表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/145

51.愚かさもここに極まれり

 お父様は、横領と婚約破棄の裏側を探るフロレンティーノ公爵家の混乱を狙ったと推測していた。婚約者である私に使うべき予算が、どこかに消えている。離宮の管理費も含めれば、膨大な金額だった。その行先はどこか……。


 元は税金だ。民が働いて納めたお金が「消えました」「はいそうですか」と終わるはずもない。様々な書類を集め、消えた金の行き先と正確な金額の割り出しを行なっていた。


 婚約破棄の理由に関わる可能性があるとして、お父様が横領関係の調査を担当している。調査そのものが止まらなくても、遅らせることを目的とするなら?


「俺が倒れれば、逆に抑えが利かなくなるぞ。愚行もここまで来ると……哀れだな」


 やれやれと肩を竦める。お父様の仰る通りだった。もしここでお父様や私が倒れたら、貴族達は歯止めを失う。怒りや過去の屈辱を晴らすべく勝手に動き回り、王家を食い荒らすだろう。それは国を揺るがし、他国に付け入る隙を与えてしまう。


「お父様を狙ったから、私に危害を加えなかったのかしら」


 こてりと首を傾げる。あの場で、私が悲鳴を上げる前に攻撃することも可能だった。首を絞めるなり、刃を突き立てるなり……侍女サーラがいたけれど、邪魔なら一緒に始末することも出来るわ。私達は眠っていたのだもの。


「お嬢様と私の間で迷ったのかもしれません」


 サーラの冷静な声に、なるほどと頷く。どちらが令嬢でどちらが侍女か。判断できずに手を拱いて、叫ばれてしまった。そちらの考えも頭の片隅に置いておこう。偏った考えは危険だ。見える物を隠し、聞こえる声を遠ざけ、私の未来を閉ざしてしまうから。


「私が知っているのはここまでです」


 きっちり確認したパストラ様は言い切った。後宮を含め、各所に繋がる通路は多い。手元に記して残すことが許されなかったため、王族は暗記している。その情報をすべて公開した。


 王妃様も同様に確認をしていたが、ふと手を止めて眉を寄せた。首を傾げながらもう一度本宮の見取り図を眺める。


「この通路、ここへ繋がるのはおかしいわ」


「どこです?」


「謁見の間にある玉座の裏よ。ここから外へ繋がっているはずはないの。後宮が出口だもの」


 古い通路はほぼ独立しているが、新しく作られた隠し通路は途中で合流している。建設費用を浮かせる目的だろう。外へ繋がる通路は階下にあり、一見すると繋がっているように思われた。見取り図の扉の位置からして、私もそう思う。


 覗き込んだ私に説明するように、王妃様は断言した。


「絶対に外に繋がらない。だって、ここは国王しか使えないのよ」


 扉が他の場所と違い、同じ手順で開かないという。その開け方を知るのは、国王ただ一人。そして跡取りである王太子に引き継がれる。王妃や王女は扉の存在を知っていても、開けることは不可能だった。


「外へ嫁ぐ女性には教えない。それは……」


 隠し場所にぴったりだわ。浮かんだ言葉を呑み込んだ。見つかっていない資料を隠すのに、これ以上最適な場所はない。王宮中をひっくり返しても、出てこなかったら、ここしか考えられなかった。


「ひとまず、隠し扉をすべて破壊します」


 エリサリデ侯爵は物騒な宣言をすると、王妃様に一礼した。鷹揚に頷いた王妃様は一言「許可します」と声を上げた。扉を壊しに向かう騎士達、中に入ったお兄様……事態は一気に解決へ向かうはず。


 欠伸をかみ殺し損ね、お父様や王妃様に心配されてしまった。少しだけ、横になるわ。サーラも一緒に……隣にいて頂戴ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >それは国を揺るがし、他国に付け入る隙を与えてしまう。 それが目的なのかも知れませんね。 フェリノス国を狙っている他国の仕業なら、王家が無能なのにも関わらずそこそこ陰謀が成功しているワケも…
[良い点] 「消えた税金→王宮ボロボロ→玉座の裏に隠し通路」 カリカリφ(・ω・`) 探検家を呼んで宝探しきゅな( ・`ω・´) [一言] 小人、執事と共に猫作者さんに猫じゃらしで何とか誘導するう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