本の中の冒険
掲載日:2024/12/16
わたしとママは、いつもおふとんの中で冒険に出かける。ママが図書館の本を持ってきたら、それが冒険の合図だった。
「…こうしてドリフトの竜は、フィラス山脈の向こう側へ逃げてしまい、クランク王国には平和が…」
ママが持ってくるのは、いつもちょっぴり難しい本ばかりだった。だからわたしは、他の子たちより少しませていたのかもしれない。パパがなぜいないのか、その理由を聞くこともなかった。
きっとママは、早くわたしを寝かしつけて、少しでも早く大人になって欲しかったんだと思う。
月日が流れ、わたしは結婚して子どももできた。初孫が生まれたとき、ママはだっこして子守唄を歌ってくれた。ママの子守唄は聞いたことがなかったが、あれはきっとわたしに歌ってくれたんだろう。
ママ…もうおばあちゃんになったその人は、よく孫たちに絵本を読み聞かせてくれる。夢の中の冒険ではなく、本当の、本の中にある冒険へと。




