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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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39.兄はなぜ私と親しさを装ったのか

 次の頁には、愛用のペンが消えたと書かれていた。他にも、予備のインクや教科書が数冊……家から持ち込んだ本が消えたらしい。くすくす笑う王太子の側近が隠したのだろう。


 決めつけるように書かれた一文に、この頃の精神状態を察した。最悪だったんじゃないかしら。周囲の誰も信じられず、友人を遠ざけたため一人で。それでも義務で通う。父は当てにならず、兄は……そういえば記載されていない。



 父に相談した日の話はあるが、日記に兄が出てこなかった。そんなに距離があったの? 少し迷って、隣で焼き菓子を摘んだサーラに尋ねる。


「記憶を失う前の私は、お兄様と仲が良かった?」


 学院はここから通える距離にある。実際、私は馬車で通っていたと記載があった。でもお兄様はこのところ、屋敷に帰ってこない。寮があるとしても、通わない理由が引っかかった。


「仲が良いかと問われると、お答えしにくい状況でした」


 言葉を選ぶサーラは、ほぼ話をしなかった兄と妹の関係を語る。屋敷内ですれ違っても、ほぼ会話はなかった。兄は最初から寮生活を選び、私は通う選択をした。令嬢が寮に入ることは珍しいと聞いた。


「醜聞を避けるためね」


「はい」


 理解できるわ。寮が厳格に管理されていても、親元にいない一点が過失になり得る。領地が離れており、通える距離に屋敷がない。また身を預ける親戚がいない。そんな事情が重なった子でなければ、保護者がいる屋敷から通うのね。


 私とカリストが仲睦まじい兄妹でないなら、なぜ王太子の側近を辞してまで怒ったのか。私の毒殺未遂がなければ、王太子の地位は安定していた。きっと婚約破棄も内々に処理されて、私の過失で解消になったのでしょう。


 怒って騒ぎを大きくし、その後、夜会で私を気遣う様子を見せた。その理由が知りたい。だって、裏のない好意は存在しないわ。サーラは、姉のように慕うお母様の頼みだから。お父様は、お母様に似た私を殺されかけたことで改心した。


 ならば、兄は? 突然手のひらを返して、私の味方についた。それでいて記憶を取り戻そうとすると、嫌がって止める。私が傷つくからと大義名分を口にして、何を守ろうとしているの?


「私は疑り深い性格だった? 今とかなり違うのかしら」


「どちらかといえば、お嬢様は明るくなられた気がします。はきはきと物を仰いますし、以前より堂々としていらして。私は今の方が好きです」


「ありがとう」


 真っ直ぐに評価の言葉を向けられ、照れて日記に目を落とした。視線が文字の上を滑ってしまう。あとで読み直ししなくちゃね。


 ノックの音にサーラが扉に向かい、私は焼き菓子を摘んだ。ナッツの香りが口の中に広がる。二枚目に手を伸ばしたところで、お父様の声が聞こえた。


「アリーチェ、少しいいか?」


「はい。お父様」


 部屋に招いた父を、書斎側のテーブルに案内した。向かい合って座るとすぐ、お父様は名前の書かれたリストを差し出す。頷くのを確かめ、手に取った。


 上から公爵家、下は男爵家……いえ、騎士爵も名を連ねている。文字が違うから、一人で書いた書類ではなさそう。


「貴族派のリストだ。目を通しておきなさい。何かあれば、この家は味方をしてくれる」


「……何か、あるのですか?」


 私はこの屋敷から出ず、学院にも通っていない。買い物に出ることもなければ、お茶会などもお断りしていた。なのに、味方のリストを差し出したのは……大きな動きがあるのね。


「察しが良すぎて、お前が可哀想になるよ。アリーチェ、貴族派が仕掛ける。お前を屋敷に置いていくのは心配だから、一緒に王宮へ……来てくれないか」


 一緒に来てくれ。そう言いかけた言葉を、尋ねる響きに変えた。お父様の気遣いは嬉しいけれど、そうね……ここに残るのは危険だわ。


「同行します。いつですか?」


 覚悟を決めてそう尋ねた。











*********************

【僕の大事な魔王様】

BLで、キスシーン程度まで(R18じゃありません)

何者かに召喚された幼ドラゴンは、殺されそうになり必死の抵抗

全力で叫んだ結果、異世界の魔王を召喚した_( _*´ ꒳ `*)_

俺様な魔王×純粋天然系ドラゴン


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― 新着の感想 ―
[一言] 兄、今も敵で決定ですね。 近いうちに元が付くこととなる王太子と共に沈んで下さい。
[一言]  兄は小物っぽい。  空気を読んで王太子側のやらかしがヤバそうだと思って実家側に蝙蝠したのか?  何にしろ味方にするとデバフがかかって足を引っ張った挙げ句裏切るタイプと見た。
[良い点] 小人はカリカリと書きます_〆(゜▽゜*) 【貴族→動く→王宮へGO !!】 [一言] 小人はハラハラドキドキします。 「パパ公爵が実は新たな力に目覚めるかもきゅ?(´・ω・`)?」 小人…
感想一覧
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