていただいても?」


わたくしはこめかみを押さえて、殿下の話について考えようとした。

目の前に置かれた紅茶に、自分の顔が映っている。怪訝そうにしているその顔を見ながら、ついさっき言われたことを思い出した。




オーウェン殿下曰く、この世界はとある物語の中らしい。

殿下には前世の記憶があり、その記憶の中で見た物語と、この世界が全く同じだという。

物語の主人公はわたくし、ミランダ公爵令嬢。

わたくしは今と同じように殿下と婚約しているが、その婚約を脅かす存在があらわれる。


「それが、最近男爵家に引き取られたユリア嬢であると」


「ああ。ユリアは今は男爵家でひどい扱いを受けているが、やがて聖女として覚醒するのだ」


男爵が市井の女に産ませた子を引き取った話は聞いている。噂では、なかなか整った顔をした娘だったため、下衆な男爵がのし上がる道具にするために引き取ったとか。

元平民の娘は、男爵家で虐げられているらしい。


「聖女となったユリアは王宮に召し上げられる。そこで俺と出会って恋に落ちるのだ」


殿下は陶然とした目でそう言った。

なにが、恋に落ちるのだ、よ。婚約者の前で言うことではない。わたくしがそのふざけた発言を冷たく見返していることなど気付きもせず、殿下は続ける。


「しかし、俺とユリアは間違ってしまうんだ。ミランダという恋の障害がいては結ばれないと思い詰めて、君に罪を被せて、夜会で婚約破棄を宣言してしまう」


殿下が俯き、拳を握って熱弁している。感情が入っているのがわかった。まさに物語の主人公然としたムーブである。主人公はわたくしだと聞いていたのだけれど。


「それで、わたくしはどうなりますの?」


馬鹿げた話に興味はなかったが、今後の対策のために聞いてあげた。すると、わたくしが興味を持ったと勘違いしたのか、殿下の声により熱が入る。


「ミランダは決してやましいことはしていないからね。いつも通り凛として婚約破棄を受け入れるんだ。そして、そこに居合わせた隣国の皇太子が君にプロポーズをする」


「隣国の皇太子殿下ですか」


わたくしの脳裏に皇太子の顔が浮かんだ。わが国より国力がある皇国の第一王子である。整った顔立ちもあって、各国の令嬢たちの憧れの的だ。ここでその名前が出てくるとは思わなかった。


「そうだ。そして君は隣国の皇妃となるんだ。君に冤罪をかけた罪で俺は廃嫡され、王位は父の弟が継ぐことになる。ユリアは一生神殿に幽閉されて、聖女の力だけを国のために捧げて生きていく」


殿下は大きくため息をついた。


「どうだ?ひどいラストだろう?」


わたくしは扇を広げ、口元を隠した。


「ええ、本当に。ひどい話ですわ」


わたくしの返事を都合よく受け取ったようで、殿下がぱっと顔を輝かせる。


「そうなんだ!これでは誰も幸せになれない。もちろん、前世の記憶がある俺は君に冤罪を被せるようなことはしないよ。だから、今のうちに婚約を解消しておいて、俺とユリアが結婚、君は隣国の皇妃になる、というのが、一番丸く収まると思うんだ」


わたくしは扇に隠した影で、どう言ったものか一瞬だけ考える。


「ユリア嬢ではなくわたくしと結婚する、という道はございませんの?」


未来を知っていてわたくしに冤罪をかける予定がないのなら、このまま予定通り結婚すればなにも問題ないはずだ。それなのに婚約解消を求める理由はなんなのか。

わたくしの見極める目線は気にしていないようで、オーウェン殿下は少し困ったように笑った。


「君は素晴らしい女性だけど、俺にとって君は戦友のようなものなんだ。君に対して恋愛感情は持っていない。だから、君を愛せない男と一緒になるよりも、君を熱烈に求める皇太子に嫁いだほうが、きっと君も幸せだろう」


