【9/25、2巻発売記念】聞きたいことがあるの ***ルーチェ
朝早くから鶏が鳴いて、驚いて目を覚ました。大きな声で鳴くのね。すぐに階下で物音がし始め、二度寝は諦めた。パストラおば様も起きて準備を始めちゃうんだもの。私だけ寝直すのは無理だった。身支度をして、化粧はせずに降りる。
屋敷にいると日焼け防止だとか、唇の荒れがどうとか。侍女達が粉をはたいたり、唇に油を塗ったりと忙しいの。それがないだけで、身支度がぐんと楽になるわ。服も裾の長いドレス風じゃなくて、乗馬服に似たシンプルなものを纏う。深呼吸できるって、こういう状況を言うのかも。
「起こしたか……疲れているだろうから寝ていてもいいぞ」
「ううん、いいの。手伝うわ」
お祖父様の後ろをついて、牛がいる囲いの中へ向かう。屋根があるけれど、壁は三面だけ。正面が開いたままの小屋は、牛や馬専用だった。以前より立派になってるわ。小屋を見ながら中に入り、上に積んだ干し草を落とす。その間にお祖父様が牛馬を外へ離した。
小屋の開いた面は、横に長い棒を二本渡して通れなくしてある。勝手に外へ出ないようにしているのね。番犬も一緒に休むから、狼などが来たら吠えて知らせてくれるの。昨夜は何も来なかったようで、鳴かなかった。
牛と馬がいなくなった小屋を簡単に掃除して、干し草を撒いて整える。その間に、パストラおば様が村の女性達と牛の乳を搾った。下りて新鮮な乳が入ったバケツを運ぶ。これで作ったシチューが美味しいの。それにチーズも作っていたはず。
朝食はパンにたっぷりのチーズと、牛乳のスープ。白い蕪を煮込んだスープは、とても美味しかった。食べ終わると、大人は麦刈りに向かう。お父様やパストラおば様も手伝うため、鎌を持って村人と出かけた。なぜかお祖父様は残っている。
「おいで、ルーチェ」
手招きされて、素直に膝の上に座った。大きな大きなロッキングチェアは、記憶の中より縮んだ気がする。きっと私が成長したからね。お祖父様の大きな体を包んでも余るチェアが、ゆったりと揺れた。
「聞きたいことがあるんだろう?」
「ええ。伯父様は素敵で、でも結婚していないわ。血が近くなければ私が結婚したのに、と言ったら……お母様は困った顔で笑ったの。あんなの初めてよ。なぜなのか気になって、でもお父様はお祖父様に聞きなさいって。パストラおば様も昨夜同じ事を言ったわ。どうして?」
纏めようとして、話がぐだぐだ。これでは伝わらない。言い直そうか迷う私の上で、お祖父様が溜め息を吐いた。擽ったいわ。
「カリストのことか。あれは……アリーチェの義兄だ」
義兄って、血が繋がってないの? そういえば、なぜお母様が跡を継いだのかしらね。お兄様がいるなら、普通は長子が継ぐのに。
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ロベルディ王国は女王も認められるため、長子が家を継ぐ傾向が強いです_( _*´ ꒳ `*)_