02
試験を乗り越えた昼下がり。
私は張り込み刑事よろしく、中庭で顔を本で隠しつつ辺りを観察していました。
ぽかぽか暖かい気温にゆるい風が通り、桃色の花びらが舞っています。
このタイミングと言えば、レオンがフィオナに『落ちる』シーンがあるはずなのです。漫画ではちょっとのシーンですが、間違いありません。
そうしているうちに、遠目に輝く白銀の髪が見えました。儚げな紫のドレス姿を彩る、風に舞う花びら……。さすがヒロイン、妖精のようです。
私は姿勢を正して観察モードに入りました。案の定、レオンが中庭に姿を現し、フィオナの後ろから歩いてくるのが見えます。
やはり!刑事の勘は正しかった!
これはたまらないシーンです!今までフィオナ様のライバルポジションだったレオンが、ルシアン様の恋のライバルになるターニングポイント。
「あっ」
フィオナが一際強い風にバランスを崩し、段差に躓き――
「おい――」
レオンが抱きとめる。
き、きちゃーーーー!! 顔が! 顔が近い!
ここでレオンは『き、気をつけろよ』とぶっきらぼうに言うんですが、赤面しちゃうのよね! フィオナ様は気づかないんだけど! そしてここから『なんだよ、これ……』とか言いながらレオンが恋を自覚するの!
私が瞳を輝かせて見つめていると、ふとレオンと目が合いました。その瞬間、かっと音でも出そうなレベルで、レオンが赤面するのが見えます。
んきゃーーー! 原作通り!
ちなみにここには……やっぱり! ルシアン殿下も見てる! ここでフィオナ様をめぐる三角関係がスタートするのです……激アツですね……。
思わずほくほくにこにこしていると、レオンがこちらに向かってくるのが見えました。
覗き見してたの怒られるかしら? 幼馴染に見られるなんて、きっと恥ずかしいことでしょう。
私は慌てて何も見てませんよというような顔をして、足早に中庭を離れることにしました。
「リセ」
き、聞こえません!
――――
逃げるように離れてゆくリセの後ろ姿を眺めながら、レオンはがくりと肩を落とした。
「あら……、勘違いされちゃったかしら?」
フィオナのからかうような声に、レオンは驚いて飛び上がる。
「な、何を」
「かわいいわよね、リセ嬢。貴方もだけど」
くすくすと笑うフィオナに、レオンは恨みがましい目線を向けた。
「……フィオナ様のように聡い方なら良かったのですが。馬鹿で困っております」
「あら、だめよそんな事言っては」