さも、それがわたくしのためだと言うように殿下は言う。しかし、わたくしを女性として見られないと言ったも同然だ。

まあ、殿下にとってはわたくしよりその聖女とやらのほうが好みだということだろう。


「それに、本来であればユリアは救国の聖女になるはずだったんだ。そんな彼女を妃に迎え入れれば、この国も安泰なんだよ。婚約破棄なんて馬鹿げたことさえしなければ、全員が幸せになれるんだ」


そう語る彼の目は、確かに幸せそうだった。

わたくしの前では見せたことがない柔らかい目で虚空を見つめている。あれは恋する者の顔だと、恋を知らないわたくしにもわかった。


なるほど、そういうこと。


「お話は理解いたしましたわ。このことはすでに陛下はご存じですの?」


わたくしの言葉に、理解を得られたと思った殿下は、ホッとしたような顔をした。わたくしの声も表情も、普段と変わらぬ平坦さだったために、すっかり安心しているようだ。


「いや、まだ父には話していない。まずは君に話を通すのが筋だろう?君の了解を得られればすぐにでも話そうと思っているよ」


「そうなのですね。ではわたくしも父を通して陛下にお話を通させていただきます。殿下は一刻も早くユリア嬢をお迎えに行かれた方がよろしいのでは?」


「俺がユリアを迎えに?」


わたくしの言葉に、殿下は首を傾げた。


「ええ。ユリア嬢は男爵家で虐げられているのでしょう?早くそこから救い出してあげるべきなのではないですか?」


「だが、ユリアは神殿が聖女として救い出すはずだぞ」


「それはいつですか?ユリア嬢は今もひどい扱いをされているのでしょう、それがわかっているならいち早く救出するべきです。それに、殿下がユリア嬢を救い出せば、ユリア嬢もきっと殿下に感謝するはずです。そして、聖女であるユリア嬢を見いだし、わたくしとの婚約解消の理由として陛下に説明すれば説得力も増しますわ」


「なるほど……」


殿下は顎に手を当て、考えていた。わたくしの提案も悪くないと思われたようで、すっと立ち上がる。


「ミランダ、君はやはり素晴らしい人だ。ユリアのことまで考えられるなんて。俺はこれからユリアを迎えに行くよ。そしてそのまま父に謁見する」


わたくしも殿下にならって立ち上がった。


「では、わたくしも父に話をしにいきますわ。今の時間なら王宮の執務室にいるでしょう。殿下が戻る頃には話をつけておきます」


「ああ、ありがとう。頼もしいな」


殿下はにこやかに礼を言うと、さっさと退席して行った。わたくしはその後姿を見送る。

殿下が見えなくなったのを確認し、すぐに父の執務室に向かって歩き出した。






オーウェンは、無事にユリアを連れ出すことができた。

いきなり王家の紋章入りの馬車が来て、男爵家は戸惑っていたようだが、ユリアを連れていきたいと言えば、ニヤニヤとした男爵は喜んで差し出した。きっと何かしらの見返りを期待しているのだろう。

ユリア自身は何がなんだか分からないといった様子だったが、男爵家にいるよりはマシだろうと、おとなしくオーウェンについてきた。


そしてその足で、ユリアをつれて王の執務室を訪ねていた。

自信満々なオーウェンと、まだ状況が込み込めていない様子のユリア。ふたり並んで王の前に立った。


「オーウェンよ……ミランダ公爵令嬢との婚約を解消し、聖女と添い遂げたいというのは誠か?」


国王は息子に問う。その声は少し力ない。だが、そんなことに気付かないオーウェンは、しっかりとミランダが先に話をしてくれていたことに満足していた。王に向かって、大きく頷く。


