※グレイランドの貴族制度
今回はグレイランドの貴族制度についてのお話です。別に読まなくても普通に楽しめますが、読むとより物語が理解できるでしょう。
グレイランド王国は遙か昔にナーヴァディーザ島に出現した、天魔王ラエル・バエナを討伐した騎士団の末裔です。そこから領土を広げ、中世から近世の日本に似た統治体制が敷かれています。
『グレイランド王』は日本でいえば征夷大将軍に当たる役職です。
グレイランド騎士団の統率者であり、本来は北にある別の帝国の派遣軍に過ぎませんでした。
本国からは遠すぎるため、独立してのこの島での統治権を認められています。
国王はグレイランド騎士団総団長で、王太子が三大騎士団の聖赤獅子騎士団の団長を務めます。
そして、名目上は同じく島にある王国の一つ、ポールブラン王国の宗主でもあります。
ポールブラン王国は討伐軍の海軍を担当しており、陸軍国であるグレイランドにとって、海外の貿易や元本国との連絡を務める要とも言える国です。
天魔王討伐後、グレイランドと共に独立を認められましたが、建国当初から陸軍の軍務をグレイランド騎士団に委託しており、ポールブラン王であるマンショ家は、同時にグレイランド王国の『ペンギン大公』の地位を持っています。
『公爵』は基本的に王の親族であり、本領と呼ばれる荘園を持つ他の貴族とは違い、都市そのものを領地として与えられています。原則として転封はありませんが行政の要として王都か州都に詰めています。
そのため、実際の領地の運営は伯爵や子爵に委任していることがほとんどです。
通常は室町幕府でいう守護にあたる『侯爵』と共同で州を統治しています。
ただし例外的に、イエローストーン公のみはイエローストーン州の守護と州都サルファバレーの領主を兼任しています。
これはイエローストーン家はグレイランド騎士団のスポンサーであり、内政面における実質的な王国主催者であるためです。軍事、外交権は王家であるラマガイア家が持ち、財務や貿易などはイエローストーン公であるグース家が掌握しています。グース家は管領に近い位置づけになっています。
イエローストーン家は他の貴族と違い、一世代につき二人の公爵が存在します。父である公爵が王国宰相を務め、息子、もしくは娘である公爵が伝統的に聖黒龍騎士団の団長を務めます。
この辺りは次回の設定解説であるグレイランド騎士団の解説で語ります。
『侯爵』は州の指導者であり、多くの場合、騎士団の上級騎士を務めるため、複数の伯爵の中から選ばれます。主人公の伯父である『バーンフィールド侯ヘンリー』は本来は伯爵位を継承しています。またソラーシュの後輩でライバルと目されているアンドリュー・クレーンのクレーン家も侯爵位を獲得できる伯爵であり、現在はノーススコリア伯として、エラプションピーク州の侯爵を狙っています。
『伯爵』は郡や県の指導者であり、通常は主要都市において2~4人で合議の上で統治を行っています。物語中で語られることになると思いますが、ソルは偶然一人で都市を統治するという事態に巻き込まれたため、統治を失敗することになります。
また、この国では内政担当の伯爵は『宮中伯』と呼ばれ、イエローストーン公の補佐や、経験の浅い侯爵の補佐などを行います。昔はなかったのですが、通常の伯爵に兼任させると軍務との両立が難しい(魔物の討伐などで忙しい)ため、本国に習って設置されました。
伯爵の下には騎士隊長を兼任する『城伯』と、内政を担当する『子爵』がいます。それぞれが城主、市長を勤めるようなイメージでしょうか。
ソラーシュの元々の爵位もガーデンヒル城伯でした。
バーンフィールド侯の栄転に伴い伯父の爵位であるガーデンヒル伯を継承したのです。
州都は公爵、侯爵(確定員1名)、伯爵、宮中伯(定員2~4名)で統治されます。城塞を持つ都市であれば、公候は城主を兼ね、伯と宮中伯は城域内にある役宅に居住することになります。
その他の都市は伯爵2~4名、各市町につき子爵1~2名、域内に城砦がある場合は城ごとに城伯が任命されます。
ガーデンヒルのような城塞都市は、城伯の上に伯爵が居り、伯爵が内政を担当しています。
貴族の定員に幅があるのは、州や都市の広さはバラバラであるため、広い州はや都市は多く、狭い都市は少なくなっているためです。それでも原則2名で都市を統治するようになっており、これは領主が不正を働かない仕組みとして、相互監視を行っているためです。
この国において各村は、騎士達が私費を投じて開拓した物で、騎士以上の貴族は私有地である荘園を保持しており、この領地は本領と呼ばれています。本領の統治権を持つものには『男爵』の地位が、統治権を持たずに国や領主から給金を支給されて軍務につくものが『騎士』になります。
騎士は基本的に宗家である『騎士党』の構成員であり、婚姻や開拓、武功による領地取得により男爵となります。
騎士の国であるグレイランドでは、失態があっても武功で取り戻せるために、騎士が直接犯罪を犯さない限りは本領を失うことはありません。これを【本領安堵】といいます。騎士たちは本領を失うことはないため、比較的自由に国内の任地に赴任することができます。
伯爵であるソラーシュは、ガーデンヒル城主とガーデンヒル領主を解任されましたが、本領であるフルレイン村は安堵されています。現在は無役、無任地の伯爵として、他者からは前ガーデンヒル伯と呼ばれることになります。