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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
書籍化記念

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【9/25、2巻発売記念】知らないことばかり ***ルーチェ

 置き換えて考えてみる。私は領主であるお母様の娘で、お婿さんを貰ったとするわ。そうしたら、私が領主だから、夫はお父様みたいに裏で支える? 代わりに前に出て働いてもらう? どちらでもいいわ。夫になる人次第だから……お母様も同じ考えで、お父様が引いたから表に立つのかも。


 実際にはクラウディオ兄様がいるから、私がお婿さんを貰うことはないけれど。


 ごとごと揺れる馬車は、途中で休憩を入れた。乗っているだけの私達が疲れるのに、馬が疲れないはずない。軍馬に馬車は引かせないので、体格も大きくないし。馬車に随行する騎士の軍馬は、フロレンティーノ領自慢の大型馬ばかり。


 ひいお祖父様が始めた産業で、いまは収入の四割を占めているほど。ひいお祖父様の連れてきた山岳の人達は定住して、馬に関する仕事に従事している。鞍のない裸馬に飛び乗って、両手を離しても落ちないのよ。すごいわ。


 大伯母様は代替わりしてから、よく遊びに来てくれるようになった。今回は出かける前に「お祖父様に会いに行きます」と手紙を出したの。もし訪ねてきて、私がいなかったら寂しいでしょう?


 いつも凛として美しく、姿勢が良くて優しい大伯母様はお母様が大好きなの。お母様に似ている私も、大事にされてきた。クラウディオ兄様はロベルディ王国に留学して、大伯母様と暮らしているのよ。羨ましいわ。


 食事を兼ねた休憩が終わり、また馬車に乗る。たくさんのクッションを積んでも、お尻が痛くなるのが難点ね。


「後ろの商隊の荷馬車に不具合があるらしい。もしかしたら、到着は遅くなるかもしれないな」


「野営?」


 期待して尋ねたら、首を横に振られた。


「ルーチェがいるのに、野営はしないよ」


 残念ね。クラウディオ兄様の手紙には、学校の行事で野営をした話があった。あと二年したら、私も留学したいと頼んでみよう。友達ができるし、大伯母様と暮らせるでしょう? それに野営や学校のお祭りもあるわ。


「ねえ、あれは何?」


 窓の外で気になったものを指さす。お父様が丁寧に答えてくれた。牛の宿舎、チーズを作る工房、髭のある小さな動物はヤギ。本で読んだけれど、知らないものばかり。夢中になって知識と照合した。やっぱり領地から出て、学んでみたい。


 日差しが傾いて、徐々に空の色が変わっていく。傾いた夕日が麦畑を赤々と照らした。


「見えてきたわ!」


 久しぶりのお祖父様達の村、以前はすごく狭かったのに大きく発展して「町」になった。麦の穂が大きく垂れ、すごく重そう。今年も収穫が楽しみね。落ちた麦の穂を拾うのも、手伝ってみたいわ。わくわくしながら身を乗り出す。


「ルーチェ、まだ早いから座って。義父上様に笑われてしまうよ」


 いけない! お祖父様にも「お淑やかに」と言われていたんだわ。叱られないよう、首を引っ込めたけれど……やっぱり外の景色が気になる。豊かな麦が実る丘は黄金色で、とても美しかった。これがお祖父様が望んだ景色なのね。

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