「ええ。そうです。ここにいる聖女ユリアと、共に生きていきたいと思います」


ユリアはギョッとしたようにオーウェンを見ていたが、まだどう動くべきか見極められず黙っている。

王は細く息を吐き出した。数秒の沈黙が落ちる。


「……わかった。明日、皆に宣言するとしよう」


「ありがとうございます!父上!」


嬉しそうな顔の息子に、王はため息を飲み込んだ。






明朝、緊急で開かれた会議。集められた多くの貴族の前で国王が宣言をした。


「オーウェンの立太子を取り消し、神殿の花婿とする。新たな王太子は我が弟、イアンとなる」


議場は大いにざわめいた。あまりにも急すぎる宣言に、誰もが驚いていた。

その中のひとりに、宣言の対象であったオーウェンもいた。


「ち、父上!?なぜですか!?立太子の取り消しとは、どういうことです!!」


オーウェンは食ってかかる勢いで、国王に向かって叫んだ。

国王は、ちらと息子を見て、視線を一角へ向けた。そこに座っていたのは、ミランダと王弟イアン、そしてその妻ソフィーナ。


「さらに、イアンとミランダ公爵令嬢の婚姻を即時に進める。ミランダ公爵令嬢は王太子妃となり、イアンの妻であるソフィーナは側妃とする」


「謹んでお受けいたします」


ミランダ、イアン、ソフィーナが順に礼をとる。そのさまを、信じられないものを見るような目でオーウェンが見ていた。


「なぜ……」


オーウェンの小さなつぶやきは黙殺され、そのまま会議は閉会となった。




「父上!なんだったんですか!どういうことか説明してください!」


控えの間に下がり、王とオーウェンだけになった。呆然としていたオーウェンが気を取り直し、再度王に食ってかかる。

王はそれを呆れたような目で見ていた。


「どういうこと、もないだろう。お前はミランダ嬢に聖女と添い遂げたいと話したと聞いたが?」


「それは確かにそうですが……!聖女が王妃となったら国も安泰なのです!王太子でなければ意味がない!父上はわかっていない!」


「お前こそわかっていないだろう。聖女は婚姻することはできないぞ」


「え?」


「聖職者となるのだから、結婚できないのは当たり前だろう。それでも聖女を支えたいという者は『神殿の花婿』になるしかない。そんな当たり前のことも思い至っていなかったのか?」


この国には『神殿の花婿』という制度がある。

数十年に一度現れる聖女は、聖職者となるので当然婚姻関係は結べない。しかし、聖女の周りには、何故か必ず聖女を恋い慕い、聖女の側にいたいという者が何人か現れる。聖女も須らくその者たちと共にあることを望むのだ。

