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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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66.見苦しい言い訳が並ぶ場で

 フェリノス国、王位継承権二位のライモンドは見た目だけは王子様だった。金髪碧眼、整った顔立ち、ほっそりした体躯。着飾ればそれなりに見えるでしょう。


 王太子の従兄弟に当たる彼は、どちらかといえば頭脳派だろうか。赤毛の筋肉男やゴマすり上手な焦茶頭より、賢そうな外見だ。もちろん、外見が内面を保証することはないけれど。


 猿轡が外れるなり、ライモンドは持論を並べ立てた。


「私は王太子殿下の側近であり、その命令に従うのが仕事だ。アリー……いや、失礼。フロレンティーノ公爵令嬢に毒を飲ませる計画など、まったく知らなかった。あれは気分を落ち着かせるお茶だと聞いたんだ。だから私は悪くない」


 きょとんとしてしまった。私の名を呼び捨てようとしたところは、クラリーチェ様のひと睨みで言い直される。どの発言も、驚きと呆れで意味が理解できなかった。ゆっくり噛み砕いて理解する。


 そもそも第二王子に等しい立場のライモンドが、王太子の側近に収まっているのがおかしいわ。王位を争えとは言わないけれど、何でも頷くお人形になっていい立場ではない。王太子が資質に欠けると判断された場合、自らトップに立つべき人なのよ?


 毒ではなく落ち着かせるためのお茶……それは目の前に置いて飲むよう促すのが普通よ。私が知る状況では、彼らは私を押さえつけて、口に無理やり流し込もうとした。たとえ鎮静効果があるお茶でも、そんな飲み方したら逆効果だ。


 本当に毒だと知らなくても、飲ませた以上「知らなかった」は通らないのが貴族社会だった。民を導く地位の恩恵を享受したくせに、責任や義務から逃れようとするのはあり得ない。


 ぎしっ、不吉な音がする。何かが軋む音に、クラリーチェ様を見上げた。女王陛下の手にある扇がやや歪んでいる。折られてしまいそう。


「もうよい、次」


 クラリーチェ様の声はやや低めだった。怒りを抑えているのか、扇はさらに軋んだ音を立てる。ライモンドの口は塞がれた。続いて、赤毛のカストだ。元ペリーニ伯爵令息で、騎士団長の甥でもある。


 筋肉に覆われた大柄な体は、彼より細い本物の騎士に押さえつけられていた。暴れたため床に押し付けたまま、猿轡だけを外される。やや苦しそうに息をした後、彼も一気に捲し立てた。


「俺は騎士だ、だから主君の命に従った。悪女を懲らしめ、彼女に謝罪させればいいと聞いたんだ。それを信じただけで、俺は公爵令嬢を殺そうとしていない。命令通り、お茶を飲ませる手伝いをしただけだ。それだって俺はお茶に手を触れていないぞ!!」


 ここで見かねたフェルナン卿の合図で、また口が塞がれた。隣で肘が触れる伯母様の手は、ぶるぶると震えていた。怒りで頬に赤みの差したクラリーチェ様は、大きく深呼吸した。その吐息すら揺れている。私以上に怒りを露わにするのは、記憶がない私の代わりかしら。


 手を伸ばして、クラリーチェ様の拳に触れた。扇を握りすぎて、指を痛めないか心配したのだ。クラリーチェ様ははっとしたように目を見開き、すぐに表情を取り繕った。この辺は、さすが女王陛下ね。


「最後の言い訳を聞いてやろう」


 フェルナン卿が頷き、黒に近い焦茶の髪を持つセルジョの口が解放される。彼は他の二人より落ち着いた口調で語り出した。その内容は大差ないけれど、前の二人が酷かった分だけ理知的に見える。嫌なタイプだわ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  本当、何考えてたんだろう?こいつ等。 [一言]  予想通り。  地位や立場そして知性をフルスイングでぶん投げたとしか思えない発言内容。  なんでこんな小人が王侯貴族やってられるんだ?…
[一言] この尋問だけで、女王陛下の扇が何本犠牲になるのでしょうね~。 扇の予備、足りるのかしら?
[良い点] 「言い訳→穴兄弟?→同じ穴の狢(*≧ω≦)」 「正直に話せば→楽になるのに→残念なり」 カリカリ_〆(゜▽゜*) [一言] 「言い訳しまくってるきゅな(@ ̄□ ̄@;)!!」 「現場を…
感想一覧
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