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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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21.優柔不断で見限られた兄

 一言で表現すれば、他に直系男子がいなかった。ただそれだけだ。これで執務を疎かにしたり、浪費をしたり、他に欠点があれば王位継承権は剥奪されたのだろう。


「あやつは愚かでバカだが、勉強はできる。机上の空論を立ち上げるたび、周囲が補正を入れてきた。今まではそれでも国政が動いていたのだ」


 次世代に血を繋ぐだけなら、この一代だけ目を瞑ってくれないか。賢王だった先代に頭を下げられ、従兄弟を任せると言われたら断れなかった。


 救いようのないバカだが、種馬としては使える。他の公爵家も同様の判断を下した。幸いにして当代の公爵家は、有能な当主が並んだ。侯爵家以下の貴族も、先代の願いを聞き入れて引き下がった。


「だが、あのバカはまたやらかした」


 ぐっと拳を握る父の後悔が、声に滲んでいた。愚かな次世代を生み出し、王太子を支える周囲も……期待できない。父はそう吐き捨てた。兄はすでに見限られ、泳がされているようだ。


「では、王家は」


「交代となるだろう。最有力は我がフロレンティーノだったが、カリストがあの(ざま)で使えない。アリーチェは女王になりたいか?」


「いいえ」


 即答だった。記憶があったとしても、断ったと思う。侍女が置いていった珈琲に口をつけた。強い苦味と僅かな酸味、鼻に抜ける香りが好きだ。この国では輸入品なので、高級な部類に入る。しっかり味わった。


 このくらいの贅沢ができれば、それ以上を望んだりしない。王族だなんて、苦労を背負い込むだけ。私には務まらない。


「ならば、オリバレス公爵家あたりだな」


 筆頭公爵家である我が家には、先代の姉君が嫁いでいた。私の祖母にあたる。父はその血筋を引き継ぐため、現時点で王家に最も近かった。断るなら、数代前の王女が降家したオリバレス家になるらしい。


 貴族名鑑には記されなかった事情を聞いて、私は溜め息を吐いた。


「王妃様を名前でお呼びするのは、無礼ではありませんか?」


「ふむ……カロリーナ殿は、志を同じくする仲間だ。先日の夜会では、誰も家名を名乗らずファーストネームで呼び合った。この国を真に憂う者の夜会だからな」


 地位や家名で先入観を作らない。そう決められたルールに従い、爵位も将軍などの肩書きも使わないのだ。父はどこか誇らしげに言い切った。


「でしたら、お兄様を連れて行かない方が良かったのではありませんか」


 王太子側ならば、情報が漏れて危険だ。そう心配する私の髪を撫で、父は豪快に笑った。扉の向こうで控える執事が、何事かと覗き込むほど……大きな声だ。


「言っただろう、あれは泳がせている。王太子側に情報を漏らす心配は無用だ。カリストは王太子に切られたからな」


 王太子は兄を見限った。自分が恋する女性を認めなかったから? 意味がわからず混乱した私に、父は丁寧に縺れた紐を解いてくれた。


「夜会のひと月前にケンカ別れしたのは本当だろう。そのあとカリストは動かなかった。俺に何も言わなかったのだ。あの時点で知らせておれば、手が打てたであろうに」


 王太子が私以外の女性を抱き寄せた姿を見て、距離を置いたのは事実のようだ。その話を父にせず、私にも知らせなかった。だから断罪事件は起きた。


 どちらにつくか決められず、両方を天秤にかけた。なんて優柔不断な男なの。残った珈琲を一気に呷った私に、父は苦笑いした。


「情報を漏らされても、今さら我々の動きは止められん」


 放置しても構わないの言葉の裏は、相手に情報が漏れても困らないの意味ね。お父様の話からすると、ほとんどの貴族がこちら側についた。国王交代が起きるのなら、その前に記憶を取り戻したいわね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 国家転覆の一大事がここに…!まさにミステリーですね。その事態を彼女はどう見ていたのか…それも気になります。
[良い点] なるほど、政は正しく行っていた先王の願いもあって勉強はできるバカの現王を高位貴族総出でフォローしていたけど、王太子が冤罪による公爵と公爵令嬢の捕縛、さらには公爵令嬢の殺害未遂をやらかして、…
[一言] >王朝交代 王女殿下が女王ではダメなのでしょうか? 公爵がアリーチェに対して『女王になるか?』と聞いたぐらいなので、女性が王位に就くのは問題なさそうみたいですし……。
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