聖女には国を守ってもらっているという大恩があるため、神殿も王家もできる限り聖女に寄り添おうとした。そこで生まれたのが『神殿の花婿』である。


聖女と正式な婚姻関係は結べないが、その籍を神殿に移すことで、神殿の所有物となり、聖女と一生添い遂げることを許される。それは王族であろうと例外ではない。


そもそも、聖女を王妃に望むということが大きな矛盾をはらんでいたのだ。聖女であれば王妃にはなれない。王妃になるのであれば、聖女であってはならない。


「でも、元ネタのゲームではユリアと攻略対象は結婚してたはずで……」


ブツブツと王には意味のわからないことを呟くオーウェン。その姿を見て、王はため息をついた。


「神殿と聖女の歴史も満足に理解していない状態で、よくもまあミランダとの婚約解消を申し出たものだ。その時点でお前の運命は決まっておる」


王は父ではなく為政者の顔でオーウェンを見ていた。

そこで、控えの間に来訪者が告げられた。侍従が開いた扉の先にいたのは、ミランダ。


「お呼びと伺いまして、参りました」


国王に向かって最上級の礼をするミランダに、王は頷く。


「ああ、此奴に状況を判らせねばならないと思ってな」


「ミランダ……?」


呆然とした様子のオーウェンには一瞥もくれず、ミランダは勧められるまま席に着いた。


「一体どこからお話させていただけばよろしいでしょうか……」


ミランダは、陶磁器のように整った頬に手を当てて、計算された角度で小首をかしげた。






殿下と別れたあと、わたくしはすぐさま父の執務室へ行き、状況を共有した。


「……というわけで、このあと殿下が聖女を連れて王宮に戻ってくる手はずとなっておりますわ」


話を聞いた父、公爵は、しかめた顔でこめかみを押さえた。奇しくもその姿は先ほど殿下の話を聞いたときのわたくしのよう。


「殿下は王位についてはどうお考えなのだ」


「なにもお考えではないと思いますわ」


オーウェン殿下は聖女を王妃にするつもりでいるようだが、もちろんそれはできない。



ーーー正確には、道はなくはないのだが、今の時点ではまったく成立しない、夢物語のようなものだった。


例えば、多大なる功績を収めた聖女がいたとする。今代での聖女としての役割すべてを終えたと言えるほどの功績を収めた聖女が、その褒賞として、愛するものとの婚姻を望むのであれば、還俗して婚姻関係を結ぶことは可能である。

その婚姻相手が王であれば、王妃にもなれる。

その場合、聖女の称号は返上することになる。神殿の所有から離れるということだ。


ただ、そこまでの功績を収める機会はそうそうない。復活した魔王の封印をする、くらいの功績がなければ難しいだろう。


殿下はいろいろとすっとばして夢を見ているようだった。


「わかった、陛下には早急に話をしよう。私からの話の後に、殿下が聖女を連れて帰ってくれば、陛下も納得されるだろう」


父は苦々しい顔でその後の段取りを検討していた。


「だが、お前はどうする。婚約解消となったあとは」


「殿下曰く、隣国の皇太子が求婚してくるそうですが……」


わたくしは一拍置いて、扇をもてあそんだ。


「絶っっっ対に、嫌ですわ」


ピシャン、と扇を閉じる。自身の顔に令嬢らしからぬ嫌悪が出ていまっているのがわかる。


「まあ、現時点ではないな」


「ええ、ないですわ」


わたくしと父の意見は一致した。

王太子殿下に手酷く婚約破棄されたわたくしであれば、皇太子にすがってしまいたくなるかもしれない。だが、現時点では候補にない。


隣国の若き皇太子は、文武両道、顔も良く、年頃の令嬢たちの憧れである。

しかし、かなり向上心が強く、国内から既に2名の婚約者を決めているが、どちらも能力不足として側室になる予定だった。

皇太子殿下とは外交の場で何度かお会いしているが、その度にわたくしに言い寄ってきていた。わたくしの能力を見初めて、わたくしであれば正室にしてもよいとお考えのようだった。

外交問題になるので、さすがにあからさまなことは言われていないが、察するにはあまりある言動だった。


確かに、彼の人であればわたくしを熱烈に愛してくれるだろう。わたくしの能力を、ではあるが。



そもそも、今まで自国で築き上げた社交界での地位が、隣国にわたることでリセットされてしまう。

自国より国力が上である隣国で、一から地位を築くのは至難の業だ。そんなことをするメリットは、今のわたくしにはない。


さらに、婚姻前から既に側室が2名決まっていることから、今後も増えることは確実。そして後宮のドロドロの争いを収めるのは正室の役目となるだろう。皇太子は勝手に種だけバラまいて。

そんな手間をかけらせられるのは御免だった。



「イアン殿下を呼び戻すしかないか」


父は考えた結果、唯一の結論に達して再度ため息をついた。


「イアン殿下であればなにも問題ございませんわ」


「まあ、父親としては言いたいことはあるが、公爵としては問題ないと言えるな」


わたくしのことを思ってくれる父に、柔らかくほほ笑んで見せる。


「イアン殿下なら国を任せるに最適ですし、ソフィーナ様となら上手くやっていく自信はあります」


イアン殿下は国王の少し年の離れた弟だ。

年が離れていると言っても、わたくしよりは一回り以上年上、父との方が年齢は近い。

国王にオーウェン殿下しか子がいないことで、王位継承権は返上せず、仮の大公位を授かっている。

オーウェン殿下が即位されたら、正式に臣下にくだる手はずだった。


少し夢見がちなところがあるオーウェン殿下と違って、イアン殿下は堅実だ。

妻として娶っているソフィーナとは子を作らず、治世を乱さぬようにと考えておられる。

もともとソフィーナは少し身体が弱い女性で、子は望めないかもしれないと言われていたようだった。しかし、彼女は貴族としての役目をよく分かっており、身体のことをとても気にしていた。そこで、しばらく子は必要ないイアン殿下が娶ることで、役目を与えたのだという。

