表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/145

【9/25、2巻発売記念】誰よりも知っているわ ***ルーチェ

 お祖父様と牛の世話をして、乗馬を楽しんだ。あの後、お祖父様は「お母様の過去に関する話」を一切しない。家族にとって暗い話題なのね。それでも私が知りたいと望んだから、教えてくれた。


「お祖父様はいつまでこの村にいるの?」


「なぜ戻ると思うのだ?」


「だって、開拓に向かうとき「行ってくる」と挨拶したわ。それなら帰って来るはずだもの」


 行ってきます、いってらっしゃい。ただいま、おかえりなさい。挨拶はセットなの。だから帰ってきたら、お帰りなさいと迎えるつもりよ。そう話したら、きょとんとした顔をして笑い出した。


「はっはっは、これは賢い。やられたな!」


 くくっと喉を震わせて笑い、お父様へ「立派に育てたものだ」と褒めた。お父様は首を横に振り、お祖父様の言葉を否定する。


「育てさせてもらったのです。妻の功績ですよ」


 いつも謙遜するけれど、お父様は必要な愛情を与えてくれる。私が剣を握りたいと言い出した時も反対しなかった。続けるなら途中で投げ出すなと教え、見守っていた。いつもそうね。お母様が新しいことを始めるときも、頑張れと応援する。


 お父様のような男性を選んだお母様は、とても見る目があるってこと。私も素敵な旦那様を見つけて、お兄様の補佐をするのが夢よ。


 楽しい時間は早く流れ、あっという間に予定した日になった。帰宅しないわけにいかないし、お母様にも会いたいけれど……。お祖父様はこそっと耳打ちした。


「帰る前に手紙を書こう。寒くなったら、暖炉の前で抱っこさせてくれ」


 にっこり笑って了承した。もうお膝に乗る子供じゃないけれど、お祖父様ならいいわ。ごとごとと馬車に揺られて、屋敷へ戻る。帰り道は、徐々に見慣れた風景が増えていく。窓の外を夢中になって眺めた。


「知りたいことを知れたかい?」


「ええ、付き合ってくれてありがとう。お父様」


 到着してお母様の出迎えに抱き着いて、まだ子供ねと笑われた。お父様とお母様がキスを交わし、居間へ移動する。どうしてお祖父様のところへ行かせてくれたのか、お母様に尋ねた。お母様の過去や伯父様のこと……隠していても問題ないのに。


「知りたいと思ったら、とことん追求しなさい。少なくとも、私のように知らなかったことで苦しまないように。道を誤らないように、ね」


 一度言葉を切って、お母様は窓の外へ目を向けた。鳥の鳴き声が聞こえて、私も顔を上げる。


「知りたいと願う気持ちは、誰よりも知っているわ」


 ぽつりと聞こえた言葉が重くて、私ははっとした。今日、伯父様がいないのはお母様が手配したから? 聞かせて傷つけたくないと思ったのかも。私が自由に話せるよう、気を使ってくれたのなら……。


「ありがとう、お母様。私はお母様とお父様の娘でよかったわ」


 微笑んだお母様の頬に一筋流れた涙を、見ないふりで微笑んだ。愛し、愛され……私はここにいる。それがすべてよ。


 不思議なほどに、カリスト伯父様への感情が落ち着いた。何も知らないからこそ、恋に恋して溺れていたのだと知る。お祖父様が戻ってきたら話してあげよう。私はこんなに成長したのよ、って。







                             END.







 お付き合いありがとうございました。クラウディオはいいお兄ちゃんとなり、ルーチェを甘やかしているでしょう。カリスト伯父、祖父、父、甘やかす男性が多数です。それでもアリーチェ譲りの聡さで、ルーチェは己の道を選びました。一応終わりですが、また気が向いたら書いちゃうかもしれません。次があれば、クラウディオかな? なんて。


*********************

『宣伝』

9/25【私だけが知らない(2)】が発売されました。ぜひお手に取って、連載との差をご確認ください(*´艸`*) 恋愛パートを補足して、番外編も追加しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
結局王子が持ってた青い本(日記疑惑)ってどうなったんだっけ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