もしイアン殿下が王位を継ぐようなことがあれば、側妃として正妃を別に迎える必要があるだろう。


ソフィーナとは将来親戚になる予定だったので、何くれとなく体調を気遣っていたこともあり、友好な関係である。

彼女とであれば、同じ王を夫に持つものとして、支え合っていけるだろう。



「わかった。陛下にそのように進言しておこう」


「ありがとうございます。わたくしは、この足でイアン殿下とソフィーナ様を訪ねようと思います」


急な話で、2人には寝耳に水だろう。わたくしからきちんと説明して了解を得る必要がある。特にソフィーナ様には、遺恨が残らないようしっかりわたくしの思いを伝えなければ。


父に一礼し、執務室を後にした。






「と、いうわけですの。おわかりいただけました?」


目の前のオーウェン殿下は呆然としていた。


「王位はイアン殿下とソフィーナ様と共に、わたくしが守っていきますわ。殿下は神殿から、聖女様とともに国をお守りくださいませ」


にこりと微笑んだが、殿下の目にはなにも映っていないようだった。なにかつぶやいているが、よく聞こえない。


「お前にはこのまま神殿へ行ってもらう」


国王は顎で近衛騎士に指示を出した。さっと動いた騎士が、二人がかりで両側からオーウェン殿下の腕をかかえる。


「ちがう、そうじゃない……救国の聖女は王妃になるべきだ!俺が王になるんだ!!」


急に大きな声を出したが、そのまま容赦なく引きずられて行ってしまった。


「なにも救っていないのに、なにが救国の聖女なんだか」


王は、連れて行かれた息子の背中に、寂しそうにつぶやいた。






「ちょっと、なんで神殿に閉じ込められてるわけ!?まだゲームはじまってないのに、これじゃあ他の攻略対象者との出会いイベントこなせないじゃない!どうしてくれるのよ!」


ふたりきりで神殿の一室に軟禁されたユリアは、オーウェンに噛みつく勢いでまくしたてた。そこにいるのは、可憐な少女ではなく、顔をゆがめた癇癪持ちの女だった。


「ゲーム!?お前も転生者か!」


オーウェンはユリアの言葉に目を見開く。すると、ユリアも驚いていた叫んだ。


「オーウェンも転生者だっていうの!?信じられない!普通こういうのって悪役令嬢が転生者で邪魔してくるんじゃないの?なんで攻略対象に邪魔されなきゃいけないのよ!」


「邪魔だと!?男爵家から救ってやったんだから感謝したらどうなんだ!?」


「感謝なんてするわけないでしょ!!わたしの本命は次期宰相のグレイ様よ!このままじゃ学園に通えず神殿で働かされちゃうわ!そしたらイベントも発生しないじゃない!さいっあく!!」


「な、なんだと!?お前それでも聖女か!?」


神殿の一室では、その後も醜い言い争いが繰り広げられていた。

『神殿の花婿』という王道乙女ゲームの主人公として転生したユリア。男爵家に引き取られた後、学園に通い、攻略対象と親睦を深めるうちに聖女として目覚める。そして魔王が復活し、聖女と攻略対象は力を合わせて魔王を封印する……というゲームを元にした悪役令嬢モノを読んでいた転生者の王子、というお話でした。

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― 新着の感想 ―
他にも転生者が居て、ほっとしている・・・。ありそうですね。
王子はテキストとか読み飛ばして世界観理解して無かったタイプ?
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